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魔女


「ここじゃな。一人で住んでいるにしてはやけに大きい屋敷じゃが」


 ベルンから貰った情報に従って訪れた地には、廃墟と勘違いしてしまいそうな屋敷が一つ存在していた。

 外壁は謎の植物が絡みついており、屋敷の中に日光を入れないようにしている。


 いかにも魔女が好みそうな環境だ。


 そっと扉に手をかけると、まるで誘い込まれているかのように自動で開く。

 セキュリティ能力のかけらもない扉であるが、罠でも仕掛けてあるのだろうか。


「…………」


 多少警戒しながら足を踏み入れるものの、攻撃が始まる気配は全くない。

 むしろ静かすぎて落ち着かないくらいである。


(留守か? いや、でも何だか人の気配は感じるのじゃ)


 ここに訪れる前に、脳内で様々な対応をシミュレーションしていたが、まさか何もしてこないという状況は想定していなかった。

 ここまでアクションがないと、アリアの存在すら気付かれていないのかもしれない。


 屋敷を丸ごと吹っ飛ばしてやろうかとも考えたが、そもそも喧嘩をしにきたわけではないため、大きく息を吸って気持ちを落ち着かせる。


 一階はホコリなど小さなゴミが溜まっているため、普段からあまり使用していないようだ。

 アリアの勘が正しければ、魔女は二階のどこかに潜んでいる可能性が高い。


「しかしオンボロじゃな。《空間掌握》には期待せん方が良さそうじゃ」


 この屋敷はところどころ壁に穴があいているため、密閉された空間を必要とするスキルを発動させることは不可能であろう。


 魔女程度に自分が負けるとは到底思えないが、切り札が使えないというのは少しだけ面倒だった。


「――っと!」


 アリアが階段を上ろうとすると、バキッと音を立てて板が抜ける。

 見た目以上に老朽化しているのか――大きな嵐でもくれば、アリアが手を下さずとも吹っ飛んでしまいそうな造りだ。


 とりあえず今は、下僕たちに見られなかったことを感謝するしかない。

 少しだけ顔を赤くしながら足を引き抜くと、気を取り直して一歩ずつ慎重に階段を上っていく。


 そしてその先では、一部屋だけ扉が全開になっていた。


「誘い込んでおるつもりか。おい、出てくるのじゃ」


「――すぅ」


「……まさか」


 アリアは何も警戒せずに部屋の中を覗く。

 相手が相手なら、首から上が無くなってもおかしくないほど軽率な行為である。


 しかし。

 アリアに迷いはない。

 そんなことを考えるだけ無駄だと、直観的な何かで理解していたからだ。


「……儂がマヌケじゃったな」


 予想通り。

 そこには、ベッドの中ですやすやと眠っている魔女がいた。



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