道しるべ
「リヒトー、どこにいるのー」
「リヒトさーん」
普段大声を出し慣れていないドロシー、イリス、ティセ。
思うように声が出ない自分に不満を感じつつ、三人はリヒトの捜索を行っていた。
「リヒトさん……どこにいるのでしょう」
「ドロシーさんの死霊は何か見つけた?」
「ううん。もう少しかかるみたいです」
かれこれ十数分ほど呼びかけてみるも、リヒトの声が聞こえてくる気配はない。
ドロシーの死霊にも、リヒトを示す反応は見られなかった。
わざわざ人間界に来てまで捕らえたリヒトを、簡単に奪い返されるような場所には置いておかないはずだ。
もしかすると、捜索を妨害する結界を張られて死霊が意味をなさない可能性だってある。
「――お姉さま、何か来てる」
イリスがピクリと耳を動かす。
敵地のど真ん中であるだけに、休む暇は全くなかった。
聞こえてくる音から判断すると、何匹かの虫がまとめて向かってきているらしい。
これまでに聞いたことのない種類の羽音であるため、対策も瞬時に浮かんでこない。
今の時点で判明していることは、間違いなく敵であるということだ。
「イリスちゃん、使うの?」
「うん。ちょうどいい」
その返事を聞くと、ティセはドロシーの手を取りイリスから走って離れる。
まるで魔王を前にしたかのような全力疾走。
ドロシーの足では付いていくだけでも精一杯だ。
「ティ、ティセさん?」
「すみません、ドロシーさん。イリスちゃんが危ない妖精を使うみたいなので」
「な、なるほど……」
危ない妖精――かなりアバウトな説明であったが、ティセの様子を見るだけでどれほど危険か理解できる。
少なくとも、百パーセント巻き添えを食らわない位置まで避難する程度。
ドロシーには見守ることしかできない。
「――! 虫がこっちに流れてきてますよ!」
イリスの隣を素通りするかのようにして、一匹の虫がフラフラとやって来る。
少し様子がおかしいが、自分たちを攻撃しようとしているに違いない。
イリスが狩り損じた一匹だけなら、まだドロシーでも対応できる。
そう思って杖を握ったら、隣のティセがポンとドロシーの肩に手を置いた。
「いえ、あれはもうイリスちゃんが――」
「え?」
ティセの言葉通り。
その虫は二人の姿に見向きもせず、横を今にも落ちそうな飛び方で通過する。
一体何が起こったのか。
ドロシーが考えている間に、イリスが敵であるはずの虫たちを引き連れて近付いてきた。
「イ、イリスさん、この虫たちはどうして――」
「今は一時的に魅了してる。流石に【魅了】の妖精を使ったら耐えられないかと思ったけど……大丈夫だったみたい」
それで――とイリスは付け加える。
「虫たちをリヒトさんのところに向かわせてる。これで見つけられるかも」
ドロシーは、その話を聞いて思わず振り返る。
今にも死んでしまいそうなこの虫が、リヒトを探すための道標だ。
途中で力尽きないことを祈りながら。
三人はその後を付いていくしかなかった。
いつも読んでいただきありがとございますm(_ _)m
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