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注意喚起


「魔王様とロゼ――やっぱり速い」


 フェンリルに乗って移動中のイリス、ティセ、ドロシー。

 地上を走っての移動であるため、飛行することができるロゼやアリアとは差がついてしまう。


 全速力のフェンリルでも、背中を追うだけで精一杯だ。


「この様子だと、魔王様たちが西の魔王と戦うって感じかしら。計画通り、私たちがリヒトさんの救出に向かうみたいね」


「責任重大……でも、魔王様がそう決めたなら従う」


 イリスが弱気になるほど重い役割。


 これまでのイリスとティセは、とりあえず敵を倒してくれという命令しか受けてこなかった。


 人間たちが攻めてきた時には雑兵の処理、東の魔王軍と戦う時にも雑魚の処理。


 今回のように、戦いの目的そのものとなる役割を任されるのは初めてである。


「自信持って、イリスちゃん。大切な役割を任されるってことは、魔王様に信頼されてるってことだから」


「う、うん。お姉さま」


 気合が入っていると言っても緊張はするもの。

 そんなイリスの緊張を、上手くほぐすようにティセはフォローしていた。


「リヒト……ひどいことされてないかな」


「……確かに心配ですけど、西の魔王も傷付けるために攫ったはずじゃないから大丈夫だと思いますよ。ドロシーさん」


「ひどいことをされる前に助けなきゃ。きっと苦しんでるはずだから」


 一秒でも早くリヒトを助けなければいけない。

 それは三人とも同じ気持ちである。


 心做しか、フェンリルの走るスピードも上がったような気がした。


「イリスちゃん。そういえば、リヒトさんが捕まってる場所ってまだ分かってないわよね? 大丈夫かしら……」


「全く分かってない。気合いで探すしかないかも、お姉さま」


「それなら大丈夫だよ。ボクの死霊がいるから、場所は何とか分かると思う。ただ、場所が分かっても辿り着けない可能性はあるけど……」


 ドロシーの心配そうなセリフに。

 問題ない――とイリスは親指を立てる。


 死霊の仕事はリヒトを見つけること。

 そこから先はイリスとティセの仕事だ。


 いつでも妖精を使役できるよう、既にイリスのスカートはモゾモゾと動き始めている。


「イリスちゃん、今日は全種類の妖精を使っても良いわよ」


「……! お姉さまから許可が下りるのは久しぶり。ちゃんと気を付けるけど、お姉さまも巻き込まれないように気を付けてね……?」


「そうね――あ、ドロシーさんも気を付けてください。【魅了】とか【腐敗】の妖精には特に……」


 その注意喚起に。

 ドロシーは引きつった笑顔を作るのが精一杯であった。



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