表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

115/206

和解


「リヒトさん! あのっ! 申し訳ありませんでした!」


「……へ?」


 ラエルたちがエルフの国へ向かったという報告を聞き、安心してくつろいでいたリヒト。

 そんなリヒトの前に現れたのは、ここにいないはずのラエルであった。


 出発前とは打って変わって、誠意に溢れた気持ちをリヒトに向けている。


 この短時間で何が起こったのか。

 あまりにも飛躍した出来事で、リヒトの理解は追いつかない。


「急にどうしたんだ……?」


「私は……リヒトさんに対して酷いことを言ってしまったのです。全くリヒトさんの気持ちを考えていませんでした。リヒトさんは人のために能力を使っているだけなのに……」


 ラエルの懺悔にも似たセリフ。

 人のために使っている――という箇所には少し間違えもあったが、それを指摘するほど空気が読めないリヒトではない。


 それに、ここまで反省しているのだ。

 途中で話を折れるわけがなかった。


「とにかく……! 色々すみませんでした!」


「大丈夫だよ」


「……え? 良いのですか?」


 ラエルは深く下げていた頭を、ヒョイっと上げてリヒトの顔を見る。

 これほど簡単に許してもらえるとは思っていなかったのだろう。

 追加で用意していた謝罪の言葉が、もう必要なくなってしまった。


「別に俺は気にしてないよ。むしろ、こっちだってラエルのことを考慮できてなかったし――お互い様だな」


「で、ですけど――!」


「ラエルも気にするな。分かってくれたなら、それでいいんだから」


 それ以上、ラエルの口から言葉は出てこない。

 いい人ではないけど悪人でもない――イリスの言葉の意味が分かったような気がした。


「……えっと。すぐ帰ってくると思わなかったから、そろそろドロシーの所に行く約束をしてたんだけど――行ってもいいか?」


「あっ。は、はい……」


 ラエルの返事を聞くと、リヒトは軽く手を振ってその場から立ち去る。

 もう少しだけ話したい気持ちもあったが、わざわざ止めることも不可能だ。


 ただただ、その背中を見ていることしかできなかった。


「……行っちゃったのです」


「そうじゃな」


「――!? いつの間にいたのですか!?」


 零れるような独り言に返ってきた相槌。

 その声の主は、決して忘れられない魔王である。

 どの段階からここにいたのかは分からない。

 もし謝るところからなら、かなり恥ずかしいところを見られてしまったということだ。


「い、一体何の用なのですか!」


「そう警戒するでない。もう仲間ではないか。じゃろ?」


「――うっ……」


 それで――と、アリアは話を続ける。


「お主を心配しておったのじゃが、もう問題なさそうじゃな。最初に比べると何倍もマシになっておる」


「……」


「エルフの国で何があったのかは気になるところじゃが、イリスかティセに聞かせてもらうとするかの」


「……別に何も無かったのです」


 ラエルは恥ずかしさを隠すように下を向き、ただ一言そう告げた。

 アリアから溢れ出す不気味な雰囲気に、まだ慣れることはできない。

 ずっと蛇に睨まれているような感覚だ。


「フフ。まあ良い、リヒトに感謝するのじゃぞ――貴重な命じゃからな」


「……っ!?」


 ゾワッと体を襲う寒気。

 別れ際のアリアのセリフは、いつまでもラエルの頭の中で響き続けていた。



ブクマ、評価、感想よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ