表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

112/206

客人


「アルシェ様。客人でございます。どうなされますか?」


「客人? 珍しいですね。どなたでしょうか?」


「ハイエルフと思われる姉妹と、一人の人間でございます」


「あら……イリス様とティセ様だとすると、もう一人はリヒト様でしょうか。通してあげてください」


「かしこまりました」


 ハイエルフの姉妹と人間――この情報だけでも、客人を予想することは容易い。

 アルシェの頭の中に、その条件に当てはまる者たちは一人ずつしかいなかった。


 幸いなことに、ちょうど仕事が終わったばかりであり、出迎えられるほどの余裕はある。

 わざわざ三人の方から訪ねてくるとは、只事ではなさそうだ。


 話を聞く義務が、アルシェにも当然あるだろう。


(ですが、こんなに唐突なんて。何か大変なことが起きたのでしょうか……)


 三人の要件を一応予想してみるものの、心当たりはどこにもない。

 ディストピアに派遣しているエルフたちの評判も、かなり良いものだったと記憶している。


 自分たちがミスをしたというわけではなさそうだが、まだまだ不安な気持ちを取り除くことはできなかった。


「……アルシェ様、本当に大丈夫なのでしょうか? 客人はやけに周りを気にするような態度で、怪しいというわけではないのですが……少し」


「フフ、あなたは心配しなくても大丈夫です。悪い人じゃない――と言って良いのかは分かりませんけど……」


「……?」


 そう言って、一人の従者が三人を呼びに部屋から出る。


 アルシェは、まだ他のエルフたちに魔王軍のことを伝えていない。

 余計な混乱を招かないためという理由であるが、時間が経つに連れて、言い出すタイミングを完全に見失ってしまったのだ。


 強者には従うべき――その考えはきっと理解して貰うことができる。


 しかし。

 エルフたちの中には、魔王に怯えてしまう者もいるかもしれない。


 伝えるべきか伝えないべきか――アルシェの中で、この問題はずっと解決できずにいた。


「アルシェ様、何か問題があるのでしょうか? 危険というのなら、私が追い返すことも可能ですが」


「いえいえ、そういうことではありませんから」


 アルシェの見せた迷いの表情が、意図せず従者の不安を煽る。

 遺伝子にまで刻まれている忠誠心は、主の僅かな表情の変化でさえ見逃さない。


 アルシェ自身としては、従者と共にいる空間でリラックスできないという問題もあるが、簡単に治せるようなものでもなかった。


「……それでは、客人をお呼び致します。数分ほどお待ちください」


「よ、よろしくお願いしますね」


 渋々納得した様子で。

 従者は務めを果たすために部屋を出る。


 日頃から何度も繰り返し教えているため、いきなり客人に向かって手を出すことはないはずだ。


 コキコキ――と、首を鳴らすような音がどこからか聞こえてきたが、それは従者のものでないと信じたい。


ブクマ、評価、感想よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ