優柔不断
「あのっ、ラエルさん! 今から行くのですか……?」
「はい! 私が直接会って、この近くにいる理由を聞いてみるのです!」
ラエルはロザリオを握って立ち上がる。
仮面は既に取り外しており、出かける気が満々だ。
嫌な予感がするラルカは、心配そうに止めようとするが、その言葉はラエルの耳に届かない。
ロザリオを使った人探しは、持ち主にしか行えないため、その使命感がラエルの心に火をつけていた。
「意外と近くにいるみたいなのです。それじゃあ、行ってくるのです」
「あ、ちょっと――!」
そう言うと、ラエルは少年のように走り出す。
何も考えていないのではないか、とさえ思えてしまうほどの行動力である。
リヒトたちの仲間ということで、心配する方が野暮なのか。
これでラルカも一緒に向かうことによって、ラエルの邪魔になるかもしれない。
そう考えると、ラエルの背中を追いかける一歩が踏み出せなかった。
(……でも、流石にリヒトさんたちに報告した方がいいよね)
立て続けに起こった出来事に、ラルカの優先順位はパニックになる。
リヒトに伝えるべきか、それすらもすぐに判断することはできない。
数分後。
その話を聞いたリヒトは、急いでラエルを追いかけることになった。
***
「うーん……この辺りなのですが」
ラエルは、頭の中に映った場所へと辿り着く。
ロザリオから受け取った情報が正しければ、近くに怪しい人間というのがいるはずだ。
その心に警戒心というものはなく、話し合いで全てを解決させる算段である。
「――お嬢さん。ちょっと良いかな?」
「あっ! いつの間に後ろにいたのですか!」
そんな隙だらけのラエルに声をかけたのは、二人組の背の高い男たちだった。
大きな帽子で目元を隠しており、怪しさが際立っている。
普通の感覚であれば、一歩下がって話を聞こうとするであろう。
しかし、相手が人間だからと油断しているラエルは例外だ。
逆に一歩踏み込んで話を進めようとしている。
「あの。貴方たちのせいで、竜人さんが迷惑をしているらしいのです。やめてあげてほしいのです」
「ん? お嬢さんは竜人との知り合いなのかい?」
「そ、それは秘密なのです!」
男の質問に、苦し紛れの答えを返すラエル。
もはやイエスと答えているようなものだが、本人は上手く誤魔化せた気でいるらしい。
「とにかく! もうこの辺りには近寄らないでほしいのです!」
「そうは言われても、こっちは国からの命令だからねぇ。成果なしで帰ったら、俺たちの命も危ないんだ」
「え? そ、それなら。どうしたら良いのでしょう……?」
命が話題に上がったことで、ラエルも強い言葉を使えなくなる。
この男たちは、竜人の調査でも依頼されているのだろう。
それを無理やり邪魔する権利は、ラエルと言えども持っていなかった。
もしここにいるのがアリアであれば、男たちの話など聞かずに蹴散らしていたはずだ。
「少し待っててほしいのです!」
この問題を一人で解決することができないと判断したラエルは、もう一度神の言葉に頼ることになった。
ブクマ、評価、感想よろしくお願いします!




