表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/22

深淵の精霊

けっこう間が空いてしまいました。

すいません。

 魔の森を歩く。奥に向かって。

 正気の沙汰ではない。理性では、そう理解している。

 しかし、本能、いやそれよりももっと根本的な何かが俺を突き動かす。

 その存在を求めて。


 そのとき、


「こんにちは。」


 目の前に、いきなり女の人が俺に挨拶をしながら現れた。

 中学生ぐらいだろうか。

 白銀の髪と、金の瞳。そして幻想的なまでに美しい顔立ち。

 肌は病的なまでに白く、しかし不健康さは感じない。

 スタイルも良く、どこか妖艶な雰囲気を放っている。

 赤と黒の、ゴスロリ風の服に身を包んでいる。

 そして何より特筆すべきは、あの兄以上の強者の気配。あまりそういうのを察知するのが得意ではない俺にすらわかってしまう。その圧倒的であろう力。

 とりあえず、機嫌を損ねない方がいいだろう。

 しかしなんだろう。何故か俺は、この人に親近感を覚えている。



「こ、こんにちは。えっと、あなたは…あ、えっと僕はタクトと言います。」


 とりあえず、挨拶を返してみる。そして相手に名前を聞こうとして、自分から名乗るのが礼儀だろうと思い、名乗ってみる。


「そう、タクト君ね。私はリュクレイアーナ。災厄の魔女とも呼ばれているわね。」


「っ!」


 もしかしてとは思っていた。

 この森に住むと云われる災厄の魔女。

 この圧倒的な気配は、それなら納得だ。

 しかし、そんな大物が俺に何の用だ?


「まあ、ここではなんだし、私達の家に招待するは。」


「へ?」


 今会ったばかりの人間を?何故?

 そんな疑問が顔に出ていたのか、魔女、リュクレイアーナはクスリと笑い、


「話は後。それより、早く行くわよ。あの子が待ちくたびれちゃうわ。」


 あの子?

 そんな疑問を口に出す間もなく、いつのまにか周囲の景色が変わっていて、目の前には木で出来た屋敷が。その隣には大きな石造りの神殿が。

 そしてそこから、森に入ったときから感じていた、とてつもなく惹き付けられる気配。

 俺は引き寄せられるようにして神殿に入っていき、そこで俺は、運命の邂逅を果たした。



 そこにいたのは、これまで見てきた中で、最も美しいと断言できる、リュクレイアーナすら霞んで見える、現実感の無い神秘的な美しさを誇る容姿を持つ、どこか儚げな雰囲気を持つ美少女。

 黒髪赤目。今世の、俺と同じ色。

 髪は長く、腰にまでとどいている。

 目はぱっちりしていて、睫毛も長い。

 傷ひとつ、しみひとつないその肌は、透き通るように白く瑞々しい。

 服は着ておらず、黒い靄が体の大事な部分を覆い隠している。それが逆に裸よりも背徳的印象を与えている。


『やっと、やっと見つけた。私を受け入れられる、器。』


 器?どういうことだろう。


『ねぇあなた。名前は何て言うの?』


「俺は、タクト。タクト=カブラギだ。」


『そう、タクトと言うのね。私は深淵の精霊。名前は無いわ。それでね、あなたをここに呼んだのは、あなたにお願いが有るの。』


 名前が無い?どういうことだろう。

 それよりお願いか。俺に何をしてほしいんだ?


『あなたには、私と精霊契約を結び、私の宿主となってほしいの。』






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ