動き出す運命
~ラインハルト~
俺は9歳になった。
そして、後一月もすれば、俺は学園に通うことになる。
この国に義務教育は無いが、それなりの教育機関はある。
主に貴族や商人の子らが、将来のための人脈作りや、良い成績を残して箔をつけるために通う。
そして、たいていの貴族は、9歳か12歳に通い始める。
何故かというと、まず、学園は初等部、中等部、高等部に6歳から15歳まで3年づつ別れている。
6歳の子に人脈作りなどできるとは思えない。そのため、まだ幼い内は家庭教師などを雇い教育を施し、中等部や高等部で良成績を残そうとした結果だそう。
ちなみにこの国で成人は15歳だ。
もちろん、俺はこの学園でも一番になるつもりだ。
さて、後一月であの子も7歳だ。うん、ちょうどいいだろう。
あの子を外に出そう。
最低限生きていける力は身に付けさせた。ある程度の知識も与えた。
そしてあの子には不思議な運命が宿っている。
その運命が、あの子の才能を開花させるはずだ。
さて、父上に言ってみるか。
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~タクト~
後一月で7歳になるという頃。ソフィーナからその知らせを聞いた。
「家を、追い出される?」
「そうなの。7歳にもなればもう一人で生きていけるだろうって。そんなわけあるはずないのに。」
ソフィーナはそう言っているが、俺は大丈夫だと思う。それにいつか、それもできるだけ早くここを出て行こうと思っていた。ソフィーナと別れるのは寂しいけど、もう決めた。
冒険者になって、強くなって、いつか絶対、あいつに復讐する。そのためには深淵魔法を修得したい。しかし、ソフィーナはそんな魔法聞いたことが無いという。
けれども、もし、使える人がいるとするなら、心当たりがあると教えてくれた。
邪神が封印されているといわれる魔の森。そこに住むと言われる災厄の魔女ならもしかすると、と。
そこで俺は、冒険者となり、力をつけ、その災厄の魔女に会いに行く。
まずはそれを目標にする。
そして、一月後、俺は家を追い出された。
ご丁寧に東の魔の森手前まで運んでくれた。
領民に見られるわけにはいかないんだろう。
けっこう手荒にごみでも捨ててくるような扱いだったが、まあお陰で楽ができた。あいつの所業に比べれば可愛いもんだ。
それにしても、不気味な森だな。俺は森を見ながら考える。この森は、入口付近は魔物が出ることはほとんど無いらしい。そこで、少し中に入ってみようと思う。少し様子を見るだけなら、そんなに危なくないはずだ。
そう思い、俺は森に足を踏み入れた。その瞬間。
──ドクン──
俺は、よくわからない何かを感じた。
ただ、それはまるで、俺を呼んでいるようで、そして、俺の本能も、それを強烈に欲していた。
俺は引き寄せられるように、森の奥えと、歩を進めた。
──さあ、こっちにおいで──
そんな声が聞こえた気がした。
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~???~
それは、深淵から生まれた存在。
長年封印され、いつか自分に相応しい器が現れるのを待ち続ける。
太古からの知りあいである魔女はそんな自分の話し相手になってくれている。
森の深部で二人、今日もその存在を待ち続ける。
今日は来るだろうか?
そんな何度も重ねてきた思考。なかばそんなものが現れることがないと諦めかけていたある日。
──ドクン──
森の端から、とてつもなく惹かれる気配。
待ち望んだ、いやそれ以上の、深淵を惹き付ける逸材。
その存在は歓喜した。さあ、こっちにおいで、早くおいで。私に面白いものを見してちょうだい。
その思いが通じたのか、それはこちらに近づいてくる。
だが、時間がかかりそうだ。それに森の獣に襲われるかもしれない。そこで、友人である魔女に迎えを頼む。魔女は快く了承してくれた。
ああ、ようやくだ。
その存在は、恋い焦がれるが如くそれを待つ。




