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目標

 ~ラインハルト~


 それから約半年後。7才になってしばらくのこと。


 俺は初めて王宮に来ていた。

 この国では、貴族の子息子女は、七才になると王宮で、王家との挨拶も兼ねて、初めての社交界(デビュタント)を迎える。

 俺もそのためのパーティに来ていた。

 パーティーは王宮の広間で行われる。

 絢爛豪華なシャンデリアや、美しい彫刻の施された壁など、流石は王宮だな。

 父上は、同じ伯爵や、一つ上の侯爵とよく話していた。

 今日の参加者が全員集まってしばらくすると、国王が王妃、二人の側室、第一第二王子、第三王女をつれて入場し、広間の奥に用意された一際豪華な椅子に腰かけ、他の6人もそれぞれ用意された椅子に座った。


 そして、国王の話が始まった。

 少々長いので省略するが、「デビュタントおめでとう、君達には期待しているので頑張りなさい。うちの第三王女も7才になったのでよろしく。」

 といった感じ。

 その後、今年デビュタントを迎えた子息子女が、順番に国王や王妃に挨拶し、ダンスを踊ることになったのだが、第三王女をダンスに誘う子息が続出。

 まあ、王族で王位継承権を持つとはいえ、側室の子で、その母親は伯爵の出。子爵や男爵などの下級貴族にもチャンスがある。

 そして俺はどうするかというと、もちろん誘う。

 そして少し本気で。

 俺は覇気を纏いながら、第三王女に近づく。

 するとモーセのように自然に子息達が道を譲る。

 そのなかには、俺より爵位が上の公爵や侯爵の子もいたのだが、俺の覇気にあてられている。

 まあ、仕方ない。このくらいの覇気に抗える人間は、大人でもこの場に何人いることやら。

 そして、俺は第三王女シルヴィア=ルーン=アイルムンドの前に立ち、腰を曲げ、完璧な所作でダンスに誘った。

「シルヴィア様。私と踊っていただけませんか?」

 そしてシルヴィアは、

「はい。喜んで。」

 若干赤くなりながら、了承した。

 そして俺は完璧なダンスを演じた。

 シルヴィア様もこの年にしては上手かったが、やはり少し拙い。しかしそこは俺が上手くリードすれば問題無い。俺は全て完璧にやりとげた。


 その後、パーティーは恙無く終わった。

 そして俺は、シルヴィアと文通の約束を交わした。

 上々だ。


 帰りの馬車の中で俺は、父上にシルヴィアを守る騎士になりたいと告げる。

 父上は応援してくれた。

 その後、俺は父上の推薦で、騎士の名門であるアームストロング家の、厳しいことで有名な訓練を受けることになった。

 ここでも手を抜くつもりはない。全員蹴散らしてやろうと思う。




 +++++++++++++

 ~タクト~


「ごめんなさい。ラインハルト様に聞いたら、全部本当のことだって、それに、全部あなたのためだって聞き入れてくれなくて…力になれなくてごめんなさい。」


 次の日、ソフィーナはそう言った。


 謝るソフィーナに、気にすることはないと、ソフィーナのせいじゃないと言った。

 それでもなお気にするので、それなら色々な事を教えて欲しいと頼んだ。

 ソフィーナは快く了承してくれ、それからほとんど毎日来ている。


 ・

 ・

 ・


 少し前に俺は5才になった。

 今日、兄は王宮でデビュタントを迎えるらしい。

 それで忙しいらしく、今日は兄に痛めつけられることはなかった。

 俺はステータスを確認してみる。


 _____________

 名前:タクト=カブラギ


 種族:人間


 性別:男


 年齢:5


 筋力: 5

 耐久力: 12

 体力: 12

 生命力: 12

 魔力: 1029

 敏捷: 7


 スキル

【深淵適性】【アイテムボックス】【鑑定】【学習】【頑強】【魔力感知LV.9】【魔力操作LV.13】【魔力耐性LV.8】【魔力身体強化LV.7】【剣術LV.9】【体術LV.9】【気配感知LV.8】【隠密LV.6】【刀術LV.6】【毒薬耐性LV.7】【炎熱耐性LV.3】【寒冷耐性LV.3】【電流耐性LV.3】



  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 かなり上がった、と思う。

 スキルのレベルもそうだし、身体能力もかなり上がってる。魔力なんて千の大台に乗った。

 魔力操作のレベルは10を超えた。

 けれども、アイツとは比べるべくも無い。

 アイツをいつか越えて、復讐してやりたい。

 けれども、このままでは無理だろう。

 いつまでも独学では、限界がある。

 そこで俺は、いつかここを出ようと思う。

 あては、あるにはある。

 冒険者。ファンタジーで定番のこの職業は、この世界にもあるらしい。

 冒険者は実力至上主義。しかし、この国では黒髪赤目は、大きな力を持てば持つほど、いずらくなるだろうとのこと。

 そこで、他国に行こうと思う。幸い、この国は比較的差別の少ない国らしく、様々な国と国交を開いているらしい。

 ……じゃあ、なぜ黒髪赤目は駄目なんだ?

 そう思い聞いてみると、過去に何度も黒髪赤目の人物がやらかしている上、この国の国教で定められている邪神が、黒髪赤目らしい。

 そういう訳で、他国に逃げて、そこで冒険者登録する事をお勧めされた。

 そして調度いいことに、この伯爵領の東側にある森に沿って北に行けば、完全実力至上主義の帝国があるらしい。

 ただ、その時に注意されたが、森の奥には絶対に行ってはいけないらしい。

 なんでも、この森の奥には邪神が封印されているらしい。そしてその邪神から漏れ出た力で、奥には、強力な魔物が跳梁跋扈しているという。

 まあ、俺も死にたくないので覚えておく。


 そうやって俺は、ソフィーナの手を借りて、着々と準備をしていった。




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