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正体

 ~ラインハルト~


 俺は考える。

 思っていたより弟はボロボロだったらしい。

 ついさっき会ったばかりの人間に優しく抱き締められただけで泣くほどとは…

 聖気を発して優しくしたからというのもあるのだろうが。

 ちなみに「聖気」とは、俺が様々な世界から集めた情報から研鑽を重ね、修得した力だ。

 この世界の聖気は、高位の聖職者や、聖女などの神に選ばれた存在が纏う特別な気だ。

 強い破邪の力を有し、人々に癒しをもたらす。

 そして、少し精神に作用する力もある。

 俺は数日前から、分身して女に化けて、使用人として働いている。名前はソフィーナだ。ちなみにこのソフィーナとラインハルト、どっちも俺である。体は二つだが、魂のみで存在できる俺には関係無い。


 さて、あまり苦痛ばかり与えても良いことないと思い、心の支えにもなろうと思ったが、少しやり過ぎていたか?

 まあ、過ぎたことは仕方ない。その気になれば時間も巻き戻せるし、”正解“を知ることもできるが、それではつまらない。

 まあ、しばらく悪のラインハルトと癒しのソフィーナを頑張ってみますか。



 ++++++++++++

 ~タクト~


 そういえば、さっきからあまり体が痛まないな。

 そう思い、少し深く切られていた左腕の傷を見てみると、かさぶたになっいた。

 細かな傷は、治りかけていた。

 打撲なども、青くなってはいるが、痛みはひいている。

 おそらく、ソフィーナの聖気のおかげだろう。

 聖気の説明を見てみる。


 _____________

【聖気】

 強い破邪の力と、癒しの力を有す。

 体だけでなく、心も癒す。


  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 実はこの【鑑定】、今まで鑑定したものが記録され、いつでも見る事ができ、さらにその鑑定の要素も【鑑定】できる。

 かなり便利だ。


 さて、今日はもう夜まで寝ようと思っていたが、もう少し頑張ろうと思う。


 ・

 ・

 ・

 コンコン


「はあーい。」

 腹筋していたら、ノックの音がした。

 ソフィーナが来たのだろう。

 扉を開けると、案の定ソフィーナが夕飯を持って立っていた。

「少しお邪魔してもいいかしら。」

「いいよ。」


 ソフィーナは家に上がると、夕飯を床に置いて、自分も床に座った。


「あの、タクト君。言いたく無いならいいのだけど、その怪我はどうしたの?」

「兄さんにやられた。」

「!そんな…。じゃあ、なんでこんなところに住んでるの?その、髪と目のせいなの?」

「うん。」

「そんな、弟をこんなところに置いて、暴力まで振るうなんて。そのお兄さんの名前はなんていうの?」

「聞いてどうするの?」

「私がしかってあげるわ!そして、あなたの面倒は私がみるわ!それで、あなたのお兄さんの名前は?」

 俺は言うべきかどうか迷った。俺の兄は貴族だろう。その兄に使用人のソフィーナが意見できるとは思えない。それに、もし本当にソフィーナが兄に意見したら、首になるかもしれない。そして何より、ソフィーナが兄の不興をかうのを恐れて離れてしまうかもしれない。

 でも、なんとなく、ソフィーナに嘘はつきたくなかった。

「ラインハルト=ヴァン=ブラッドベリー。」

「え、ラ、ラインハルト様!?」

 ソフィーナは驚いた顔をした。まあ、そうだろうな。

「そんな、あの優しいラインハルト様が、そんなことをするはずが…」

 あの兄が優しい?嘘だろ。多分、猫を被ってるんだろうが。

「よし、明日、ラインハルト様に聞いてみるわ。こう見えても私、ラインハルト様に拾われてここの使用人になったの。きっと、話を聞いてくれるはずよ。」

 驚いた。ラインハルトとそんなつながりがあったとは。

 それにしても、ラインハルトはなんでソフィーナを拾ったんだ?

 多分、【聖気】か?それでソフィーナを有用だと思ったとか?

 そんなことを考えていると。


「そうだ。タクト君。私、こう見えて回復魔法を使えるのよ。その怪我、治してあげる。」


 そう言って、ソフィーナは俺の手を握り、数分祈るようにして、呪文を唱えた。

 すると、ソフィーナの手が淡く光り、その光が俺の手をつたい、全身に広がった。

 数秒光って消えると、俺の怪我はほとんど治っていた。

 これが、回復魔法。


「ふう。それじゃ、私はもう行かなきゃ。また明日ね。おやすみ。」


「おやすみなさい。」


 俺がそう返すと、ソフィーナは笑顔で帰っていった。

 夕飯を食べようとすると、上に布がかけられている。取ってみると、パンが一つ増えていて、少ないが、サラダとウインナーらしきものもある。そして、ドライフルーツが一つ。

 きっと、ソフィーナがくれたのだろう。

 感謝して、食べた。

 この世界に来て、初めての果物は、とても甘く感じた。





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