魔力暴走
俺は自室で、ベットに横たわりながら考える。
今日、初めてあの子に剣を握らしてみたが、最初はてんでダメだったのに、三時間もすれば、かなり上達していた。
それは俺のアドバイスのおかげ…というよりも、純粋にあの子の才能と、【学習】というスキルのおかげだろう。
その証拠に、終わり際の構えは、なかなか俺に似てきていたし、俺が教えていないことも俺の動きから学び、徐々に反映していった。
今日、試しにやってみてわかったことは、あの子に細かな指導は要らない。ただ、見せてやる。もしくは体験させてやれば自然と覚えていくだろう。
それなら、明日は魔力操作を鍛えてやろう。
あの子なら上手くいくだろう。
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今日は午後2時に弟に会いに来た。
さて、弟は何をしているかな?
ほう。思った通り、頑丈な体だ。
もう、昨日のダメージはほとんど無いようだ。
今は家に付いた泥や草をを手で落としているな。
「ゴミクズよ、今日も来てやったぞ。」
私がそう言うと、弟は嫌そうな顔をした。
まあ、あれだけやって、好かれていたら逆に困る。さて、さっさとやってしまおう。
「また昨日のように無能のお前に私の剣を教えてやりたいところだが、私も忙しいのでな。悪いが今日は無理だ。そこで贈り物をやろう。」
そう言うと、弟は怪訝そうな顔をする。
さて、弟はどれだけやれるかな?
「受け取れ。」
その言葉と共に、私は“ある術式”を仕込んだ魔力の塊、魔力弾を弟に向かって撃つ。
弟に当たった魔力弾は弟を3メートル程吹き飛ばし、弟の中に“術式”を流し込んだ。
弟は、どこかあきらめたような顔をしながら立ち上がろうとしていたが、突然うずくまった。
その顔は苦悶に満ち、脂汗が浮き上がっている。
あたりまえだ。何故なら弟の体内では魔力が暴れまわっているのだから。
少しすると、弟は我満の限界に達したのか、のたうちまわり、叫び始める。
あの術式は一定の範囲内の魔力に乱数指令を送り、暴走させる。そういう術式だ。加減を間違えると、肉体をバラバラにしてしまうが、俺ならその心配は無い。
さて、何故こんなことをしたかというと、弟の魔力操作を鍛えるのと、弟に魔力身体強化を教えるためだ。魔力の暴走は、何も悪いことばかりではない。確かに体にダメージも有れば、魔法も使いにくくなるが、身体能力が上昇し、暴れる魔力を制御して魔法を使えば威力は格段に上がる。
そして俺は、弟がギリギリ痛みに耐えられ、ギリギリ制御できるかどうかぐらいの程度の暴走を起こさせた。
後は弟次第。
俺は一言かけて、今日は放置。
「ハハハ。気に入ってもらえた用で何よりだ。その状態は暫く続く。感謝しろ。それではまた明日だ。」
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~タクト~
朝起きて、いつもの朝食を食べる。
そして今日も体を鍛える。
少し疲れが残っているが、ほとんど問題無い。
そして草むしりをしていると、また我が兄がやって来た。
またズタボロにされるのか……。
そう思っていたが、どうやら違うらしい。
忙しいと言っていたが、それなら来なければいいと思う。
それに、プレゼント?何をくれるんだろうか?
まあ、ろくな物である可能性は低いだろうが…
そう思っていたが、どうやらプレゼントとは魔力を固めた弾を俺に撃ち込むことらしい。
はあ、昨日はなんとなく、もしかして俺を鍛えてくれているのかと思っていたが、やっぱりただのストレス解消に付き合わされただけらしい。
まあ、六歳の子どもに俺は何を期待していたのだろうか。
そんなことを考えながら立ち上がろうとすると、急にさっき魔力の弾を撃ち込まれた所が痛みだした。
まるで、体の中から火炙りにされているような激痛だ。
そして、それが体中に広がっていく。
耐えられない。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!!!!!」
俺の口から獣のような叫び声が発せられる。
痛い痛いいたいいたいイタイイタイイタイイタイ!!!!
なんだこれは
なんなんだ。
アイツは一体、俺に何をした!?
これを気に入ってもらえて何より?
ふざけるな!
暫く続く?
冗談だろ!?
アイツのふざけた言葉に怒りが沸き、少し痛みに耐えられるようになった。
くそ、とにかくこれをどうにかしなければ。
この俺の中で暴れている物は何だ?
決まっている。魔力だ。
それなら、押さえ込めれるはずだ。
俺は、それから暫く痛みに耐えながら、体の中で暴れている魔力を押さえ込もうとした。




