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モブ女子、人の恋路は楽しいもの♪

今回も読んで頂き、ありがとうございます!


主人公に変わって、友人ががんばります!


話はここで、お昼の騎士院へお弁当を届けに行く為に荷台を引いて歩く、イザベルの場面までさかのぼる。





騎士院へとイザベルが向かって荷台を引いていると、すぐさま騎士院のものと思われる体のガッチリした男が飛んできて、代わりに運んでくれることとなった。



「び、びっくりしました!ま、まさか、こんなに美しい人が我らの昼ごはんを運んでくれるとは!!」


「ごめんなさいね、いつもはクロエが運んでくれていたんでしょう?」


「は、はい!!」




毎日、毎日、重たい荷物を文句も言わずに彼女は運び続けたという。



「・・・・・あなたから見て、クロエはどんな人かしら?」



自分の知らない間の、大切な友の姿を知りたいと思った。



「く、クローディア殿ですか!か、彼女は、我らにとっては太陽のような人です。いつでも笑顔で彼女と会うと不思議と暖かい気持ちになり、身体と気持ちがとても軽くなるのです」


「!?」


「それを言うと、いつも彼女はそれは自分のせいじゃないとなぜか頑なに認めないのですが、彼女が騎士院に来るようになってからみなの笑顔が増えたのは本当のことなんです」


「・・・・そうですか」




男は、最初は自分に対しての緊張からか赤い顔をして固くなっていたが、彼女のことを話し始めるととても嬉しそうに笑顔で口を開いた。


彼だけではない。


騎士院に着き、初めは自分の外見を真っ赤な顔で褒めて喜びに浮かれていた大勢の騎士達が、彼女のことを聞くと皆が嬉しそうに話し、最後は彼女と最近会えてないことを寂しがっていた。


いつも笑顔で、頑張り屋だがうっかりしてよくドジをやらかして騎士院では大きな笑いがそのたびに起こっていたという。




その中でもーーーーーー。




「えっ?!なんでクロエじゃないのっ!?」




若い騎士の中でも、クロエと仲が良くいつでも一緒にいる騎士だと聞かされていた、レオナルド=ラティート。


爽やかな容姿で背も高く、少し細身だが筋肉がしっかりついたその外見はイザベルから見てもこれから将来有望な青年に見える。


街の中でも、密かに人気が広がりつつある1人だ。



そんな彼の落ち込みようはものすごかった。



この私の姿を見ても何の反応もないどころか、その後ろに彼女がいるんじゃないかと探し始め、散々探した後本当にいないと分かると今にも泣きそうな顔になっている。


何の反応もされないことに、少しだけムッとしたのは内緒よ?



「あなたは、クロエのことがとても好きなのね」



騎士院のみなが彼女に好意を抱いていたが、その気持ちとは違う好きの感情。




「うん!!俺、クロエのことが大好きなんだっ!!」


「!?」



すぐさま彼は何の照れや恥ずかしさも感じない、ニッコリと明るい満面の笑顔でそれを伝えてきた。


幼い子どもが、誰に対してもお母さんのことを大好き!!というなら分かるが、彼の年齢でここまで無邪気に言いきれるのは、彼の元々持っている素直さゆえだろうか?



「あ!もしかして、クロエのお店に新しく入ったっていう人?」


「えぇ。クロエのおかげで、ステル・ララで働くことになったイザベルです。これからよろしくね♪」


「・・・・・ふーーーーーーん」




何かしら?


他の騎士達のような、私に異性としての興味があって全身を見るのとは全然違う種類の眼差しを彼からは感じた。


さっきまではあんなに明るく人懐っこそうな感じだったものが、どこか冷たいゾクっとした寒気まで背中に感じそうな感覚を一瞬覚える。



「・・・・・まぁ、男でも女でも、クロエのことは渡さないからおんなじか!」


「え?」


「何でもない!クロエがいないなら俺訓練に戻るから、またね!」




後でこっちから会いに行こう〜〜!と、気持ちを切り替えて、すぐさま爽やかな笑顔で走り出してしまった。


彼とクロエの日々の様子はどの騎士から聞いても本当に仲の良い姉弟のようで、心から彼女を慕っているのがよく分かる。


まぁどちらかといえば、一方的に彼が体当たりな愛情をぶつけてそれを彼女が時に弾き返し、時には受け止めていたりという感じが多いみたいだけど。


だが、彼の瞳にそれだけではないものを微かに感じたのは気のせいではないだろう。





次に出会ったのは、この騎士院で副団長をしているというあの騎士さんの直接の部下だというグレイ=コンソラータさん。



「ーーーーーーご苦労様です」



背の高い無愛想なその青年は、彼もまた私に対しては無関心で必要なことだけを伝えてすぐにそばを離れる。



でも、ただ一度ーーーーー彼が私の背後に誰かを探して目をやったのを私は見逃さない。


本当に一瞬だったがその時の熱のこもった金の瞳に、私でも思わず息を飲んだ。





そして最後に訪れるのはもちろん『騎士さん』こと、ジークフリート=ウルンリヒ。


彼には彼女と同様、自分が今生きていけるのは彼のおかげだからこそとても感謝している。


そのお礼をきちんと伝えたいと思っていた。



彼女に礼を伝えた時は、



『私は大したことしてないよ!イザベルを直接助けたのはジークフリート様だよ!』



と真っ赤な顔をして笑っていた。




「こんにちは、騎士さん♪今日の分のお弁当を持ってきたわ」


「・・・・・君は」



騎士院の執務室で事務仕事をしていた彼は、私の姿に少しびっくりした後、やっぱり先ほどの副団長と同じく私の背後に『彼女』を目線だけで探す。


もちろん、見逃しません♪




「そうか、ステル・ララで働いているんだったな。元気そうで何よりだ」


「騎士さん達のおかげで、もう一度生きる気力が湧きました。ありがとうございます」



お礼の言葉とともに、深々と頭を下げる。


本当に、あの時彼に助けてもらわなかったらクロエとも出会えなかった。


そう考えたら、あの時の荒くれ者達にも感謝なのかもしれないわね。




「頭をあげてくれ、イザベル殿。俺は大したことはしていない。君を助けたのは俺じゃなくて、クローディアだ」


「・・・・・・ッ!?」


「どうかしたのか?」



突然私が驚いた顔をしたので、騎士さんも不思議そうにしている。



いやだ、この人ったら彼女と同じこと言ってるわ!



彼女の想い人である彼だが、街ではどこへ行っても若い子から夫のいる女達ですら彼の話で持ちきりで、街のほぼ全女性の憧れの的であった。


そんなジークフリートと彼女が旅の中で一緒にいるのを見た時に、お互いを信頼し合あう仲間以上のものも感じて、全く脈はないわけではないように思えたのだが。



実際のところはどうなのかしら?




「いえ、何でもありません。それより、昨日のパーティーの間でも不審な輩をジークフリート様直々に捕まえられたとか。さすがですね♪」


「いや、あれは俺じゃない」


「なら・・・もしかして、クロエですか?」


「!!??」



森の中で大勢の黒ずくめの刺客?や、モンスターに襲われた際、彼らと戦うクローディアは氷の魔法を自由自在に扱い、騎士様にひけをとらず戦闘における知識のない自分からみてもじゅうぶんに強かった。


だから彼女が城に浸入した賊を捕まえたと聞いても、違和感は全くないのだけれど。


違和感はむしろ、彼女の名前が出た途端にほおをわずかに赤らめて口元を手でふさいだ目の前の騎士さんの方だ。




あら?




「・・・・そ、そうだ」


「そうだったんですね。彼女ずいぶんとお酒を飲んで、パーティーの記憶が途中から全然ないみたいなんです」


「そ、そうか」


「・・・・・・・」



あらら?


これは、あやしい。


さっきからずっと顔がわずかだが赤いままだし、体も何やら普段よりもギクシャクしてるようにも見える。


でも、もしこの騎士さんと彼女に何かあったならあのクロエのことだから、今頃は大騒ぎしてそうなものだけれどーーーーー今朝の彼女はむしろどこか悲しそうな顔だった。


騎士院のお弁当を届けるこの役割だって、きっとこれまでとても楽しく喜んでやっていたに違いないのに、ララから提案された彼女は何の反対もせずに受け入れたのだ。



パーティーで、2人に何があったのかしら?


少しだけなら聞いてみてもいいわよね。




「・・・・もしかして、酔っ払ったクロエに絡まれでもしました?」


「!!??」




ガタンッ!!



バサバサバサッ!!




あらあらあら、なんて分かりやすい♪



これは完璧に黒だわ!



旅の間は常に冷静に状況を判断して、すぐに感情が荒れる王子様やそれにつられて反撃に出るクロエをその時々に合わせて止めたり仲裁に入ったりしている姿が多かったのだが。


今の彼は、その時の彼とは全然違う。



いやだ!



ただの堅物かと思ってたけど、わりと面白い人じゃない♪




「す、すまない!」


「いえ、書類はここでいいですか?」


「あ、あぁ。大丈夫だ」


「ーーーーーーそれで、何があったんですか?」




ガタンっ!!!



バサバサバサッ!!!




「あらら、せっかく集めた書類が」




これはまた派手に散らばったわね〜〜。




「ぐ、グレイ!!お前、さっき部屋を出て行ったはずじゃ・・・・ッ!!」




確かに。


私もついさっきこの部屋から出たはずの彼と話したのだけれど、いつの間に入ってきたのかしら?


彼の低めの声が響くまで、物音ひとつしなかったわよ?



副団長ーーーーグレイは相変わらずの無愛想な真顔で、入り口から入ってすぐの壁に腕を組んで涼しげにたたずんでいた。




「ーーーーーー少し、用があっただけです」


「の、ノックぐらいはしろ!」


「珍しいですね、普段は何も言わないあなたが。何かーーーーー聞かれては困ることでも?」




金色の瞳が鋭い光でもって、ジークフリートをまっすぐに射抜く。



「ぐっ・・・・べ、別に、何もない!」


「ーーーーーーそうですか」



なるほど。


そういえば、騎士の人達が怖いのは裏の団長とかなんとか言ってたわね。


普段無口な分、怒らせると相手をじわじわ静かに追い詰めるタイプだわ。



「君はーーーーイザベル殿と言ったか?」


「は、はい」



グレン副団長が、落ちた書類を再び拾い始めた私のところまで歩いてくると、私と目線を合わせるようにしてその場に片膝をつく。


元々背がとても高いこともあり、私からは顔を少し見上げる感じだ。



「ーーーーーーこれを、クロエに」


「これは?」



副団長さんから渡されたのは茶色の四角い紙でできた小さな袋で、中にはとても小さな葉っぱがたくさん入っていた。



「ーーーーー飲み過ぎに効くお茶だ」


「!?」



ボソッとそれだけを真顔のままで言うと、私の返事を待たないまま、グレイ副団長はすぐに部屋を出て行ってしまう。


さすがは騎士院では表舞台で活躍する団長を縁の下の力持ちの影として常に支え、相手の為にとさりげない気遣いのできる、男性の中では中々数少ない本当にできる人だわ。



「・・・・騎士さん、この書類はここでいいかしら?」


「あぁ、すまないな。ありがとう」




ようやく冷静さを取り戻した騎士さんへ書類を渡すついでに、その耳元へと一言だけ囁く。



「敵は多そうね?がんばって」


「!!??」




バサバサバサッ!!!




あらあら、最後までごめんなさいね?



とりあえず、今回はこれ以上彼に追求するのはやめて(多忙を極める彼の仕事の邪魔になってしまうので)私はクロエの待つ、例のお店に向かう為に急いで騎士院を出た。




さて、ここから彼らがどうなるのか。


他人事って、本当に楽しいものね♪




でも、彼女の幸せの為の応援しか私はしないわよ?


あるゲームでくっついてからも他の人と二股かけたり、略奪したりされたりと、なんでもありなゲームができた時に本当にすごいなと。


でも、それこそゲームでしか楽しくできないことですかね。

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