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モブ女子、女同士でデートです!

今回もお読み頂き、ありがとうございます!


久しぶりにあの人の登場で私も嬉しいです!


パーティーが行われた次の日の朝早く。



とうとうバーチさんが王都へと到着し、少し体を休めてから夕方には王様の前でその全てを話すことになった。


その場には王妃様とアルフレド様、アビゲイル様にラファエル様と、大臣を始めとする数人の貴族、そしてジークフリート様が同席の為に呼ばれているという。


私自身も実は同席をと打診があったのだが、パーティーで記憶が途中から全部吹っ飛ぶくらいのひどい二日酔いの為に、体調不良でと丁重にお断りさせて頂いた。


いや本当に全然記憶が途中から真っ白なんだけど、一体どれだけのお酒を飲んだらこんなに次の日頭が痛くなるんですかっ!?


うろ覚えの記憶の最後はマルゲリータじゃなくて、確かマーガレットという名の貴族の可愛い子に何か色々言われたような気がしたんだけど、その内容が曖昧で正直よく覚えていない。



ただ、体調不良は嘘ではないけれど、王様から直々の打診を断ったのは『彼』に合わないようにというのが本当の理由だ。


それに自分は無理をいって一緒についていったオマケのような存在。


念のためのマーズは近くに控えさせて頂いているものの、1人だけ庶民があの場にいるのはやっぱりおかしい気がした。



それに、これ以上彼に関わってしまったら、ローズが王都に来てからどうなるかが分からないし、自分勝手かもしれないかもないが今の気持ちのままで2人を笑顔で祝福できる自信が全くない。



だから、これからは影から彼のことを見守ろうと固く決めた。



最後に、ジークフリート様にエスコートしてもらい一緒に舞踏会で踊るという、とても幸せな思い出ももらえた。


前世のことを思えば、破格の出来事すぎる。




その決意をボルケーノ様にも伝え、彼に危険がないように見守って頂くことと、彼に私が会わないように協力をしてもらっていた。



『それで・・・・主は本当に良いのか?』



ボルケーノからとても真剣な表情で聞かれて、数秒ほど私は息を止めていたけれど、それが彼の幸せの為だからと笑ってうなづいた。


方法が変わるだけで、目的は最初から何も変わらない。


うん、彼の顔を直接見なければ大丈夫!


私はモブで町民Aの役割をちゃんと果たせばいい。



今日はお昼の騎士院へのお弁当を、私の店で一緒に働くことになったあのイザベルが荷台に積んで持って行ってくれることになっている。


明日以降はハンナさんと、交代で騎士院に行ってくれることになった。


これは私がお願いする前になぜかお母さんから提案されて、それを自分から話すのがとても言いづらかった私にはまさに渡りに船で大賛成で2人にお願いをした。



そのあとでイザベルにデリバリーの仕方のことを話したら、さすがに私と同じように背中に担ぐなんてどうやっても無理よ!!と、全力で拒否されてしまった。


そんなことが普通の女性にできるわけがないでしょ!?って。



おかしいな。


私も一応町民Aのモブで、本当に普通の女性のはずなんだけども。



まぁ、きっと道の途中からは彼女を見つけた騎士達がすぐさま飛んでやってきてその荷を喜んで代わりに運ぶに違いない。


えぇ、みなまで言わなくともお分かりでしょうが、私の時にそんなことをしれくれる騎士院の輩は1人もいませんでしたっ!!


女としての魅力の差だとはじゅうぶんに分かってるけど、やっぱり悲しい〜〜〜!!




「クロエちゃんたら!あんな働きもので仕事もできる美人を、どこで見つけたの〜〜??」



お母さんもイザベルのことをすぐに気に入り、お店の皆も彼女を快く受け入れてくれていた。


元々家の家事を幼い頃からほぼ全部をこなしていた彼女は、ウェイトレスとしての仕事は内容をを聞くとすぐに理解し、その美貌だけでなく仕事ぶりもスマートかつとても迅速だ。


面倒な客のあしらいも大変に上手く、従業員達からの信頼はすでに熱い。


そんな中で一番すごかったのはやっぱり私の予想通りお店に通うお客さんで、イザベルが働き出してから早々にうちのレストランに長い行列が出来るくらい一気に混むことになった。


もちろん、その大半がイザベラ目当ての熱狂的な彼女のファンの男性客。


彼女をテーブルへ呼ぶ為にお酒や料理をどんどん注文してくれるので、お母さんはもう毎日ウハウハなようで鼻歌まじりに今日も並ぶだろう客に配る整理券を作っている。


女性からもイザベルから恋する男性のことや、男性の上手い転がし方などを聞きたくて

通う常連客も口コミで日に日に増えていっているらしい。


そして、私はこれからそんな超人気者の彼女とこれからデートですっ!!


そう、ついにあの時の約束のケーキを一緒に食べに行ってきます!!



彼女が騎士院へのデリバリーを終えたらお店に2人で行く予定なので、私はそれまでこの二日酔いをなんとかするのと着ていく洋服をさっきから選んだ悩んでたりする。


女同士なのに、何を悩むのかって??


いいですか?


私がこれから一緒に行くのは、今王都で男女問わずに人気者になりつつある美人ウェイトレスの色気溢れるイザベル様ですよ??


そんな人と一緒に歩くなら、私のような普通の町民は少しでも頑張らないとあっという間に周りの景色と化してしまうんです!!



いい加減、無駄な抵抗だって?



こんなところで少しでも抵抗しておかないと、普段全く気を遣わない私の女の部分はあっという間に男性ホルモン一色に染まってしまうじゃないですか!!


まぁ・・・・それでも、これから生きることに希望を見出し、全力で自分の生を生き始めた彼女の輝きは元々の美貌だけじゃなくて、本当に心の底から溢れているものだからこそ、余計に人を魅了してやまないのだけれど。


そんな彼女のことがとても誇らしく、皆が彼女を褒めるたびに私も自分のことのように嬉しくて心が躍る♪



「さて、なにを着て行こうかな〜〜?」



久々にイザベルとゆっくり過ごせる時間が持てることにウキウキしながら、私はクローゼットの中の服と再びにらめっこを始めた。



「・・・・・・・ッ」



一瞬だけ、騎士院のある方角に無意識に目を向けるが、すぐさまいけない!と気持ちを切り替える。








「何よそれ。これまでずいぶん勝手なことしておいて、今さらじゃないの?」


「・・・・・うぅっ」



そして、今まさにそんな彼女とのデート中に場面は映る。


いやその前に先ほどの、目の前で起きたことを話させて頂きたい!


例のケーキのある王都でもナンバー1人気を誇る店『RUKKA』は、いつでもすごい行列が並ぶ場所なので、先に並んだ方がいいだろうとすでにかなりの人数が並ぶ列で待つことにしたんだけど。



『クロエ、お待たせ!もう入れるみたいよ?』


『・・・・・へ?』




騎士院へのデリバリーを終えて、セクシーな私服に着替えた遠目からでも眩しい美しさのイザベルが来た瞬間、行列に並ぶ何十,何百人がいっせいにどよめいた。



『席の用意ができたって、マディソンさんが♪』


『?!』




マディソン=モード。


『RUKKA』のオーナーであるモルガン=モードの息子であり、副オーナーだ。


確か、そこそこイケメンの青年で女性客からは彼目当ての人も大勢いるらしいのだが、そのマディソン=モードが今目の前でイザベルを貴族の姫にでもするかのように丁寧にエスコートしている。


『イザベルさんが、まさか我が店に足を運んでくださるとは光栄です!』


顔を真っ赤にしたマディソン=モードさんに案内され、まさかのRUKKAファストパスで私たちはあっさりと店の中へと、しかも5階にあるゴージャスな様式のVIP席へと通された。




『・・・・・な、なんでっ?!どうしてこうなったっ?!』




VIP席にて、執事風の銀色の髪の毛のヒゲがなんともオシャレに光るナイスミドル!なウェイターに運ばれた、ワイングラスに注がれたおいしい水を飲み干し、ようやく私は溢れ出す疑問を吐き出した。




『あら、言ってなかったかしら?』


『なんっっにも聞いてないっ!!』




くいっと、その麗しい唇から口の中へと注がれる中身はただのおいしい水が、イザベルの持つワイングラスの中にあると、なぜそうは見えないのか。




『この街について直ぐに、ステル・ララのお店を探す私を見かねて案内してくれたのが、彼なのよ。お礼に何かできないかって行ったら、今度食事かお茶がしたいって言うから』


『もう行ったのっ?!』


『フフ・・・・まだよ』


『まだ?!そんなにギッシリお店の仕事に入ってくれてるんだね。よし、今度私からお母さんに休憩や休暇もちゃんともらえるようお願いしておくから!』



働いて数日、イザベルは朝から夜までフル回転で働いていたのかもしれない。


昼から夜の間は店の準備で一旦閉まるんだけど、その間も夜の準備で働いていたのかも!



『クロエ、違うわ。ちゃんとララさんから休憩も休みもしっかりもらえてるわよ?』


『そしたら、どうして?』


『だって・・・・・すぐに行ったら、彼が私との食事を楽しみに待つ時間が短くなってしまうじゃない?』


『!?』


『男は女を落とすまでに熱く燃えるものなんだから、女はそれをゆっくり楽しめばいいのよ♪』


『・・・・・・』




ニッコリと素晴らしい笑顔でイキイキした様子のイザベルを前に、私は自分が本当に同じ女なのか心から疑問に感じてしまった。


イザベルさん、第二の人生をとても楽しんでおります!


これからの彼女がもう一度誰かを心から愛するのか、ヨハンを愛し続けるのかは彼女次第だと思ってます

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