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モブ女子、目覚めの時

お読み頂き、ありがとうございます!!


ようやく、ここまできました!


サーラ様が入れてくれたお茶を飲み干し、気持ちが落ち着いたところで私たちはアルカンダルへと帰ることになった。


エルフの薬は青い小瓶がそうだったようで、王妃の口の中に含ませれば大丈夫とのことを聞き、私たちは期待に胸を踊らせる。


しかも、帰り道は何ともありがたいことにサーラ様が魔法で送り届けてくれるという。



「本当に、色々とありがとうございました!!」


「心から、感謝します」


「・・・・あ、ありがとう、ございます」



それぞれに緑の魔女様へとお礼を伝えて頭を下げると、サーラ様はとても優しい笑顔で私たちを見送ってくれた。



「また気兼ねなく、遊びにいらっしゃい」


「はい!!」


「あと・・・・・」



最後に、こっそり私にだけある人への伝言を耳元で頼まれる。



「わ、わかりました」


「今度は、2人でいらっしゃいね」


「ぜ・・・・善処します」



誰と一緒にかは、察してもらえると有り難い。



そして私たちは緑の光を放つ空間に包まれ、森の中で手を振るサーラ様の笑顔を最後に目を閉じ意識をそのまま手放す。



次に目を開けた時には、見知らぬ真っ白な石でできた塔の前にいた。



「こ、ここは・・・・?」


「母上!!」



この場所をいち早く察したアルフレド様が、すぐさま塔の入り口へと向かって走っていく。


「そうだ。この上に、王妃様が眠っている」


「!?」


「俺たちも行くぞ」


「は、はい!!」



風のように走るジークフリート様の後ろから、私も必死に追いかけていく。


塔の中は螺旋階段になっていて、最上階までは結構な高さがあり正直息がきれた。


それを息を全く乱さないジークフリート様の後ろ姿を、何とか小さくてもいいから見失わないよう頑張るが、とうとう階段の終わりが来た時は足がかなりガクガクしていた。



「ハァ・・・ハァ、こ、ここに、王妃様が?」



顔を上げた先には、石で作られた壁の周りにたくさんの花々が植えられた鉢植えが周りに置かれていて、その周りにある窓はステンドグラスでできており、そこから入る色とりどりの光が本当にキレイだった。



「・・・・・・あっ」



そして、その先には大きなベットで眠る女神のように美しい長い金髪の女性がいる。


その光景は以前ゲームのCMで見た、あの眠る美女のスチル画像の絵そのもの。


透き通るような肌に、金色の髪が光を放ちながらそばに寄り添い、伏せられた長いまつげも髪と同じ金色に光っている。



「この人が・・・・・マーサ王妃」


「クローディア、薬を貸してくれ!!」



薬はポケットがあり、いざという時には神へと預けられるようにと私が持っていた。



「うん、はい!」



青い小瓶を、アルフ様へと渡す。


その薬を受け取ると、真剣な表情でおそるおそるアルフ様が上半身だけを抱き起こしたマーサ王妃の口元に、小瓶の中身をつけて中の液体を注ぎ込んだ。



「・・・・・・・ッ」



眠っている王妃は、それでも体の本能なのか含まれた液体を喉が自然と受け入れる。



「・・・・・・・・」



しばらくは、みなが息を殺し沈黙が続いた。



そしてーーーーーー。



「・・・・・・ん」


「!?」



マーサ王妃のまぶたが揺れ、その長いまつげの中から明るい空の青を写したようやサファイヤの瞳が現れる。


本当に、なんて美しい人だろう。


アルフ様によく似たその顔は、慈愛に満ちたどこまでも優しくそして品のある美しさに溢れていた。



「・・・・・・あら、ここは?」



マーサ王妃はキョロキョロ辺りを見渡し、不思議そうに首を傾げている。


当然だ。この場にいる私もジークフリート様のことも、いや息子であるアルフ様のことだって王妃様から見れば他人のようなもので、それに寝起きで囲まれてある状況にはさすがにびっくりするだらう。


まさか、自分が何年も寝ていたと分かるわけがない。


ほら、さすがのアルフ様も今にも感激のあまりに今すぐ泣きたいのに、なんて声をかけていいのか混乱して分からなくなってる。



「あなた・・・・まぁ、こんなに大きくなっちゃって、お母さん急に歳をとったみたいだわ」


「は、母上?!ま、まさか・・・・俺のことが、分かるのですか?」



アルフレドの体は、震えていた。


何年ぶりかに聞いた母親の声と、長いこと記憶の中にしかなかった自分へと向けられる温かい眼差しに、どうしようもないほど心がうち震えている。



「もちろんよ、愛する我が子だもの。あんなに小さかったアルフが、こんなに立派な青年に突然なってるなんて、少しびっくりしているけれど・・・・・あなたなんでしょう?」


「は、母上ぇぇぇーーーーーー!!!!」



とうとう我慢の限界が来たのか、アルフレド様がマーサ王妃の胸の中に泣きながら飛び込んだ。



「まぁ・・・身体が大きくても、泣き虫さんなのは相変わらずねぇ」



そんなアルフレド様を両手でしっかりと包み込むと、マーサ王妃は愛おしそうにその頭を優しく撫でる。



「・・・・・・ッ!!」



その光景に、そばで見ていた私もついついもらい泣きしてしまった。


そんな私の頭を何も言わずに、横にいたジークフリート様がそっと撫でるものだから涙が余計に出てしまう。



そして、ひとしきりアルフ様がマーサ王妃様と泣きながらの再会を果たしているスキに、ジークフリート様が兵士へと王様に伝令を頼んでいたようで。


しばらくするとバタバタと激しい物音と共に、王様と何人もの兵士がその部屋へと息をきらさせながら入ってきた。



「・・・・・ま、マーサっ!!!」


「あら、あなた。まぁ、急にずいぶん渋さが増しましたわね?そんなあなたもステキですわ」


「マーサ・・・・マーサッ!!!」



あの穏やかな王様が、胸に愛する息子を抱いたままのマーサ王妃を後ろから強く抱きしめる。



「もう、2人とも今日はずいぶんと甘えたになってしまったのね?」



何も知らないマーサ王妃は、それでもとても嬉しそうに2人へと笑いかけた。



「本当に、良かった!」


「・・・・・あぁ」



その親子の幸せに溢れた光景に、私達だけではなく一緒に塔に来ていた兵士たちも次々と涙を浮かべる。



こうして、私達3人の旅は無事に終わりを告げた。


お母様の柔軟性抜群です!


まだもう少しだけアルフレド編が続きます!


よろしくお願いします!

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