モブ女子、さぁ、お母さんはどっち?
今回も読んで頂き、ありがとうございます!!
お母さんではありませんが、王道の本物はどっち?です
2人のクローディアから、本物を見定めろだと?!
「おい!普通ここは、俺の母上が選ぶ相手だろう?!なんでお前なんだっ!!」
「そ、そんなこと言われたって、私に分かるわけないじゃないですか!!」
「そんなこと言って、ただ違いがわからないだけじゃないですか?」
「!!??」
これの、これのどこを違うと判断しろと言うんだっ!!
溶岩がたぎる岩山の上で、左右に全く同じように拘束された同じ姿のクローディア×2VS俺との言い争いが続いていた。
「だいたい、会ったばかりのお前のことなど何も知らないというのに、何を基準に判断しろって言うんだ!!」
「会ったばかりって、王都から離れてからはずっと一緒にいたじゃないですか!!」
「そうです!それに知らないんじゃなくて、アルフ様が知ろうとしなかったんじゃないですか!!」
「う、うるさいっ!!そんなこと言って、お前達双子だったんじゃないのかっ?!」
なんなんだこの2人はっ!?
その表情も言ってることも、本人としか俺からは思えず、さっきから俺の腹しかたたないぞ?
「ふ、双子の訳がないじゃないですか!!」
「分からないからって、勝手に人の設定を変えないでください!」
「くぅぅぅーーーーーっ!!」
顔を真っ赤にしながら眉間にシワを寄せる俺に、2人の容赦ない攻撃は続く。
「そんなんじゃ、私じゃなくて王妃様でも分からなかったんじゃないですか?」
「普段から相手のことを疑ってばかりで何も見てないから、いざという時に何も分からないんです!」
「お、お前!!魔法が使えるなら、自力でなんとか出来るだろうっ!?」
そうだ!!こいつは炎の魔法を使えるんだ。
鉄の鎖だって簡単に解かせるはず!!
「・・・・アレフ様、それができるならとっくにやってますよ」
「わざわざ逃げられるのに、わざとそのままでいるわけないじゃないですか。ドッキリじゃあるまいし」
「く、くそっ!!わけのわからないことを言うんじゃない!!」
本当に、今のままじゃ何も判断がつかない。
俺はこいつの言う通り、何も知らないんだ。
『どちらにするか、決まりましたか?』
空間に、緑の魔女の言葉が響く。
「こ、こんな状態で、決められるわけが・・・・っ!!」
アルフレドの膝が折れて床に足がつく。
せっかく、せっかく母上を助けられるチャンスを貰えたというのに、何で俺はこうなんだ!!
ジークフリートなら、あの男ならきっとどちらが本物の彼女なのかなんて、すぐに分かるに違いない。
黙ったまま、2人を見比べてすぐさまこちらだと冷静に正解をあっさりと選びそうだ。
俺には、彼女を見ただけではその違いなんかまるで分からない。
話をしていても、まだ何も分からない。
旅の中で話したことを思い出そうとしても、怒ってばかりの俺に何度も話しかける彼女の姿しか思い浮かばない。
『私にじゃない!!その食べ物を作ってくれた人、育ててくれた全員に謝って!!!王子だろうがなんだろうが、自分の国の人達が苦労して作ったものを簡単に投げ捨てるなんて、あんたは本気で大バカ野郎王子だっ!!』
そういえば、彼女もあの時を境に遠慮なく俺に対しても怒るようになったな。
あの時は、まさかこの俺が女に拳で殴られるなんて思いもしなかったから、本当にびっくりした。
後にも先にも、きっとあいつぐらいに違いない。
『それはだし巻き卵ですよ!こっちの、チーズ入りハンバーグもオススメです!』
それに、俺が彼女の弁当を毒味をしてもらいながらだが、食べた時には笑っていた。
一緒にいる中で、彼女の笑顔もそれからはどんどん増えていった。
それを向けられる相手は、自分ではないことがとても多かったけれど。
『甘かろうがなんだろうが、相手を疑えば疑われるし、相手を信じるから相手から信じてもらえるんですっ!!』
「!!??」
そう、だったな。
俺が彼女を信じるのがーーーーーー先か。
「・・・・クローディア」
しばらく黙りこんでいた俺が顔を上げると、右側のクローディアと目が合う。
「アレフ様!!私が本物のクローディアです!どうか私を信じてください!!」
「・・・・・・」
そして、左側のクローディアの方をそのまま見つめた。
「アレフ様が決めた方でいいですよ。私はあなたを信じてます」
「・・・・・・ッ!」
あぁ、そうかーーーーー簡単じゃないか。
彼女達をよく見れば、自分の中で自然と答えは出た。
そして、そのまま『クローディア』がいる方へのまっすぐに歩いていく。
「緑の魔女、俺の答えは決まった。こいつが、俺がずっと一緒に旅をしてきたクローディアだっ!!」
『よろしいのですね?』
「あぁ!」
『では・・・・・』
そして、選ばなかった方のクローディアの岩場が崩れ始め、彼女は鎖に縛られたまま溶岩の中へと落ちていく。
「あ、アレフ様!!どうして?!私が、私が本物のクローディアなのに・・・・・ッ!!」
彼女の叫びにも、アルフレドは振り返りもせずに目を閉じる。
「キャァァァーーーーーーー!!!」
最後の叫びとともに、彼女だったものは溶岩の中に落ちその正体を明かすことなく溶けて骨すら残さず形を失った。
「お前が、クローディアだろう?」
アルフレドが、目の前で鎖に縛られたままの彼女に声をかける。
「・・・・・あ、アレフ様」
彼女の目からは涙が溢れていた。
きっと、本当はずっと怖かったに違いない。
「どうして・・・・私だと?」
「お前が俺に言ったんだろう?相手を信じるのが先だと」
「アレフ様・・・・ッ!」
そして彼女を縛る鎖が砕け始め、彼女の身体が空に投げ出されその体をしっかりとアルフレドが受け止める。
「!?」
ずっと、いざという時に彼女を助けるのはジークフリートの役割だった。
本当はずっとーーーーー彼女をその力強い体と腕で支え、抱きしめられる彼が羨ましかったんだ。
ずっと誰かに守られてばかりだった自分が、誰かを守れる自分になりたいと。
母上以外の人を、彼女のおかげで俺は初めてそう思えたんだ。
「さすがは俺様だな!」
「いや途中、けっこう危なかったじゃないですか!」
「そんなわけないだろう?!あれは、ただの遊びだ遊び!」
「遊びって・・・それでうっかり間違えられたら、私今頃溶岩の中なんですからね?!」
「う、うるさい!!ちゃんとお前を選んだ俺に感謝しろよ?」
「はいはい、ありがとうございましたーーーー」
「おい、なんだその棒読みは!心がこもってないぞっ?!」
お互いに顔を見合わせながら、いつものようにケンカを始めた2人は、ふとした瞬間にそのことに気がつき、どちらともなく笑い出す。
「アレフ様。さっ、行きましょう!小瓶はきっとあの先です!」
「あぁ、そうだな!!」
見ると偽物のクローディアが崩れ落ちたところから、新しい道が出来ていた。
2人は立ち上がると、そこに向かって走り出す。
その道の下には溶岩が流れており、その様子を見たクローディアが思わず息を飲んだ。
「・・・いや本当に、落ちなくて良かった」
「おいっ!!お前は俺のことを信じてたんじゃないのかっ?!」
試練を超えてもなお、2人の言い合いはまだまだ続いていた。
ジークフリート様だったら、どんな風に見抜きますかね?それも機会があればやってみたいです。
レオとクローディアは仲のいい姉弟の様な感じで
アレフ様と2人のイメージは同い年のケンカ友達みたいな感じです。




