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モブ女子、廊下の先にある試練

今回も読んで頂き、ありがとうございます!


あるゲームでは、ワープにワープが続いて、でも景色が全然変わらなくてついにバグったのかと心折れて途中で消してしまったことがありました。


後から攻略方を見て、あとほんの少しの我慢だと気づいて後悔するんですけれど。




扉を開けた先は、木で作られた狭い廊下が続いていた。


その幅は人が2人並んで歩くのがやっとというぐらいの広さだ。


だが、廊下の長さは思ったよりも長い。


外で見かけた小屋の大きさからはそぐわないこの長い廊下に、ついにゲームでよくあるワープゾーンにでも入ったのかと思った。


ツボではなく普通の扉だったけれど、それもよくあるパターンだ。



「・・・・・・とう」


「え?」



突然、前を歩くアルフレド様が声を出す。


廊下を歩き始めてからずっと黙り込んでいたから、私から話しかけるのもしづらくて沈黙が続いていたんだけど。



「い、色々と、ありがとう」


「・・・アルフ様」



それは本当に小さい声で、顔もこちらに向けずに発せられた言葉だった。


まさかあのプリプリプリンスが、こんな私にお礼を言ってくるなんて!


胸の奥がほっこり温まるのを感じた。


気分はまだ産んだこともないが、成長した息子の姿を見た母親のような気分だ。



「大丈夫!小瓶取ってきて、お母さんを絶対助けようね!」


「・・・・・あぁ」



バンバン!と、その背中をたたきながら隣に立てば、アルフレド様は顔を私に見えないよう反対側に背けて、ぐすっと鼻をすすり上げた。


「!?」


その頭を抱え込んでグシャグシャに髪の毛を撫でくり回しながら、思いっきり抱きしめて泣かせてあげたいーーーーなんて思うのは、きっと普段それを躊躇なくやってしまえるレオがいるからだ。


彼は泣きたい時は泣くし、笑いたい時は笑う。


甘えたい時は胸に飛び込んで来るし、むしろ甘やかして!と自ら撫でてもらう為に頭を差し出してくる。


現代での自分の周りでは、保育園の子ども以外で中々いなかったそんな存在に慣れてしまったからなのだ。


そう自分に言い聞かして、正面のドアに向かって突き進む。



「・・・・・ッ!!」



だがその扉をあける前に、私の体は不思議な空間に突然巻き込まれ、アルフレド様のそばから無理矢理に離されてしまった。


周りの空間が不自然なぐらいに歪んでいく。


そしてすぐ隣にいるはずの彼に声をかけることもできないまま、視界が黒くなっていき私は意識をそのまま失ってしまった。







「・・・・・く、クローディア?」



ふと、隣から気配が消えたことに気がついて顔を向けてみても、そこに彼女はいなかった。


「お、おいっ!?どこにいるんだ?クローディアッ!!」


辺りをぐるぐる回って見渡してみても、隠れるところなどどこにもない狭い一直線の廊下に彼女の姿はない。



「・・・こ、これも、あの魔女の仕業なのか?」



入り口に戻ってみることも考えたが、これがもし魔女の仕業なら意味のあることなのかもしれない。



「くっ!!」



彼女の安否が分からないことに苛立ちながらも、前にある扉に手をかけて次の部屋への道を開いた。



「・・・・・なっ!?」



すると、そこは溶岩がグツグツと煮立っている岩山の中。


空には暗雲が立ち込めている。


自分の立っている場所はまだ広さもあって危険は少なそうだが、先の分かれ道の下にはどこから来ているのか溶岩が川のように流れていた。


そこに立っているだけでも大分体は熱く、空気にもピリピリしたものを感じる。


頬は溶岩からの熱にすでに火照っていた。



「な、なんで・・・・こんな場所に?」



出てきた扉の方へ振り返ってみたが、すでに扉もあるはずの小屋も何もかもがなく、ただゴツゴツとした岩山が続いている。



「く、くそっ!!ここで俺に、何をしろと!?」



とにかく、この先にあると言われた小瓶を探す為にも静かに岩山の先へと足を進めた。


もしこの足場が崩れたらと、その歩みは慎重にゆっくりと。


だが、その歩みはある光景を前にスピードを一気に速める。



「クローディアッ!!!」



岩場の道の先に広いスペースがあり、そこで長い丸太のようなものの上の方で、体を鉄の鎖で縛られている彼女の姿を見つけたからだ。


丸太の下の方は岩がしっかりと積まれてあり、その丸太のあるすぐ後ろは崖になっていて溶岩の海が、そこに落ちてくる全てのモノを溶かそうと待ち構えていた。



「クローディアッ!!」


「アルフ様!!私はこっちです!!」


「!!??」



その有り得ない光景に、アルフレドの頭が一気に混乱する。


目の前で丸太に縛られているクローディアと、全く同じ姿と状況で縛られたクローディアがもう1人、反対側にいたからだ。



「く、クローディアが・・・2人??」



どちらを見ても、見た目は何も違いはない。



「アルフ様!!」


「アルフ様!!」



そこから発せられる声だって同じだ。



「ど、どういう、ことなんだ?」



その時、アルフレドの頭上から緑の魔女の声が響く。



『選んでください。どちらかが偽物で、あなたが選ばなかった方は溶岩の中に落ちます』



「な、なんだとっ!?」



『あなたが一緒にここまで来たのは、どちらのクローディア=シャーロットですか?』



「・・・・・ッ!?」




選べるチャンスは一度きり。


アルフレドは、眉間にシワを寄せながら彼女達の顔を見比べる。


2人の足元の岩場から落ちていく岩の欠片は、溶岩に落ちるとすぐさま溶けてその形を失った。


次回、本物のお母さんはどっち!?


ってお母さんじゃないですけどね。


よくありまくる王道展開ですが、ゲームでは道具が使えたりしてヒントがもらえるし、間違えたらリセット出来るから気持ちは楽でした。

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