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モブ女子、誓いの言葉

お読み頂き、ありがとうございます!


2人の過去もこれから書いていけたらと思います!


ルークが教えてくれた『主従の契約』について、私はアルフレドとバーチさんにその内容を正しく伝えた。



「ありがとうございます。それをあなたにお願いできますか?」



話を聞いても、バーチさんの意思は変わらず、むしろそれこそが望みですと嬉しそうに少しだけ笑ったような気がした。



「バーチ!!お前、自分の言っている意味が分かっているのかっ!?」


「分かっています。わたしはあなたを一度裏切った、王家に対するいわば逆賊です。そんな危険な人間を側におくのに、これでもまだ足りないぐらいだ」


「!?」


「わたしは今度こそ、こんな自分を少しでも信じてくれていたあなたに、許されるのならば心からの忠誠を捧げて死ぬまで側で仕えたい」


「・・・・・バーチ」



アルフレドの記憶の中ではバーチは物心つく頃にはいつだって側にいて、彼との始まりはどんなものだったのかは覚えていない。


もしかしたら、そういう話もこれからはできるのかもしれない。



「・・・・・・ッ」



ほんのすこし前までーーーーーーまさかこんな、穏やかな気持ちで彼との時間がまた過ごせるなんて、思いもしていなかった。


恨んで憎んで、どこまでも彼を責めて、それでも憎みきれなくて。


だがそれでも、もう一度彼と過ごせる時間があることを、心の中で確かに喜んでいる俺がいる。



「・・・・・分かった。お前がその命を懸けて俺の騎士にもう一度なることを、許そう」


「ありがとうございます!!」



俺の言葉に、バーチの目からは涙が流れていた。






「それじゃあ、始めますね」




正直、私の心も少し重い。



それでもバーチさんの強い意思の眼差しから、彼の気持ちを大事にするためにもルークに教えてもらった呪文を頭の中で繰り返す。


バーチさんとアルフレドの親指に小さなキズを作ってもらい、親指同士を合わせその上から私の手を重ねて握りながらそれを唱えた。



「バーチ=ジェロよ、お前は主としてアルフレド・ルカ・ド・オーギュストを生涯守り、その変わりない忠誠を一生涯かけて誓うことを、お前の魂に刻みこむ。裏切りには死を。ピスティス・フィディーリタースッ!!!」



私の言葉とともに、2人の合わさった血が混ざりバーチのクビに紅い色をした、古代文字ようなものの羅列がチョーカーのように首の周りに埋め込まれる。



「・・・こ、これで終わりなのか?」


「う、うん。ルークが言うには、これで正しく発動したと思う」



以外とあっけなく終わり、私も王子も少しだけ拍子抜けだ。


もっと光ったり、煙が出たり大掛かりな魔法なのだとばかり思っていた。



「・・・・・ありがとう、ございます」


「!?」



それでも、とても満足そうな様子のバーチさんはその紅き刻印を指で1つ1つ撫でると、私に改めて頭を下げた。


そして、唇を噛み締めて複雑な顔をしているアルフレドの元へと行くと片膝を追って跪く。



「我が主、アルフレド殿下!本来ならあなたを裏切った罪の代価として死ぬ命でしたが、これより我が命は死ぬまであなた様のもの。我が命、魂、忠誠を、この身が果てるまであなたに全てお捧げいたします!!」



バーチからの言葉に、アルフレドも息を吸い込み腹を決めて彼に向き直る。



「・・・・バーチ!これから先、俺の許しなく、どんな理由があっても勝手に死ぬことは絶対に許さないからなっ!!」



「ーーーーーはっ!!」




バーチさんは、過去の事件のことはマーサ王妃が目を覚ましたその時にきちんと話したいと、まだ何も話していない。


アルフレド様も、それで納得しているようで深く追求することはなかった。


そして、彼の身柄はマーサ王妃が目覚めるまでは騎士院が預かることと決め、彼を王都へ送るためにボルケーノへとお願いをしようとしたのだが。



「クローディア殿、お気持ちは嬉しいが、わたしは自分の足で王都にもう一度きちんと踏み入れたいのです」



色んな覚悟を決めたバーチさんの顔は、とても晴れやかだった。



「分かりました。そしたら、マーズを一緒に連れて行ってください!また黒い魔女が、あなたに何かするかもしれないから」



彼はとても強い戦士だが、黒い魔女は力がどれだけ強くても勝てる相手ではない。



「・・・・ありがとうございます」



バーチは現れたマーズを肩に乗せると、私たちに深く頭を下げてからすぐさま王都へと向かって出発した。



「ーーーーーーー」



バーチさんの姿が見えなくなっても、アルフレド様はしばらくその場から動かなかった。


そんな彼が心配で黙ったまま隣に立つと、私に気づいた彼が無言で私の体を抱きしめてくる。



「・・・・・ッ!!」



そしてすぐその体が震えているのが分かり、その背にそっと手をまわすと、ようやく彼が声をあげて泣いた。




「ーーーーーーァァァっ!!!」




きっと彼とはもっと話したいことも、聞きたいことも山ほどあるに違いない。


2人の数年分の思いや感情は、色んなものが混ざり合っていて決して単純なものではないのだ。


だからこそ、これからは長い時間を一緒に過ごす中で1つ1つのこんがらがった糸をほどき、新たな2人にしかできないモノをつむいでいけたらいい。



そう願い、私は彼を抱きしめる力を強める。



そして、私の持つこの回復機能が、今だけでも彼の心を少しでも穏やかなものにしますようにと。



色んな感情がアルフレドから溢れてるのに、それを表現しきれない未熟な書き手で申し訳ない気持ちでした。

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