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モブ女子、お願いだから叫ばせて!

今回も読んで頂き、ありがとうございます!!


久々に主人公が吠えてます。


ここ最近は戦いばかりで、主人公が吠えることも少なかったので色々爆発してたらすいません。

何やらとてもいい気持ちで寝ていた私は、目覚めた時に視界いっぱいにジークフリート様の顔が映って、思わず喜びの悲鳴をあげてしまった。




その瞬間ーーーーーー近くの森の中にいた大半の鳥が一斉に空へと飛んで行ったから、その叫びの大きさはわかってもらえる思う。


だって、目を開けたらあのステキな顔が至近距離ですぐそこにあって、しかもあの腰にダイレクトアタックしてくるイイ声が耳に響くんですよっ!!




『おはよう・・・・よく寝ていたな。もう起きて大丈夫なのか?』って。




どこの恋愛ゲームですかっ!!!



いや、違う。これ元々そういうゲームだ。



最近、恋愛要素があまり感じられなくて、ついついRPGのような気がしてしっかりと冒険してましたよ。



しかも、寝ていた場所がジークフリート様の腕の中って、ついに運営スタッフは私を萌え殺しに来てるのかっ!?



いや落ち着け私、ここに運営スタッフはいない!!



異世界とはいえ、紛れもない現実だ!!




「・・・・クローディア?顔が真っ赤になってるが、大丈夫か?」


「は、はひっ!!だ、だいじょうぶですっ!!!」



ちょっと久々の出血大サービスに目がぐるぐるしてるけど、鼻血は少しも吹かなかったからねっ!?



これ、かなりすごくないですか?




「そうか。それなら・・・・よかった」



「!!??」




ぐっはぁぁぁーーーーーーー!!!




なに?!


これはいったい、なにが起こってるのっ?!


心の中だけで血を吐いた私をどうかお願いだから誰か褒めてください!!



何か、ジークフリート様の顔がこう〜〜いつも以上に優しいというか甘いというか、破壊力がハンパねぇーーーーっていうか!!



糖分過多というか?



いやもう、萌えでお腹いっぱいですっ!!!





そんでもって、よい子のみんな!


聞いて驚けっ!!


なんと私はまだ、あのジークフリート様の膝の上にいるんだぜ??




え?なんでさっさとそこから飛び退かないのかって?



そんなの、ジークフリート様がしっかり腰をその大きな手でホールドしてるからに決まってるじゃないかぁぁぁーーーーーーッ!!!




なんなのこの嬉しい生き地獄はッ!?!?




もうこれ鼻血吹いていいよね?



それか、そろそろ本気で何かを吐いてもいいですか??




「・・・・・クローディア?」


「!!??」




お願いだから、そんなまっすぐな瞳でじっと見つめないでぇぇぇーーーーーーッ!!!


純粋な気持ちであなたを見つめ返せない、汚れた私をどうかお許しください!!


もう、あなたの局地的なフェロモンだけでうっかり妊娠してしまいそうですッ!!!




「ーーーーーおい、クローディアッ!!」


「!?」



だが、ありがたいことに神様は私を見捨ててはいなかったようで、幸せ地獄への救世主はすぐ側に現れた。




「バーチが、お前に話したいことがあるそうだ」


「へっ?!わ、分かった!!」


「もたもたするなっ!!早く行け!!」


「は、はい〜〜!!」



私はジークフリート様にお礼を急いで伝えると、多分真っ赤な顔をしているだろう自分の頬を両手で包みながらその場を離れる。




「おい、ジークフリート!!」


「・・・・・なんですか?アルフレド様」



アルフレドがどんなに睨みつけようとも、ジークフリートは何ら気にすることなくいつもの様子でその場を立ち上がると、走り去っていく彼女の後ろ姿を見つめながらその場に佇む。



「何でもないっ!!」


「・・・・・??」




バーチが呼んでいたのは嘘ではない。


だけれど、こんなに自分がイライラしている理由が分からない。


なぜか、ジークフリートの腕の中にいる彼女が真っ赤な顔で慌てる姿を見て無性に腹が立ったのだ。



おかしい。



似たような光景を少し前に見た時は、ここまで強く感情は動かなかったはずなのに。



今はとにかく、腹の中でイライラが止まらない!!


わけのわからない苛立ちをぶつけるように、どす!どす!と力強く地面を踏みしめながらアルフレドもまた、バーチの元へと戻った。






「あの〜〜、何さっきから怒ってるんですか?」


「別に怒ってなどいないっ!!!」




バーチとともにクローディア、そしてアルフレドが今いるのは、森の中で見つけた小さな小屋の中だった。


木こりが使っていたのか、木で作られた簡易的なイスとテーブルとベッドだけが置いてある。


そこのベッドに上半身だけを起こして中に入っているのがバーチだ。


身体のキズのほとんどはクローディアが治したものの、あの黒い魔女に操られていたことで肉体にもかなりの負担がかかっていたらしい。


クローディアが寝てしまったのなら皆で少し休もうと、偶然見つけたこの小屋の中に入ったのだ。


女性がベッドで寝るべきだ!とバーチもかなり譲らなかったのだが、なぜかあのジークフリートが頑として譲らなかった。


彼女は俺が見ているから大丈夫だ、それにあなたがしっかり休んだほうがきっと彼女も喜ぶと。


確かにクローディアが起きていれば、バーチに何が何でもベッドを譲ったに違いない。


違いないのだがーーーーーなんだかものすごくイライラするっ!!!


あれから何度も、この俺が自分から変わってやろうか?と言ったにも関わらず、これぐらいは何の苦にもなりませんから、と絶対にその座を退かなかったのだ。



「いや、かなり眉間にシワがよってるし、相当怒ってますよね?」


「うるさいっ!!お前には関係ない!!」


「はぁ〜〜そうですか」



バーチの元に来てみれば、さっきからプリプリプリンスがずっと不機嫌MAXで側にいる。


そんなに機嫌が悪いなら少し外に出ていればいいとは思うのだが、バーチの側にいたいのが彼の本音だろう。



「・・・・・・クローディア殿、寝起きのところをご足労いただき、本当に申し訳ない」


「あ、いえ!おかげですっかり元気になったんで、全然大丈夫です!!」



本来の意識を取り戻したバーチさんは、穏やかな表情で私に向き直った。



「さんざん世話になったあなたに、こんなことを頼むのは迷惑かもしれないも思ったのだが」


「な、何を言ってるんですかっ!私にできることなら、もちろん協力しますよ!」



話しながら布団から出て、床に手をつきそうになるバーチを慌てて止めて布団の中に押しもどす。



「すまない。それならばーーーーーー」


「!?」


「ば、バーチ?お前は突然何を言いだすんだっ!?」



バーチが伝えたその頼みは私にはどうして良いかわからず、さんざん悩み倒したあげく、私はあの男に頼ることにした。






『まさか、君から頼ってもらえるなんて・・・・嬉しいな♪』



「ルーク、何この便利な空間は?」



ボルケーノを通して連絡を取ったこの男は、これも魔法なのか丸い空間を私のいる場所と繋ぐと、まさにテレビ電話のように遠くにいるのにも関わらずに顔を見ながら会話をしていた。


ちなみに、小屋の中にバーチさんとアルフレド様を残し、今は私だけで外に出ている。


そして、現代のテレビ電話と違うのは。



『ミロワールだよ・・・実は、こんなこともできるんだ♪」


「!?!?」



ルークのいる向こう側の空間から本物の手が出てきて私の手を掴むと、その空間に私の右腕を引きずり込む。



「ちょ、ちょっとルーク何す・・・ッ!?」



チュッと、小さな音を立てて空間の奥に連れていかれた右腕の甲に、妖しく笑うルークの唇が落とされた。


手の甲の、皮膚の薄い敏感な部分に柔らかく温かな感触から始まり、次第に熱さと少しの痛みが混じる。



「る、ルークッ!!」



上目遣いで私の方を見るその姿は、元々の美貌もあいまって妖しい美しさに溢れていた。


かぁっ!!と顔が熱くなりながらもすぐさま右手をその空間から引き抜くと、その箇所には何かの模様がついている。



「な・・・・何これ?」



紫色をしたソレはアザのような、見ようによってはバラの花のようにも見える。



『お守り・・・・まぁ、念のためのね♪』


「お守り?いったい何の?」


『それはまだ秘密♪それよりも、ボクに何か用があったんじゃないの?』


「そ、そうよ!あんたがいきなり変なことをするから!!」


『ふーーーーん♪へんなことって?』


「!?!?」




ニッコリ、ニコニコ。


久しぶりに会った魔導師は、全く変わらない。


せっかくゾンビのお礼も言おうと思っていたのに、変わらずこの男は私が素直になる前にイライラさせる。



「ルーク!!あんた・・・・っ!!』


『主従の契約』


「えっ?!」


『それが、その男の願いを叶える魔法だよ』




魔法のかけ方は特別にボクが教えてあげる、と大変珍しくルークが私に何の代償もなしにそれを伝えた。



『ただ、この魔法は本気で相手の命を奪うから気をつけてね?』


「る、ルーク、これって!!」



魔法の内容を聞いて、私は一気に胸が苦しくなる。



『そうだよ・・・・この魔法は、魔物を使役する際に魔導師が用いる魔法。魔物が主を守ると誓い、その言葉に呪をかける。でも、もしその誓いが少しでも破られてしまったら』



魔物は、時に言葉で人を惑わし騙す。


誓いを立てても、言葉だけでは信用するのは危険すぎると、ある魔導師がその一生をかけて編み出した魔力を使った契約。




『・・・・誓いを立てた魔物は、すぐさまその命を失う』


「!?!?」



己の命と魂をかけた誓い、それをバーチはアルフレドに対してこれからの一生をかけて示していく忠誠の証としたいと、願ったのだ。



気がついたら、攻略相手が3人揃った貴重な会となってました!


なのにうちの主人公は鼻血だなんだと、恋愛モードにするには色気がまだまだ足りないですね。

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