モブ女子、鳴り響いた戦いのゴング!
今回も読んでいただき、ありがとうございます!
魔法使い同士が本気で戦ったら、被害を被るのはきっとあまりに大きな衝撃に巻き込まれる周りですよね。
『久しぶりに、ゾクゾクしてきた』
「!!??」
耳元に響いたその声とともに、ザラリと後ろの首元に妙な感触と音が響き、全身の毛が総毛立つ。
「い、イヤッ!!!」
振り返りざまに手のひらから生み出した炎の塊をぶつけるが、あっさりとかわされてしまった。
「いいかお。もっとボクに見せて」
「!?」
そして黒い魔女はフワリと地面に降りてくると魔女を中心に黒い影が大きく広がり、その影の中から体の腐敗したゾンビが何十体と出てくる。
「・・・・くっ!まさか、こんなところでもルークに感謝する日がくるなんて!!」
2度目のバイ○ハザードは思っていた以上に心が落ち着いていて、全身が震えている割には顔には笑いが出てきた。
「あんたのせいで、王都に帰ったらまたアイツにお礼をしに行かなくちゃならないじゃないッ!!」
グオォォォォッ!!
ガァァァァァッ!!
私を喰べようと、口を大きく開けて襲いかかってくる大量のゾンビ達。
ルークにそれをやられた時は、生理的な怖さと気持ち悪さで泣きながら逃げた。
一対一ならまだしも、何十体VS1人ですよ?
まさかあのS魔導師はこうなることを予想してたとでもいうのかッ?!
いや、多分おもしろそうだから♪っていうのがほとんどだと思う。
それでも感謝はしてますよ?
「主が許す!!ゾンビ全てを燃やし尽くせ!!神の炎、アグニッ!!!」
「!?」
その場でしゃがみこむと、地面に手をついた状態で魔法を放つ。
するとそこから地面を這うようにして生まれた大きな炎が、一気にゾンビへと向かい肉のひとかけらも残さずに燃やし尽くした。
この方法が一番早く、大量に倒せることはすでに実践済みだ。
「・・・・いいね、ゾクゾクする」
あの大量のゾンビを一瞬で消し去る判断力に、あんなにも大きな炎が何度も生み出せる無限に近い魔力を持つ者など、たかだか人間ごときの中では見たことがない。
それに、一番ボクを興奮させるのがあの瞳。
ボクの強さを正しく感じ取って怖さに身体を震わせているくせに、それでもボクを許さないと怒りで強い光を放つあの目。
どこまでもまっすぐに射抜くその熱い眼差しを、ボクはグチャグチャにしてみたい。
「・・・・・ねぇ、きみは何を失ったら絶望するのかな〜〜?」
「!?」
黒い魔女がフワリと空に浮かび、クローディアのすぐ側にまで近づく。
「ボクはきみのように、強い目をした者が絶望に光を失って闇に落ちていくのを見るのが大好きなんだ!」
「・・・・・ッ!?」
『正〜〜解!ボク、他人の絶望を見るのが大好きなんだよね。でも弱い人間の絶望を見ても面白くないから、強い存在にしよう!って思って』
黒い魔女はイヴァーナ様の過去でも、同じようなことを話していた。
そして、その後にーーーーーーー。
「きみが失って一番絶望を味わうのは、ご両親?それとも友人かなぁ〜〜?」
ケラケラと笑いながら、黒い魔女がクローディアの周りを飛び回る。
その魔女に向かって鋭く大きなつららを何本も繰り出すが、1つも当たらない。
それどころか当たっても、ひらりとローブが翻るだけで肉体はそこになかった。
そうだ、これはあの時と同じ!!
「ざ〜んね〜ん!ボクの本体はここじゃないんだ!」
「くそっ!!!」
感情の高ぶりとともにつららの数が増えるが結果は変わらない。
「・・・・・うーーーーん。やっぱり、逃げたあの王子と騎士さんかな?」
「!!??」
ニーーーーッコリ。
長い前髪の隙間なら垣間見えた黒い魔女の深淵のような黒い瞳と、クローディアの瞳が合い、口元がどこまでも不気味な笑みで釣り上がった。
アルフレド様と、ジークフリート様ですって?
その瞬間、私の脳裏にはあの悲しすぎる悲劇が映像となって鮮明に蘇る。
『イヴァ・・・・ナ』
『いくな!私を置いていくな!!私はお前がいないとダメなんだ!!愛してる!!お前だけを愛してる!!!』
『俺も・・・・だ、愛して・・・る』
『ジャックッ!!!!!』
イヴァーナ様とジャックの終わりのない悲しみが、後悔が、怒りが心の中に次々と押し寄せる。
『ウワァァァァーーーーーーーーーーーッ!!!!!!』
そして、イヴァーナ様の慟哭が頭の中で大きく鳴り響いた。
「・・・・さない、あの人を殺すことは絶対に許さないッ!!!」
心の中に黒い魔女の魔力を感じた時から生まれていた黒いものが、どす黒い炎になってゆらりと起き上がる。
「!!??」
ーーーーーーーぞくり。
次の瞬間、黒い魔女の背筋に寒気が走った。
「・・・・ない」
クローディアの瞳孔が完全に開ききり、ひやりとした空気が彼女を包み込む。
「お前は・・・・・許さない」
クローディアの右手には激しい炎が、そして左手からは凍てつく氷の強い魔力を凝縮させた球体がそれぞれ生まれる。
炎と氷。
相反する2つの強力な魔力をぶつければ、そこから生まれるのはーーーーーーー。
『・・・・・あいつに闇の魔法を使うのはやめておけ。お前が闇に引きずられるだけだ』
「!!??」
クローディアの頭に、氷でできたどこまでも美しい手の平がそっと乗せられ、それと同時に左手の氷の球体が消え去る。
『遅くなってすまなかったな。我が主よ』
「・・・・・・ッ!!」
そのすぐ後には、紅き炎でできた力強さを感じる太く大きな手の平がクローディアの肩口にしっかりとした重みとともにのせられ、右手の炎の球体も消え去った。
「イヴァーナ様ッ!!ボルケーノッ!!」
瞳にいつもの光が戻り、涙を流し始めたクローディアの前には、氷と炎の化身が堂々した様子でクローディアを守るようにして立っている。
そしてその奇跡のような光景を前に、黒い魔女は悦びの笑みを浮かべたーーーーーー。
ついに、あの方が再登場しました!
早かったですかね?
私はワクワクで書かせてもらいました!




