モブ女子、運命の再会です!
お読みいただき、ありがとうございます!
今回は、色々な再会?となりました。
その感覚が私を襲ってきたのは、イザベルと別れてクヴァーレの街を出てすぐのことだった。
「・・・・・・ッ!!??」
全身が、ひどい熱を出す前兆の時のように悪寒に震える。
身体の内側からゾワゾワとした、気持ちの悪いものが蠢いているような気持ち悪さに襲われ、私は両手で自分の身体を強く抱きしめた。
「クローディア?」
隣を歩くアルフレドが、心配そうに振り返る。
「・・・・・お前も、気づいたんだな」
前を歩くジークフリート様も、厳しい表情でこの人には珍しく緊張感にあふれていた。
「は、はい」
何かが近くに来ている。
何か、恐ろしいものが。
そして私にはこの『何か』に、とても覚えがあった。
「ジークフリート様。お願いが・・・・あります」
私は身体の震えをなんとか堪えながら、それをジークフリート様に伝えた。
アルフレド様には納得してもらえなかったけど、ジークフリート様に無理やり連れて行ってもらう。
ここに『彼ら』がいてはいけない。
あいつの狙いは、アルフレド様だ。
『あれ〜〜〜??おっかしいな〜〜〜??」
「・・・・・っ!?!?」
誰もいないその空間に響き渡る、少し高めの中性的な聞き覚えのあるその声に、全身の毛がそそり立つ。
そして感情に黒いものが加わり、私の心を一気にかき乱した。
『さっきまで王子様がここにいたはずなのに、なんでこんな弱そうな女1人しかいないんだろう〜〜??』
空間が歪む。
それと同時に、あんなに晴れていた空に暗い雲が一気に広がり激しい風が吹き荒ぶ。
『ねぇ・・・王子様、どこに行ったか知ってる??』
「!!??」
黒いローブに全身を包んだ黒い前髪で目元を隠した少年か少女か、見た目にも判断がつきにくいその存在は、歪んだ空間からクローディアの目の前に突然姿を現した。
その姿を、忘れるわけがない!!
「主が求む、全てを凍てつかせろ!!真なる氷、フィンブル・ヘイル!!!」
『!?』
私は震える声と身体を押さえ込みながら、その存在に向かって最強魔法発動の言葉を叫ぶようにして発した。
言葉とともに私の体から、大きな氷の龍が何匹も現れその存在に向かって一気に襲いかかる。
『・・・・・・ふーーーん?』
だが、すぐさまその氷の龍は、その存在から生み出されたさらに大きな黒い龍によって破壊されてしまう。
『君、ただの弱い人間じゃないね??あのイヴァーナ様の魔力をただの人間から感じるなんて、すごくおもしろい!』
「くっ・・・・・イヴァーナ様の名前を、お前が軽々と呼ぶんじゃないっ!!」
ケラケラと笑う『そいつ』は、イヴァーナ様の過去の世界の中で彼女の絶望する姿が見たいと、命よりも魂よりも大事な『家族』を彼女から奪い去るきっかけを作った者。
自分の体験のようにリアルに見せてもらったこともあって、彼女の憎悪がクローディアの心の奥底から湧き上がってくる。
「黒い魔女ッ!!!」
『へぇ〜〜ボクのこと知ってるんだ?君人間のわりには強そうだから、少しだけなら遊んであげてもいいよ』
黒い魔女は、空に浮いたまま怒りに全身を震わせているクローディアを、楽しそうに笑いながら見降ろした。
暗い雲に覆われた空からは次第に雨が降り始め、2人を激しい雨と風が襲いかかる。
彼らをこの場所から離したことは、本当に正解だった。
これで遠慮なく、全力で戦える!!
「主が許す!!全てを燃やし尽くせ!!
神の炎、アグニ!!!」
『!!??』
両手を大きく広げた私の左右の手のひらから生まれた神炎が鎖のかたちを取り、黒い魔女の体に巻きつくと大きく燃え上がり一気に炎で包み込む。
そして炎が消えた後の空間には、何も残されていない。
「・・・・・・いないっ?!」
『いいね、きみ』
「!!??」
『まさか、封印されてるボルケーノ様の魔力まで君から感じるなんて、なんておもしろい人間なんだろうね?』
その声は私のすぐ真後ろから、耳元に向かって響いた。
『久しぶりに、ゾクゾクしてきた』
「ジークフリート!!なぜだ!?なぜあいつを1人にしたっ?!」
森を走りながら、アルフレドは前を走る男の背に何度も同じ疑問をぶつける。
今だって、この痛いぐらいに腕を握り込まれたままでなければ、今すぐあの場所へ飛んで戻りたい。
「・・・・・それが、クローディアの望みです」
ジークフリートはあの場所を走り出してから一瞬ですら、彼女の方に振り返ってはいない。
ただただ、まっすぐに前だけを見て走り続けている。
「望みだとっ!?アイツに何かあったら、どうするつもりだッ!?」
「・・・・・ッ!!」
ジークフリートは応えない。
だが、その代わりにアルフレドを掴んでいる手にさらに力が加わる。
「とにかく今すぐこの手を離せっ!!!俺は1人でもアイツのところに」
「ーーーーーー行かせません」
「!?」
「お、お前は・・・・ッ!!!」
突然目の前に現れた気配に、ジークフリートとアルフレドの足が止まる。
1人は銀色の鎧を全身に身につけ、その顔ですらも銀色の鉄仮面で素顔を隠した騎士の姿をした者。
もう1人はーーーーーー忘れたことなど、この数年間で1日たりともなかった。
小さい頃から俺の側にいて、俺を守り続けそして俺と母上を裏切った男。
「なぜ・・・・なぜ今になってお前がここにいるんだ、バーチッ!!!」
常に俺を守る為に側で付き従い、その大きな背中を見ていた男が今、俺に向けて剣を向けている。
「あなたには、ここで死んで頂きます」
「!!??」
あの事件の日から姿を消し、どれだけ情報屋にお金を出して調べても何の痕跡も探し当てることができなかった男が、自分から目の前に来てくれたのだ。
ついに、待ち望んだ決着の時が来たのだと、
腹を決めたアルフレド王子は息を飲み込み、自分の剣に手をかける。
「ジークフリート、お前はあの銀色の騎士を倒せ。バーチは俺の相手だ!!」
「・・・・はっ!」
ここでモタモタしていたら、あの場所に残った彼女の元へ行くのも遅れてしまう。
確かに彼女は強いが、さっきの様子はどう
見ても尋常ではなかった。
「来い、バーチ!!!」
「お前が何者かは分からないが、我が国の王子を害する者は誰であろうと容赦はしない!」
「王子、お覚悟を」
「・・・・・行くぞ」
それぞれの戦いが今、火蓋を切って落とされたーーーーーーー。
RPGゲームでイベントが続くと、まだボスがいるのかと焦りますね。
ボスだと思ったらその後ろにまだいて油断してやられたこともあり、戦闘中も余力を残しながら戦うクセがありました




