約束の樹の下で 3
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そして、私が17歳になってすぐの頃、ヨハンとの約束があと一年をきったというところで、またもやその事件は起こってしまったわ。
お酒に溺れに溺れてしまった父が、ついに還らぬ人となってしまったーーーーーーー。
不思議と母の時のような涙は出ずに、私は母の隣に眠る父の墓の前でとても静かな気持ちでそれを見つめていた。
ようやく父から解放された。
これで、もう私は自由よ!!
悲しみよりも喜びと、あまりにあっけなさすぎた父の最後になんともいえないむなしさを抱えて、私は1人になった家に戻る。
ちょうどその時、ヨハンは父親と一緒に他の町に用事があって出かけていて、村の中にはいなかった。
ヨハンの父は兄弟の中で1番有能と思われたヨハンをとても買っていて、それが三匹の大ブタが余計にヨハンをいじめる原因ではあったのだけど。
小さい頃によく見られた、兄弟から受けていただろうケガは大人になるにつれて減っていた。
それは元々賢かったヨハンが、三匹の子ブタに反撃までいかなくとも、ただやられているだけだはなくなったということだ。
約束の時までーーーーーーーあと数ヶ月。
お金も新たに溜まり始めているし、残っている家のものも全部処分してしまえば、私に残されたのはこの身ひとつだけ。
ヨハンと一緒に、どこまでだっていけるわ!!
『・・・・・・!!』
そして希望を胸に家の扉を開けた私の前にいたのは、見慣れない柄の悪い男たちが数人。
『だ、誰なの?!あなた達っ!?』
『あーーーーーん?なんだぁ〜〜??』
『あいつの女か?』
『いや、それにしては若すぎる』
『そうか!あいつの、娘だ!』
私の声に振り返った男達が次々と振り返り、私の姿を足元からじっくりと舐め回すように見てくる。
目線だけなのに、あまりの気持ち悪さで今にも吐きそうだった。
『・・・・と、父さんの、知り合い?』
お酒だけではなく、こんな柄の悪い人達とも付き合っていたのか。
かなり大柄で頑強な男達の姿に、自然と足が震えて少しずつ玄関の外へ出ようと後ずさっていた。
とにかく、ここから逃げなければ!
でも、一体どこにっ?!
『俺たちなぁ、あんたの親父さんにお金をたっくさん貸してたんだよっ!!』
『なのにあの野郎!!全然返さないままで死んじまってっ!!』
ガンッ!!!
『・・・・ッ!?』
男が苛立ちを、私の家の家具にぶつける。
すでに家の中のお金を探したのか、どこもかしこもがメチャクチャにされていた。
だが、私が父さんに見つからないようにと、注意深く隠した、私の未来の為のお金はまだ取られていない。
『嬢ちゃんよぉ、お父さんにお金のこと何か聞いてないのかい?』
『わ・・・・私は、何も、知りません!き、聞いたことも・・・・ありません!!』
怖い!!
声が震える。
どうして??
父さんが死んで、もう私を苦しめるものは何もなくなったはずなのにっ!!
『困るんだよなぁ〜〜。黙ってしなれちゃ〜〜よぉぉっ!!!!』
ガンッッ!!!
『!!??』
次は、私のすぐ近くの家具を男が蹴り倒す。
怖い!!
ヨハン、助けてっ!!!
『なぁ、嬢ちゃん。親の不始末は・・・子の不始末だよな??』
『!!??』
一番家の奥にいた、男達の中では小柄で片目を黒い眼帯で覆った顔骨のゴツゴツした男が、私に鋭い眼光を向けてくる。
蛇に睨まれたカエルというのは、こういう気持ちを言うのかもしれない。
私はすぐさま家の中に隠したお金を走りって取り出し、その男の前に投げ捨てる。
『そ、それが我が家の全財産です!!それを全部渡すから、だからもう帰ってくださいっ!!!』
泣きながら、男達にそう叫ぶ。
ヨハンと私の、未来の為に溜めた大切なお金だった。
でも、お金はまた一から貯めればいい!
今は一刻も早くここから逃げ出したい!!
『おぉーーーー!!ちゃんと、あるじゃねぇ〜〜かっ!!』
男達の顔が下卑た笑みを浮かべる。
そして袋の中身を見ると、ニヤリと笑ってそれを懐にしまった。
なのに。
『・・・・残念だなぁ、嬢ちゃん』
『!!??』
『全然足りねぇんだよ、こんなんじゃ』
眼帯の男が告げた父の借りたお金の額は、私がこの平凡な村でどれだけ必死に働いても、一生返すことが叶わないくらいの大金だった。
『・・・・・・ッ!!!』
おの男は、本当にどこまでっ!!!
悔しさにかみしめたくちびるから血が滲み出て、鉄の味が口の中に広がる。
『・・・・・ち、父のお金は、私が一生かかっても返しますから!!だから、だから今日のところは帰ってくださいっ!!』
床に膝をつき、頭を床にすりつけながら私は男達に向かって声をだす。
恥やほこりなど、そんなものは今の私には何もない。
ヨハンとの幸せな未来の為だったら、私はどんなことにだって耐えられるっ!!
『・・・・・・あぁ。もちろん、俺たちもそのつもりだぜ?お嬢ちゃん?』
『じゃ、じゃあ!!』
『だがよぅ』
期待に顔を上げた私の顔を、眼帯の男の節くれだった指がぐっと力強くつかみ、自分の方へ上向かせる。
『!!??』
『こんな端した金をちまちま返されて、借金を踏み倒されちゃあかなわないんでな。てめぇの体で返してもらおうかっ!!』
ドンッ!!!
『・・・・・・かはッ!!』
その時、反対側の男の手が私の腹を思いっきり殴った。
あまりの痛みに、私の身体が奥から悲鳴をあげて地面に倒れていく。
『おいおいっ!!大事な金ヅルを傷物にするんじゃねぇよ!!』
『用はすんだんだ!!てめぇらとっとと帰るぞっ!!』
『・・・・・・・ッ』
視界が、霞む。
身体に力が入らない。
男達の声も、どんどん遠くに感じていく。
ヨハン、どうしよう。
もうすぐだったのに、もうすぐ約束の日が来るのに。
何度も何度も、ゆびきりしたのに。
『・・・・ベル!』
おぼろげな中で浮かんだヨハンの笑顔を最後に、私の意識は完全に失った。
ヨハン。
あなたに会いたい。
すいません、続いてしまいました。
ここで場面が変わるので、切らせていただきました。
ヨハン!!




