モブ女子、その色気をどうか分けてください!
お読みいただき、感謝です!!
新キャラ登場です!よろしくお願いします!
その女性の悲鳴が遠くから聞こえたのと同時に、マーズがすぐさま私の肩口に戻り、少し離れたところで見た光景を頭に見せてくれる。
それは、とても美しい女の人に数人の剣や斧を持った男が襲いかかり、必死で逃げている様子だった。
「た、大変!!すぐに助けなきゃっ!!」
私の言葉とほぼ同時に、ジークフリート様がすぐさま剣に手をかけ厳しい表情で森の奥を見つめる。
「・・・・俺が行く。どっちだ?」
「あっちの方角です!」
「分かった。王子を頼む」
「は、はい!!」
そして、そのまま風の様な速さで森の奥にジークフリート様は消えて行った。
「・・・・お願い!」
一応、念のためにマーズもその後ろを追いかけさせる。
ジークフリート様の実力は分かっているが、念には念をだ。
「な、なんだ?!何があった?!」
残されたアレフ様はわけがわからず、1人あわあわしている。
「すいません。遠くで女性が襲われていて、ジークフリート様が助けに行って下さいました!」
「な、何っ!?きさま、なぜ行かせたっ!!」
「え?」
あわあわしていたアレフ様は、事情を知るとすぐさま眉間にシワを寄せて今度は怒りに全身を震わせ始めた。
「その女が刺客でないと、これが罠じゃないかとなぜすぐに考えないっ!!」
「な、なんでそう全てを最初から疑ってかかるんです?!もしかしたら、本当に助けを求めている人かもしれないじゃないですかっ!!」
ランチの件から、私はアレフ様に対して遠慮するのをやめた。
いや、我慢の限界がきたともいうが。
女の人が必死に逃げていく様子を映像とはいえバッチリ見てしまった私には、それを絶対に無視などできない。
もしこれが本当だとしたら、その後のことを想像するだけで胸の中がぐちゃぐちゃになりそうだ。
「それが甘いというのが、なぜ分からないっ!!なんでもかんでも疑わずに信じれば、こちらが寝首をかかれて終わりだ!!」
「甘かろうがなんだろうが、相手を疑えば疑われるし、相手を信じるから相手から信じてもらえるんですっ!!」
そして私とアレフ様は気持ちが高ぶるとともに自然と相手の至近距離まで近づき、お互いに自分の思ったままを、全力で相手にぶつける。
どうも、アレフ様相手だと私の感情はすぐにヒートアップしがちだ。
「そんなものは全部詭弁だ!そうやってお前は何回命を落とすつもりだっ!!この世の中は敵だらけで、本当に信じられるのは自分だけだ!!このバカ庶民っ!!」
「ふっざけんなっ!このバカ王子!!自分1人でここまで生きてきたみたいな言い方するな!!本当に敵だらけなら、今ここに生きていられるわけがないでしょうがっ!!」
「!!??」
「・・・クローディア、もうその辺にしておけ」
「えっ!?」
気がつくと、私はアレフ様の胸ぐらまに掴みかかっていたようで、振り返った先にいたジークフリート様は呆れたような表情を浮かべていた。
「あっ・・・す、すみません!!」
またしてもバッチリ見られてしまったことに慌てて掴んでいた手を離すと、一気に私の顔が熱くなる。
私の残りわずかな羞恥心は、ジークフリート様限定で出てくるようだ。
「ゴホッゴホッ!!本当に、なんて女だお前はっ!!」
無意識に結構な力を込めて胸ぐらを掴んでいたようで、苦しそうなアレフ様がそのあとも私に向かって文句を言い続ける。
「つい力を込めすぎたのは、すみませんでした!!」
「ついとはなんだ!!ついとは!!俺様はきさまのせいで、たった今死にかけたんだんだぞっ!!」
「いや、あれぐらいじゃ死にませ・・・・」
その時、ジークフリート様の後ろから長い亜麻色の柔らかそうな長い髪が見えて思考が止まる。
「あら、この人達があなたの連れなの?」
「!!??」
そしてジークフリート様の背中から出てきたのは、長く波打つ亜麻色の髪が風になびいた、豊かな胸と下半身のみに紫の布がついているなんともセクシーで色気の溢れる美女だった。
肩口からうでにかけて見える素肌はシミひとつなく、下半身を覆っている濃い紫のスカートには横に大きなスリットが入っていて、そこから覗く見事な脚線美の素足、女の自分が見ても思わず唾を飲み込んでしまうほど艶めかしい。
派手なメイクをしているわけではないのに、もともとの顔立ちが大人っぽいのか、切れ長の目と、薄めの赤い唇、そしてその下にあるホクロが彼女の色気をさらに引き立てていた。
「・・・・・・きれい」
エリザベスも相当な美女だったが、エリザベスは凜とした美しさと気品に溢れた高嶺の花という、花に例えるなら百合のような美人。
彼女は、どこまでも真っ赤な薔薇のような華やかさと、どこか棘のある妖しさを含んだ女の色気に溢れた美人。
そして、どうしてこの世界の美女はみなその胸元まで豊かで素晴らしいのか!!
天は二物も三物も美女に与え過ぎじゃなかろうかっ!!
頼むから、私にも分けてくれ!!
「まぁ、そっちの坊やも随分ときれいな顔をしてるわね。でも・・・・やっぱりあなたの方が、ステキだわ」
「!!??」
そして、その色気ムンムンの美女が、隣にいたジークフリート様の頬に手を添えて、その豊満な体をぴったりと寄せる。
「なっ・・・なっ・・・!!」
絵になる!確かに絵にはなる!!
美男美女の、間違いなく文句なしのスチル一枚絵でしょうよっ!!
「ねぇ、助けてもらったお礼もしたいし。私と、いいことしない?」
「・・・・結構です」
「あら、遠慮なんかしなくてもいいのよ?」
でも、でもやっぱり!
私には耐えられなぁーーーーーいっ!!!
「何をしとるんじゃ、われぇぇぇーーーー!!」
ゴオォォォッ!!!
「キャッ!な、何っ?!なんでいきなり火がっ!?」
「!?」
「な、なんだっ!?新しい敵かっ!?」
ジークフリート様とその女の周りを囲むようにして、一気に私の嫉妬の炎が燃え上がる。
美女は突然の火事にびっくりして、その場から思わず逃げるようにしてすぐさまジークフリート様から離れた。
アレフ様は今度こそ本当に敵かと、私の背中にすぐさま隠れて周りをキョロキョロ警戒している。
何度かの刺客との戦闘を経て、そこが一番安全だとよく分かったのだろう。
「クローディア、すまん。もう大丈夫だから火を鎮めてくれ」
「・・・・・・・は、はい!!」
ジークフリート様からの一言で、メラメラ燃えていた私の嫉妬の炎が一瞬でかき消える。
ルークのおかげとは決して言いたくないが、無限ゾンビ地獄のバイ○ハザード訓練のせいで、大規模の炎で無ければ呪文の詠唱がなくとも炎が自由に出せるようになってきた。
だが、まだ時折感情とともに発動してしまうのが課題でもある。
私が炎を消すと、美女もアレフ様も安心したように息を吐いた。
「イザベル殿。彼女が先ほど話した、あなたの危険をいち早く気づいて助けようとしたクローディアです」
「・・・・・そう。あなたが!」
ジークフリート様の言葉に美女が私をロックオンすると、かつかつとその曲線美の足をチラ見せしながらやってきて、その細く美しい両手で私の手を握りしめた。
なるほど!男でなくとも、チラ見せというのはついつい目で追ってしまうものなんですね!
見事な曲線美と、真ん中を紐で結ばれてはいるものの豊かな胸の谷間がバッチリ見えるその眩しい光景に目が離せません!!
「私はイザベル=スカーレットよ!あなたのおかげで、本当に助かったわ!ありがとう!」
「あの・・・・い、いえ。じ、実際に助けたのは、ジークフリート様ですし」
顔も美しく、体もパーフェクト!!
一体私はどこを見れば良いんでしょうかっ!!
「あなた、名前は?」
「く、クローディア=シャーロット、です」
か、顔が近い!!
同性なのに、顔があまりに近くてドキドキします!!
くそっ!!
精神年齢なら絶対私の方がアラサーで年上なはずなのに、なんなんだこの美女の強力な色気は!!
「クローディア、これからよろしくね!!」
「あ、は、はい!・・・・こ、これから?」
思わず、目が点になってしまった。
「えぇ!まさかあなた、こんな森のど真ん中に、女を1人置いていかないわよね?」
「え、えっと、あのっ!」
「き、きさま!!何を勝手なことを言い出しているっ!!」
美女の突然の申し出にどうしていいかわからずにいた私の背後から、怒りに震えたうちの吠えるだけなら一番の番犬?が美女に怒鳴りつける。
「あら、だって見たところあなた達もどこかへ向かう途中なんでしょ?私の住む町はこの森の先だから、行き先はたぶん一緒だと思うんだけど?」
「!?!?」
街?森の中に街があるの??
それに、ようやく落ち着いてきた頭の中に、先ほどの美女の姿と名前が私の知識の扉の前で何やらノックをしている。
イザベル、イザベル・・・・どこかで、聞いたことがーーーーーーー。
私が考え込んでいる間、美女は今度はアレフ様に迫っていた。
「ねぇ・・・・ぼうや。ぼうやにもサービスしてあげるから、一緒に街まで連れて行ってくれないかしら?」
「お、俺様に許可なく触るな!!汚らわしい!!」
「あらやだ、見た目の洋服は質素なのに、もしかして本当は・・・・貴族さまか、何かなのかしら?」
「きさまに教える義理はない!助かったのなら、1人で街でもなんでも勝手に帰れ!!」
イザベル、イザベル、イザベラ。
あ、間違えた!イザベルだ!!
「いやだ!もしかしてぼうやったら、私のような女1人が怖いのかしら?」
「な、なんだとっ!!!」
「こんな武器も持たない非力な女1人の、同行も許せないぐらい怖いのでしょう?」
「ふ、ふざけるなっ!!きさまのような下賤な女を、なぜ俺が怖がらなければならないんだっ!!!」
アレフ様の怒りに染まった真っ赤な顔とは裏腹に、イザベルは余裕に溢れた笑顔で楽しそうに相手をしている。
そんなイザベルを、ジークフリートは静かにだが厳しい目線で見つめていた。
先ほどの荒くれから助けた際に、彼女の太ももの内側に一瞬だけ見えた、何かの焼印。
あれがもし想像通りのものなら、このまま何もなく終わることは難しいかもしれない。
「・・・・・何事もなければ、いいのだが」
そして、ちらっとジークフリートが横目で見た先には、ずっと何かを考えてこんでいるクローディアの姿が。
最近、気づくとクローディアを見ている自分がいる。
彼女は何かあるとすぐさま飛んで行ってしまうから、それで目が離せないのかもしれない。
それがたとえ危険だろうとも、彼女は構わず飛び込んでしまう。それが大切なものの為ならと。
ならば、自分は彼女を守るだけだ。
彼女のあんな姿はもう見たくない。
そんな思いでまさか見つめられているとは、露ほども思っていない当人のクローディアは、記憶の片隅で見たその姿をようやく見つけ出していた。
「・・・・・・あっ!!!」
思い出した!!
イザベル=スカーレット!!
確か、アルフレド王子の強制イベントで、必ず物語に関わってくるアルフレド王子ルートのみのサブキャラ!!
説明書とネットの攻略ページで立ち姿と紹介文しか見たことなかったけど、このセクシーな出で立ちは彼女に間違いないっ!!
ってことは、これは強制イベントってこと?
「ねぇ、クローディア!!このぼうやが私も一緒についていっていいって!!」
「へっ??」
なんと!今度はギュッと、美女がそれはそれは華やかにニッコリと笑いながら私の体に抱きついてきた。
す、すごい!!
彼女の豊かな胸の主張がものすごいです!!
「き、きさま!!だ、誰が同行を許可したっ!?」
「あら、だって私なんてちっとも怖くないのでしょう?」
「あ、当たり前だっ!!なんでこの俺様がお前のような女1人を怖がる必要がある!!」
「それなら、そんな女1人がついていってもなんの問題もないのではなくて??」
「な、なんだとっ!!!!」
「・・・・・・・・」
もう、近いうちにこの王子様の血管はいくつかぶちぶちと切れるんじゃないだろうか?
それぐらい、アルフレド王子の顔はこれ以上ないくらい怒りに歪み、眉間のシワは何かを挟んでも絶対に落ちないだろうぐらい、深く刻まれている。
せっかくのキレイな顔が台無しだ。
いやもう、出会う人出会う人が美形すぎで、そろそろ騎士院や王都にいるモブ仲間が恋しくてならない。
どちらにしても、刺客やモンスターも潜んでいるこの森に、女性1人を置き去りにするわけもいかず、緑の魔女のところへ行くには通らなきゃ行けない街だそうなので、彼女をそこまで送り届けることになった。
アルフレド王子の説得にはかなり骨が折れたが、ジークフリート様も決して警戒の目を彼女から離さないと口添えをしてくれて、なんとか了承してくれた。
目を離さないというのが、たとえ警戒の為とは言え嫉妬してしまう私はダメダメ人間です。
この先、この嫉妬に耐えられるか不安だ。
そして、彼女がサブキャラである以上、彼女との出会いは決して偶然ではなく、アルフレド王子とローズにとってとても大事なポジションということになる。
あれ?これ、私が先に起こしていいのか??
「改めて、これからよろしくねクローディア!」
「あ、はい!よ、よろしく、お願いします」
この色気ムンムンお姉さんな美女の『イザベル』は、アルフレドとローズにどんなイベントをもたらすキャラだったのか。
アルフレド王子のルートをしてない私に分かるはずもなく、不安だけがムクムクと胸に膨らんできていた。
やっぱり女の子が増えるのは嬉しいですね!
女子トークを、楽しく書かせて頂けたらと思います!




