モブ女子、守りたい人はあなたです!
今回も読んでいただき、ありがとうございます!
今回の章での目標の1つとして、あの人を嫉妬させよう!というのがありました。
これからですね!
俺が2人を見つけた時には、先ほどのわだかまりはなくなってたようで、王子は果物を無心で食べていた。
「・・・・あ!ジークフリート様!荷物ありがとうございますっ!!」
「あぁ、大丈夫か?」
「はい!!アレフ様!!ジークフリート様がごはん持ってきてくれましたよ!食べますか?」
「・・・・・お前が、全部毒味をするなら食べる」
「!!??」
「はいはい、毒味係ならやりますよ」
何があったのか、王子はクローディアが毒味をしたものを次から次へと平らげていく。
こんなに積極的に食事をする王子は、初めて見た。
「おい、これはなんだ??」
「それはだし巻き卵です!こっちの、チーズ入りハンバーグもオススメです!」
「・・・・う、うまい!!」
結局、持ってきていた弁当のほとんどを王子が平らげてしまった。
時折、クローディアに向けて笑顔も見せるようになり、自分のいないほんの一瞬の間に2人の距離が縮まったようにも感じたのは、気のせいではないだろう。
その後、俺たちのいるここ『さえずりの森』で、予想していた通り刺客に襲われた。
「クローディア!!王子を頼む!!」
「は、はいっ!!」
王子のそばにクローディアがいれば、彼女の持つ魔法で2人は守れる。
「主が望む、全てを凍てつかせろ!!真なる氷、フィンブル・ヘイル!!!」
「ぐあぁぁぁっ!!」
「うぐっ!!」
イヴァーナ様から授かったという、氷系最強呪文は2人に一斉に飛びかかる何十人の刺客に対し、龍の姿をした氷が襲いかかり一瞬にして凍りつかせた。
俺はその間に、森の奥で潜む黒づくめの服に包んだ刺客達を次々に斬りつけて倒していく。
だが、時折死角からの攻撃に狙われることもあった。
その時ですら、振り向いた瞬間にはもうすでに相手が氷漬けになって動けなくなっている。
間違いなくクローディアだ。
彼女は王子を守りながら、俺の方まで守ろうとしてくれていた。
森を燃やしたくはないと、ボルケーノ様は呼ばずにイヴァーナ様から授かった氷の魔法を駆使して彼女は戦う。
そんな彼女に、少しずつアルフレド王子は信頼を寄せているようだった。
何十人という刺客を倒すと、しばらくあいつらはやってこない。
そのだいたいの位置などはクローディアから生み出された炎の鳥・マーズが、俺たちのいる場所の少し先の森を空の上から見て偵察をしている。
魔法をあまりに大量に使うと彼女は眠気に襲われるようで、今回の奇襲でも大活躍をした彼女はまだ夕方といえども眠りについていた。
そんな彼女に無理はさせられないと、俺と王子は森の少し開けた場所で焚き火をしながら暖をとっている。
モンスターや死角が来たらすぐにわかるようにと、近くの木にはマーズが見張りとして辺りを伺っていた。
そして、眠るクローディアは俺の膝の上で安らかな寝息をたてている。
「・・・・・・変な、女だな」
「アレフ様」
焚き火の近くの切り株に座り込んだ王子が、眠るクローディアを見つめながら呟く。
それ以降は何も発することなく、王子もそのまま眠りについた。
「・・・・クローディア」
彼女は、変わらず穏やかな顔をしたまま自分の膝の上で眠り続けている。
騎士院の男達に比べたら、小さな身体だ。
筋肉もそんなについてるわけではなく、少しでも力を込められれば折れてしまいそうな細い腕から、あんなにも力強い魔法が繰り出されることが未だに不思議でならない。
「・・・・お前の言っていた大切なものとは、アレフ様なのか?」
彼女はずっと、大切な何かの為に戦っていた。
それが誰なのかは聞いたことがなかったが、今回王子の為にと同行を申し出た彼女を見て、そんなことをふと思った。
そして、それを考えるたびになぜか胸の奥が痛む。
「いや、だからこそ今回ついてきたんだったな」
彼女の頬にそっと手を添えて、その寝顔を見つめる。
手のひらから暖かいものが流れ込んできて、心の中も穏やかな気持ちになった。
その寝顔を見ながら、ジークフリートもつかの間の仮眠を取る。
何かあった時にすぐ対応できるようにと初めは寝ずの番をしていたが、剣を通してボルケーノ様がそんな自分に話しかけてくれたのだ。
『我が辺りを見ていよう。しばらく、お主も休むがいい』
炎の鳥・マーズはボルケーノ様とも繋がっているとのことで、ようやく俺は安心して眠りに落ちた。
そんな俺たちの前に、突然の来訪者が訪れる。
それは『さえずりの森』を超えて、『風鳴りの森』に移動して少ししたところだった。
「誰か!誰か助けてぇぇぇーーーー!!!」
森に響く高めの声が響き渡り、俺達はその女性『イザベル=スカーレット』と初めてそこで出会うことになる。
鈍い上に、思い混むと一直線なところがある団長の誤解を解けるのか!!ですね。
でも団長以外の誰もが分かっていることだし、クローディアも言葉にしないだけで隠してはいないんですけども。




