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モブ女子、懐かしい味

ここまで読んで頂き、ありがとうございます!!


少しずつ、アルフレド王子との関わりが増えていけばと思います。


みなさん、クローディア=シャーロット、今回ばかりは本気で本当にやってしまいました!!



『ローズ』だったら、死んでもこんなことやらないよ。


王子様ルートはやってないけど、きっと何されても聖母のごとく包み込んで許し、癒してあげるに違いない。


申し訳ないが、私に聖母は無理だ!!


今日だって、何十回王子を殴り飛ばそうとしたか!衝動を抑えるのに相当苦労した!


うん、本当によく頑張ったよ!!




って、モブがメインキャラを殴り飛ばすとかどんなゲームだ。


しかも、ばっちりジークフリート様の目の前で殴り飛ばしてしまった。


え?レオを毎日のように殴ってるから今更だって??


確かに、もう手遅れかもしれない。




「はぁぁぁ〜〜〜〜!!!もう、なんであともう少し我慢できなかったかなぁーーーーー!!!」



森の中で私は四つん這いになったまま地面をバシバシ殴り、そのまま深くうなだれる。


あ!ちょっとスッキリしてきたかも!




それに、悪かったのは私だ。


彼が毒殺で死ぬバットエンドがある限り、彼の周りには毒が日常に溢れてるのかもしれないし、まだほとんど他人のような私からのご飯なんてそれは食べられるわけがない。



「ローズなら、王子に対してなんて言葉をかけたんだろう?」



こんなことなら、アルフレド王子のルートを一度でもいいからやっておけば良かった!


いや、でもまさかいきなりわけのわからないまま突然死してから、ゲームの世界に転生する為に準備なんて、できるわけがないっ!!


そもそも、乙女ゲームはたくさんあるからね?


しかも創作の中には大してやったことがないゲーム世界に転生したり、しかもゲームやってた姉が妹の兄や弟が転生してる場合もあったからね!!


いやもう、この世界なんでもありだな!!



「・・・・・とりあえず、考えるのはこれくらいにしてアレを探してくるか!」



森の中にならあるはずだ!


私は目当てのものを探す為に、よし!!と気合を入れると私はさっそく立ち上がって森の奥へと入っていく。






「・・・・・くそっ!!どこにいったんだ、あの庶民の女はっ!!」



急いで森の中に入ってみても、あの女の姿は見えない。



「くそっ!!あんな女は、俺の周りには1人もいなかったぞ!!」



俺に近づいてくる貴族の女達にとっての俺は『次期王位継承者』の王子、アルフレド・ルカ・ド・オーギュストでしかない。


俺が毒殺に怯えて公共の場での食事を絶対にしないことも、彼女達には全く関係ないことだ。


母・マーサがあの事件で倒れてから、俺の食べる食事や飲み物に毒が混ぜられることが何度か起こり、俺は何かを体内に入れることに恐怖を覚えて一時は何も口にできずにいた。


無理やり食べても身体が拒否反応を示し、全部吐いてしまうのだ。


そんな俺に、大臣は告げた。




『あなたは特別なのです。あなたは王族という特別な人間だからこそ、妬まれ憎まれ毒を盛られたのだ。庶民とあなたでは命の価値が違う』




俺は特別で、だからこそ毒を盛られても仕方がない。


それを受け入れてこその王族なのだと。

父上も暗殺の危機を乗り越えて、今があるのだと。


庶民とは違う、俺は特別な選ばれし人間なのだからと、繰り返し自分に言い聞かせることでなんとか食事も取れるようになってきた。


母上が元気な頃は、そんなことに怯える必要などなかったのに。


けれど人を愛し慈しみ、愛された母上ですらもあんな事件が起こるのだ


人を信用してはいけない。信じたところで、また裏切られる。


また、失うのだ。


そもそも、貴族の女達は礼儀だ作法だと必要以上には関わってこない。




「・・・・・くそっ!!!」




あの庶民の女に殴られた頬が痛む。


なんなんだあの女は!!


王である、父上にも殴られたことはなかったのにっ!!


むしろ本当に女なのか!!女の拳じゃないぞ、これは!!


しかもとっさなのに平手打ちではなく、握りしめた拳で殴ってきた!!


普通女なら平手だろうっ!?


頬だけではなく、胸の奥まで痛むのは俺の気のせいだ。


俺は悪くない!!



「はぁ、はぁ・・・・・いた!」



あの庶民の女は、俺の目の前でいくつかの実がなっている木に登り、枝の先に着いたオレンジ色の実を取ろうと四つん這いになって枝を渡っていた。



「な、何をしてるんだ、あいつは!?」



彼女が這っている枝は実の近くになると細くなり、近くまで行けないと思ったのかギリギリのところで腕をプルプルさせながら手を伸ばしていた。



「も、もう少し・・・・ッ!!」


「あっ!!」



彼女の手が実に届いたその時、枝にひびが入り姿勢を崩した彼女の身体が空に投げ出される。



「危ないっ!!!」



その時、なぜ身体がとっさに動いたのか。


俺は無意識に彼女が落下する地点まで全力で走っていた。


だが、彼女が俺の腕の中に飛び込んでくることはなく、落ちる彼女を下から拾い上げたのはどこから飛んできたのが、燃え盛る炎の鳥。




「・・・・はぁ〜〜びっくりした!!ありがとう、マーズ!ってあれ??アレフ様??」


「 くっ!!」



火の鳥のおかげで安全な地面へと降ろしてもらった庶民の女は、火の鳥の頭を撫でると自分の肩に乗せて俺に振り返る。


気まずさにすぐさま顔をそらしたが、彼女はむしろ俺にきびすを返して森の奥に入ってしまった。



「・・・・・・・はっ?!」



こ、この俺様が追いかけてきてやったのに、目の前で何も言わずに逃げ出すだとっ!?



ギリッ!!



やっぱり、あの女も他の貴族の女達と一緒だ!!


目をつむり、悔しさに拳を力強く握り締める。



ヒヤ・・・・。



「!!??」



突然、殴られた方の頬に冷たさを感じて、驚いて目を開けると、目の前にあの庶民の女がいた。



「な・・・・何をっ!!」


「まだ痛みますよね?ごめんなさい。冷やせば、少しはマシになるかもしれないと思って。あ、でもたぶんこうしてれば自然に治ると思うから!」



彼女は水で濡れた布を俺の頬に当てると、その布ごと俺の頬を手の平で包み込む。


そこから、何か不思議な温かいものが流れ込んできて身体がふいに軽くなった。


なんだろうか?とても、心地いい。




「・・・・こ、これは?」


「あ、赤みが引いてきた!良かった!」



彼女の言う通り、本当に頬の痛みが無くなってきている。



「さっきは、本当にごめんなさい!!」


「!!??」



そして彼女は俺の頬から手を離すと、深く頭を下げた。


まさか彼女が謝ってくるとは思わず、俺は言葉を失う。


そうか。彼女もきっと、俺の王子という特別なものの為に謝っているのか。


『王子』の俺が何をしようとも、怒るような奴はいなかった。


ジークフリートは唯一、俺に媚を売らずに苦言も冷静に伝えてくるような変わり者だったからこそ、俺は護衛に選んでいる。


父上ですら、母上のことで俺に悪いと思ってるのか強く出てこない。



「王子からしたら、私は信用のならない他人です。その他人からの食事なんか絶対に食べたくないですよね。王子のことを何も知らないくせに殴ってしまって、ごめんなさい!!」


「・・・・・なに?」


「だから、私色々探してきたんです!ほら、今取ったこの果物は毒を消す効果があるものなんです!それにこの薬草も全部毒とか麻痺も直してくれるやつで」


「・・・・・・・」


「あ!なんだったら目の前で私が毒味してからなら、少しは食べやすいですかね??あ、ほらこの果物甘くてけっこうおいしいですよ?」




彼女は俺の目の前でオレンジ色の果物をかじるとそれを飲み込み、害は何もないことを証明するとそれをそっと渡してくる。



「まぁ、それでも嫌だったら食べなくても全然構いません。その時は私にその果物は返してください。大事な食べ物を捨てるのは、それを育てた人にも自然にも失礼です」



「・・・・・・・」



果物の甘い匂いに、俺の腹の音が鳴る。


彼女は父上も、ジークフリートも信頼を置いている人間だ。

俺に対して積極的に関わってきてはいるが、媚をうり取り入ろうとする貴族とは少し違うような気もする。


それに、彼女は俺に頭を下げた。


貴族の娘はプライドが高く、たとえ自分に非があろうとも決して謝りはしない。

色んな理由をつけて、相手が悪いと言い放つのだ。




そしてーーーーー俺はその実を知っていた。


『パル』と呼ばれる、橙色のにぎった拳よりもひと回り大きな果実。


昔、俺が腹を痛めたり熱を出したりすると、薬を飲むのを嫌がって泣く俺の為に、母上が城の中庭にあるその実を自分で取りに行っていた。


毒だろうと熱だろうと何にでも効くからとまずは自分がかじり、その実を俺に渡してくれたのだ。



『この果物ならお腹もふくれるし、もしそれも嫌なら母さまが代わりに食べてあげるわ。せっかく育った実を、無駄にしてしまったらかわいそうだものね』




「・・・・・・・」


「アルフ様??」



果物を受け取ってから反応のしなくなった俺に対して、彼女が不思議そうに覗き込んでくる。


その彼女の前で、俺はその実を一口かじった。



「あ、アルフ様っ!?」



久しぶりに食べたその実は、あの頃と同じ甘い味がした。


おいしかった。


食事をして、おいしいと感じたのはいつぶりだろうか。


俺の目からは無意識に涙が溢れてくる。


その後、何度もその実にかじりつき全部食べきると俺の目からは涙が止まらなくなっていた。



「・・・・・・・ッ!!」



そんな俺が泣き止むまで、彼女は黙ってそのまま近くにいてくれた。



こんな風に涙を流したことも、本当に久しぶりだった。




これまで活躍させられなかった分、アルフレド王子のことをクローディアと一緒に、私も知っていきたいと思います!


キャラのルートに入ると色んな面が見えてきて、推しキャラじゃなくても愛情がわきますね!

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