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モブ女子、デートをさせて下さいよ!

今回も見ていただき、ありがとうございます!


視点があっちこっち飛ぶので、分かりづらかったらすみません!



今日も目どころか顔も逸らされ、視線までも遮られた。



何かをやらかしたのは間違いないが、事情を聞こうにもレオは例の特別訓練を受けてから立ち上がることも出来なくなってるらしくて、全く会えなかった。


ボルケーノは魔力を回復する為に深い眠りに入り、いざというとき以外には今は出てこない。




「せめて、何をしでかしたのが分かればな〜〜!!」




ゲームなら、見終わったシナリオの文章を後から確認できる機能があるのに!


そういえば、夜中にうっかり寝ぼけながらスキップで飛ばしすぎた文章の確認など、よく朝方にやってたな。


しかも最近は振り返りにもボイスまでついてて、なんてすごい世の中になったもんだとよく思ったっけ。




「・・・・まぁ、悩んでも仕方がないか!」




あ〜〜〜あ!!と、両手を大きく空に向けて思いっきり伸ばすと、座り込んでいてた原っぱの上に背中から寝転がる。


そして、その空には見覚えのある一羽の黒い鳥が。




「あ、あいつはーーーーーーッ!!」






※※※※※※※※





すまない、クローディア!!


お前の顔を見るとあの時の、お前を衝動のままに抱きしめ本能のままに唇を貪りつくした時の熱さや色々なものが蘇ってきて、どうしていいのか分からなかったんだ。



なぜ、俺はあんなことをしたのか!!



今もお前のことを考えると、それだけで胸の奥が熱くなる。


だが今はそんなことよりも、何も知らないお前を傷つけたことを謝らなければ!


すれ違う人づてに聞いた、クローディアが向かったとされる、王都から少し離れた原っぱに向かう。




「あれは・・・・・!」




そして遠目から、クローディアらしき少女を見つけて走るスピードを一気に上げた。


だが、すぐさまその少女が慌てて立ち上がり自分の手から炎の鳥を生み出すと、その鳥の背にのって空に舞い上がってしまう。




「く、クローディアッ!!!」




出来うる限りの大声で空に向かって叫ぶが、空高くに移動した彼女には届かない。




「くっ!一体どこへ向かって・・・・あの先は森の方か?」



彼女と火の鳥の向かう方向を見定めて、そちらに向かって今度は走り出す。





※※※※※※※※





「マーズ!!あの黒い鳥を追って!!」



火の鳥ちゃんには『マーズ』と名付けた。


由来はもちろん私のドンピシャ世代にやっていた、セー○ームーンから。


そういえば、誰がどの戦士をやるかでよく友達揉めたな〜〜!


当時私が好きだったのは背が高くケンカも強い、だが心は恋する乙女の戦士ジュピター!


でも、今の私は炎だから必殺技はバーニングなんとかだろうか?




そんな私が今マーズとともに追っかけてるのは、全身が黒い色の羽で覆われたカラスによく似たモンスターのダークバード。


あの鳥自体には大きな脅威はない。


頭のいい賢い鳥で、よく戦闘でピンチになると仲間を呼びまくる為にエンドレスバトルができる、まさにレベルアップ専用のモンスター!



問題はダークバードの頭に寄生したあのハエトリグサに似た、トゲトゲのついた花。


アレに猛毒があるのだ。




「君に恨みはないけれど、死亡フラグの為に燃やさせて頂きます!!」



マーズの背の上で立ち上がり、炎で弓と矢をイメージしてダークバードに向けて放つ。


おぉ!!


弓道なんかやったこともないけど、魔法のおかげですんなり目標に向かって飛んでくれたよ!!


さすがはチート魔法!!



そして燃え盛る炎の矢はダークバードに向かってまっすぐ飛んでいき、頭上の花に当たって見事にその花だけを燃やし尽くす。




「グギャァァァーーーーーッ!!!」




間違えました。


花+ダークバードの頭皮が燃えて、見事に円形のヤケドをおって赤くなってしまっている。


ごめんね!!


でも、どうか命を取られるよりハゲになる方がまだマシだと思ってください!!




「よしっ!!!」




これで、また1つフラグが折れた!


私の役割はジークフリート様の死亡フラグをとことんまで折ることだ。




「マーズ!王都に帰ろう!」



「グギャァァァーーーーー!!!」



「・・・・・・あれ??」




その時私の背後には、怒ったダークバードがいつの間にか仲間を呼んでおり大量の黒い群れが私に向かって襲いかかってきていた。




「・・・・・・マジっすか?]




やっぱり、てっぺんハゲにされたら鳥でも怒りますよね!!!



何十・何百ものダークバードの鋭い嘴が私にめがけて飛んでくる。




「い、いやぁぁぁーーーーーーー!!!」





※※※※※※※※





「な、なんだ?あれは・・・・・??」



クローディアを乗せた火の鳥を追いかけて行くと、空に突然ものすごい量の黒い鳥が現れてクローディアに向かっていく。



「危ないッ!!」




きっと、こんなことは今まで何回もあったに違いない。


赤い魔女様のおかげで見せてもらえた光景で、彼女はレオナルドと一緒に色々なところでこれからの危険を事前に回避するためにひたすら行動していた。


自分には絶対に内緒で。


だからこそ、彼女を補佐するレオナルドを今すぐに鍛えなければ!と特別メニューを取り入れたが、彼に安心して任せられるのはまだまだ先だ。


それに本音を言えば、これまで自分の方が守られていたからこそ、これからは彼女を守ることを他の誰かに任せたくはない。




「確か、ボルケーノ様に頂いた剣を使えば・・・・!」




ジークフリートは赤き剣を手に持つと、空に向かって頭上にまっすぐに伸ばし、ボルケーノ様から教えてもらった言葉を放つ。



「我が声に応えよ、サン・フレイム!!」



ジークフリートの低い声とともに剣から紅い光が空に向かって伸び、黒い鳥たちとクローディアの空間のちょうど間を壁のようにして広がり遮る。




「グギャァァァ!!!」




その紅い光の壁にぶつかった黒い鳥は、少しでも触れただけで羽が燃えてしまうことを仲間の姿を見てすぐに分かり、それ以上進まずにすぐさま森へと帰っていく。


与えるダメージこそ少ないものの、ダークバードならはこの程度でも十分だ。




「えっ?!じ、ジークフリート様ッ!?!?」


「危ない!!クローディア!!」




まさか下に自分がいるとは思わなかったクローディアが、慌てた拍子で足元を踏み外して空からすごい速さで地面に落ちてくる。




「き、キャァァァーーーーーーッ!!!」




マーズがすぐさま主を助けるために急降下して向かい、ジークフリートも受け取るために落下地点と思われる場所にまで急いで走っていく。




「クローディアッ!!!」




もう少しで地面にぶつかる!!!という直前で、マーズがクローディアの首元の服を空中で掴み、下からはジークフリートがその身体をしっかりと受け止めてことなきを得た。


そしてジークフリートが彼女の身体を支えて危険がないことがわかると、マーズは空に消えていく。




「ハァ、ハァ・・・・だ、大丈夫か?クローディア?」




彼女の腰と足をしっかりと包むようにして掴んでいるジークフリートが、上向きでそこにいる彼女に声をかける。


落下の恐怖でまだまだ震えていたクローディアは、ジークフリートの首元にしっかりとしがみつくと大きく息を吐いた。



「こ、こわかった〜〜〜!!」



心臓の動悸が止まらない。


それは落下体験の恐怖体験だけではなくて、見た目的には私が抱っこされたまま抱きついている、この状況のせいだ。




わ、私ったら!


じ、ジークフリート様に抱かれてるーーーーーーーーッ!!!!



っていうか、ジークフリート様の髪の毛がなんていい匂い!!


もう変態と言われてもいい!!


ずっとこうしてたい!!


どうしようこれ、鼻血吹く!!


ちょうど顔が見えない形で本当に良かった!


鏡もないから自分でも確認ができないものの、絶対に可愛い女子の顔じゃないのだけは分かる!!


興奮してハァハァ言いながら、好きな人の匂いを夢中で嗅いでるなんてーーーーーそんなの乙女じゃない。




「クローディア、頼むからあんまり無茶はしないでくれ!!」


「す・・・・すみません!」





彼女の顔が見えなくて本当に良かった。


この体勢はまずい。


腰に手を当ててしっかり身体を密着させたこの体勢は、あの時のことが鮮明に自分の脳内に蘇ってくる。



『あっ・・・・・んぅ!』



「!!??」



あの時の俺は、彼女の全てを奪い尽くしたい!という激しく獰猛な自分の感情に支配されていた。


その自分がまた現れて彼女を傷つけるんじゃないかという思いもあったが、それは言い訳で自分自身が一番怖かったのだ。




「・・・・いや、謝らなきゃならないのは

俺の方だ」



「ジークフリート様?」



気持ちが落ち着いて来たのか、彼女が自分の首元にしがみついている力が弱くなった気がした。




「昨日からお前と向き合えずに避けていたこと、本当にすまなかった」


「!!??」



何も知らないクローディアにとっては訳も分からずにいきなり避けられて、嫌な気持ちになっても仕方がない。



「い、いいえ!!私が何かしてたら・・・」


「お前は何も悪くない!!」


「・・・・・・そ、そうですか」



彼女が、安堵からか大きく息をはいているのがわかった。


それだけ心配をさせてしまったということだ。


そして、こうしてクローディアのそばにいるとやっぱり体は温かく楽になる。


気持ちも、穏やかになっていく。



そうだ。


これが普通で、あの時はやはりどうかしていたんだ。




「クローディア、もしよければこれから一緒に街へ行って、何かお前に贈り物をさせてくれないか??」


「・・・・・・・・え?」


「普段の礼として、受け取ってくれ」


「・・・・・・・・・・」


「クローディア?」




彼女の顔が俺の首元に伏せられているため、俺からは彼女の顔が見えない。


だが、俺の言葉に俺を首元に回している彼女の手に強く力が入ったのは分かった。


身体も震えている。


嫌だったのだろうか?




「すまない、嫌なら無理には」


「いきます!!!行きます!!!絶対に行かせて下さいッ!!!!」




俺の手から肩にバンッ!!と強く手を置き、顔を勢いよく上げた彼女は、何かを必死に抑えているかのような、それでも全面から何かの圧力が噴き出している真っ赤な顔をしたまま、叫ぶようにして返事をした。


なぜか目が充血していて鼻息が荒いが、大丈夫か??


肩に置かれた手にもかなりの力が入っていて、この俺でも少し痛いぐらいだ。




「・・・・・・・あ、あぁ」



この後、2人で王都の街へ行くことになるのだが、不思議なことが1つだけ。


なぜか俺たちがいたところをふと振り返ったら、地面に大きな血だまりができていてとても焦った。


まさか、クローディアにどこかケガでも?!とすぐさま彼女の身体を確認したが、どこにもケガはなくむしろとても生き生きした様子だった。






「く、クローディアッ!!またかっ!?」



その後、彼女がお手洗いだと言って街の中で消えることが数度。


その度に山賊やモンスターが丸焦げで街の入り口で見つかったと、騎士院からの報告が俺のところまで来ていた。






※※※※※※※※






まさか、まさか、まさか、まさかーーーーーー!!!



モブキャラの私に、ジークフリート様とのデートイベントが起こるなんてぇぇぇッ!!!



いや、先ほどの空から落ちたらイケメンが!!イベントでもかなり心臓がヤバかったのに!!



親方!!地上にイケメンがッ!!って、それは違う!!


普通逆!!


いや、男女の位置はあってる!!




私は耐えに、耐えた!!


ジークフリート様に抱きしめられながら鼻血を拭いてはいけないと、大声で心のまま叫んではいけないと、全神経を60億個の細胞を総動員して耐えたのだ!!



最後ちょっと耐えきれなくて、こっそり少しだけ鼻血吹いたけど。



なのに、まさかの『でぇぇと』だなんて!!



うおぉぉぉーーーーーーーーーーーー!!!





※※※※※※※※





「・・・・・・なぜ??」




なのに、ジークフリート様と街に行けばこんな時に限って目に入ってくる、死亡フラグの嵐。


厄介な魔物のボスに繋がってる山賊の荒くれものに、人間に化けた他国から乗っ取りに来た狐のモンスター、薬売りに扮した他国からの間者などなど。


なぜか、出現時期も場所も本来全然違うはずのそのイベントが、一気に押し寄せてきている現実に、私は女神か神様の悪意を感じましたよ。



いいじゃないですか、たまには普通に女の子してたって!



いいじゃないですか、たまには好きな人とのデートを普通に楽しんだってッ!!




「・・・・じ、ジークフリート様、またちょっとお手洗いに行ってきますね!」


「あ、クローディア!!」




なんで、恋する乙女ともあろうものが、デート中に10分おきにトイレに行かなきゃならんのだ!!



団長、私は決して貧○じゃありませーーーーーん!!




「な、なんなんだお前はッ?!」



「うるさい!!こんな時に限って王都にやってきやがってッ!!」



「ゆ、許してくれ!!もう、しない!もうこんなバカなマネはしないから!!」



「当たり前だ!!もう2度と私の前に現れるんじゃねぇぇぇーーーーーーッ!!!!!」



「ウギャァァァーーーーーーー!!!」




街の片隅で、本日何度目かの激しい炎が天高くまで燃え上がる。





その近くの物陰で、黒い鎧とマントを身につけた人影が彼女を静かに見守っていた。


その人物の手の中には、可愛らしくピンクのリボンでラッピングされた小さな白い箱が。




「ーーーーーーー全く、目の離せない子だ」




その様子を見ながら、その人物は小さく笑った。






そして、デートとしては30分も一緒にいられなかったものの、騎士院に帰る前にプレゼントだとジークフリート様から小さな贈り物を頂いた。


その小さな箱に入っていたのは、銀色のアンティーク調なデザインで作られている、小さな紅い石が数個はめられたブレスレット。




「・・・・・・んふふ〜〜♪」




これだけで今日の疲れも怒りも一気に吹き飛ぶから、我ながら単純だ。


自室のベットに横たわりながら、ブレスレットを左の手首にはめた手を天井に向けて伸ばしては、ニヤニヤしながら何度でも見つめてしまう。



うん!明日からも頑張ろう!!





※※※※※※※※





「ーーーーー団長、何やら楽しそうですね」


「・・・・あぁ、すまない。つい色々思い出してしまって」




あの後、騎士院に帰ってからぶっと、夜になった今でも残していた書類の仕事をしている。


書類をしながら、ふと先ほどの街での彼女のことが思い出されて、ついつい表情がゆるんでしまう。



「ーーーーークロエとは無事に仲直りできたようで、何よりです」



「あぁ、お前のおかげで彼女にも謝ることができた。ありがとう」




グレイがあの時に背中を押してくれなければ、俺はずっと彼女を避けていたままだっただろう。


それにプレゼントを渡した時の、彼女のあの顔。




『・・・・・・う、嬉しい、です』



泣きながら笑って、お礼を伝えたいのに泣きすぎて言葉になってなくて。


その時を思い出した、ジークフリートの表情が再び緩む。




「ーーーーーいえ、ライバルとはフェアでいたいし、彼女にはなるべく笑顔でいてもらいたいので」



「そうか・・・・・・・ん??」



「ーーーーーーーでは、俺は先に」




仕上がった大量の書類を手に持つと、グレイはきびすを返してそのまま部屋を静かに出て行ってしまう。




「あ、おい、ちょっと待て!!グレイ!!」



ジークフリートが慌てて追いかけて扉を開けた先には、もう彼の姿は見えない。






グレイはもうすでに騎士院の外に出ており、満天の星空の下を歩いていた。




「ーーーーーーよかったな、クロエ」




さて、明日は何のお茶を用意しようか?


彼女が気に入っていたお菓子がまだ残っていたから、それに合うお茶となると・・・・。








色んな人の思いが重なり合いながら、今日も長く短い1日が終わりを告げる。



どうしても、普通のデートがさせてあげられなかったです!


インターバルはこの辺にして、次回からは新章に突入の予定です!

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