モブ女子、私の魔力は何を目ざしているのか?
いつも読んでいただき、ありがとうごさいます!
今回と何話かインターバルを入れられたらと、思ってます!
ボルケーノの炎の瞬間的大ワープのおかげで、私達はあっという間に王都に戻ってきた。
夜明け前に家を出て、死の山での何日も過ぎたかのような気持ちと体力のぐったり具合だったが、現実ではそんなに時間は過ぎてなかったようで違和感が中々拭えない。
某・精神となんとかの部屋は、もしかしたらこんな感覚なんだろうか??
まぁ、しょせん私はモブキャラだ。
ワックスで髪を逆立てて修行したわけじゃないんだから、何も能力は強くなってるわけがない。
ーーーーーーーーと思っていたのに!!
『あぁ。イヴァーナのやつが眠る前に、礼として主に加護を与えていってるぞ??』
「な、なんですとっ!!??」
『しかも、アグニと対をなす氷系最強呪文の
フィンブル・ヘイルも預けてあるな』
「!!??」
い、イヴァーナ様!!
人に黙って、うっかりちゃっかり内緒でなんてことをしてくれちゃってるんですかッ!!!
その素晴らしい加護も最強呪文も、こんな通りすがりのただのモブではなく、あなたの愛した未来のジャックに与えるものではないのですか!?
そうですか。
未来ジャックはイヴァーナ様ご自身で守られますか。
そうですよね、こんな破壊神能力はジャックには必要ないですね!
だからってボルケーノといい、イヴァーナ様といい、君たちは私を一体どうしたいんですか??
『最強魔力』&こんな『至上最強攻撃呪文』なんぞをほいほいっと与えて、女神様も神様達も私にモブから魔王にでもなって、これからは世界を滅ぼせとでもお望みなのだろうか??
それではまた、別の物語が始まってしまいますよ??
『モブとして生まれ変わりましたが、うっかり最強のチート能力を与えられたので、どうせなら魔王になって世界を滅ぼしてみようと思います!!!』
的な、新章が今すぐにスタートしちゃいますよ??
私が全力で滅ぼしたいのは愛する人のデスフラグのみで、人類の未来では決してございません。
「・・・・ち、ちなみにどんな攻撃魔法なの??」
『そうだな。基本はアグニと同じ主次第でいかようにもできるが、我が主の素晴らしい巨大な魔力で本気で唱えたなら、この国はものの数秒で全てが凍るとは思うぞ』
「も、ものの数秒・・・・!?」
こ、怖い。
今だに私にだけはツンツンしまくりで、デレのひとかけらも見せたことのない、私の魔力が本気で怖い!!
あれ?
でも、アグニの時は力を貸してくれてた。
いや、あれはデレじゃないですよね?
殺し合い??
おもしろい!!!
それなら、俺もまぜろやこらァァァーーーーー!!!的な??
いや、もうよそう。
こんな無駄な私の叫びを聞いても誰も面白くない。
そんなことよりも、死の山から帰ってきてからのことを話そうと思う。
私達は王都に帰ると、ジークフリート様は本気で嫌がって逃げ出そうとしているレオの首根っこをつかんで、朝まで寝ないで特訓だ!!!と、騎士院へそのまま無理やりつれ帰ってしまった。
「いーーーやーーーーだーーーー!!!!
クロエ助けてェェェーーーーーー!!!!」
「アルカンダルの騎士として恥ずかしいないよう、一から叩き直してやる!!!」
ごめん、レオ。
私には鬼ような形相のジークフリート様を止めることはできません。
そして、家に着いた私を玄関口から両手を広げたララが暖かく出迎えてくれた。
「クロエちゃん!!おかえりなさーーーーーーーい♪」
「ただいま、お母さん!」
そしてお母さんは、すぐさま私の首元に手を回してしっかりと抱きしめる。
「お、お母さん??どうしたの??」
「・・・・・・」
お母さんが珍しく、くっついて離れない。
お父さんとケンカでもしたのだろうか??
お母さんに抱かれてるのは、なんか恥ずかしい気持ちになるんだけどやっぱり嬉しい。
昔からお母さんの腕の中は温かくてーーーーーーっていや、むしろこれは苦しい!!
お母さん!!
くび、首がなんかしまってますッ!!!
「もう、クロエちゃんが留守のおかげで、ランチがすごい大変だったんだから〜〜〜!!」
「・・・・・ご、ごめん、なさい」
「夜も予約がいっぱいたから、お願いね♪」
「・・・・・は、はい」
レオ、私も同じく休めそうにありません。
そして、その夜ーーーーーー。
ウェイトレスとしてあっちへこっちへとかーなーりーこき使われまくった私は、お店の閉店とともにぐったりになりすぐさま布団へダイブした。
だから、この後のことを私は知らない。
カランッ
静まり返ったリビングで、グラスに入った氷の揺れた音が響く。
テーブルの上に置かれたグラスは2つ。
どちらも大きめの氷と、そこに注がれた透明な液体が注がれている。
「・・・・・・ッ」
そのグラスの1つを長く美しい指の主がそっと手に取ると、そのままグラスの中身を一気にあおり喉もとへと注ぎ入れた。
強く辛味のある味が広がり、体が熱くなる。
「珍しいじゃないか、君がこんな時間までお酒を飲んでるなんて」
「・・・・ジュード」
振り返った先にいたその男性は、後ろから愛する妻を抱きしめると、こめかみにそっとキスを贈る。
「あら♪あなたも一緒に飲む?」
「いいのか??」
「もちろんよ〜〜♪」
愛する妻の許しを得ると、ジュードはキッチンからもう1つグラスを持ってきて、テーブルに置いてある氷とお酒を注ぐ。
ララの前に置いてある、お酒と氷の入ったグラスは自分の為のものではない。
「これは、死の山地方のお酒だろう??」
「えぇ、よくわかったわね♪」
死の山から湧き出る、一切の濁りがない澄んだ湧き水と寒い環境の中でたくましく育った穀物から作られた、繊細で端麗な品のある味のお酒『レディー・ビアンカ』。
昔から『彼女』が好きだったお酒。
こんな風に一緒に飲んだことは、最後までなかったけれど。
「久しぶりに飲んだが、やっぱりこの酒はうまいな」
「えぇ、おいしいわね♪」
もう1つの、無人のグラスのわけをジュードは聞かない。
いや、あえて聞こうとしないのか。
そういうさりげない優しさに、いつも救われている。
「ジュード、ありがどう」
「なんだぁ〜〜急に、もう酔ってるのか〜?」
「そうかもね♪」
そのまま、隣でお酒をほろ酔い?気分で飲み続けるジュードの肩にそっともたれかかる。
『レディー・ビアンカ』はかなり強い度数のお酒で、お酒にそんなに強くないジュードはすぐに酔いが回ってしまっていた。
「らら〜〜!!あいしてるぞ〜〜!!」
「私もよ、あなた♪」
だが、今日だけはどれだけ飲んだとしてもきっと酔えそうにない。
カランッ
酔っぱらってソファの上で寝てしまったジュードの横で、ララはグラスを指で傾けると液体の中で氷がくるんと動く。
「今日は、朝まで付き合うわ♪」
そして向かい側に置いてあったグラスに、自分のグラスをコンッと小さくぶつけると、ララは再びお酒を静かに飲み始める。
まだまだ空は暗く、星空に見守られながら「2人」の静かな晩酌は、長くゆっくりと太陽が昇るまで続いた。
私もお酒が弱いので、強い人が羨ましいです。
強い母と弱い父、クローディアは果たしてどちらの資質を継いでいるのか!




