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モブ女子、悪夢のような光景でした!

いつも見て頂き、ありがとうございます!!


ジークフリート様がんばれ!!


光の扉をくぐった先には、見覚えのある景色が目の前に広がっていた。




「ここは・・・我が国のアヴェロニア城??」




豪華絢爛な、それでいて精巧な作りの装飾と、深い赤色の絨毯が入り口から奥まで続くその部屋は我が国の王が座する謁見の間と大変よく似ている。


ただ、いつもは窓という窓から光を入れている為に明るいはずのその部屋は、ワインレッド色の厚みのあるカーテンが全てきっちりと閉められ、明かりの一切ささない暗い雰囲気となっていた。


そして、その絨毯の先で気だるげに玉座に座っているのは我が国のアレキサンダー・ルカ・ド・オーギュスト王ではなく、黒髪に黒い瞳、そして黒い鎧に黒いマントを羽織ったもう一人の『俺』。




『よぉ・・・・ずいぶんと遅かったじゃないか、ジークフリート=ウルンリヒ』



「お、お前はッ!!」




それは鏡に映したような、全く今の自分と同じ姿。


違うのは手に持つボルケーノ様から頂いた剣の赤色と紅い炎の部分が、目の前の『俺』はどこまでも黒く、暗い黒炎になっていることと。


その顔には、不適な笑みが浮かんでいることぐらいだった。




『ずっとここで待っててやったのに、中々お前が現れないから待ちくたびれちまったぜ、なぁ・・・・・クローディア?』


「クローディアだとッ!?」




『俺』が無言で横を向くと、本来王妃が座する玉座の隣の椅子にどこからか光が当たり、そこにいるものの姿を映した。



「クローディアッ!!!」



そこには椅子に座ったまま、トゲのついたいばらで手足と腰を巻きつかれてその場所に縛られ、いつもは快活な明るい笑顔が浮かぶその顔は、人形のように無気力で虚ろな光のない目をしていた。


急いで彼女のそばに駆け寄ろうとしたが、足がどうしても動かない。




「くっ・・・・な、なぜ動かない!!」


『残念だな、クローディアは俺のものだ。もし返して欲しいなら俺を倒して奪い取れ』


「!!??」




『俺』が玉座を立ち上がると、隣に座ってピクリとも動かないクローディアの顎に手をかけ、唇に触れるか触れないかのギリギリまで己の顔を寄せる。



『やめろっ!!!』


『嫌なら俺と始めようぜ?殺し合いをな!!』


『くっ!!!』




言葉とともに、素早い動きで黒炎の剣で『俺』が斬りかかってくるのを炎の剣ですぐさま受け止める。



強い!!



受けた剣は重く、少しでも気を抜いたら押し負けてしまいそうだった。




『どうした?お前から仕掛けて来ないなら、俺から行くぜ??』




交えていた剣をガンっ!!と一度強く押すと、後ろに飛び下がり、剣を突き出した状態で勢いよくこちらに向かってくる。



「・・・・・はぁっ!!」



ギリギリのところでその突きの攻撃を避けて反撃に回るが、相手もすぐさま反応し、剣同士が激しくぶつかり合い、お互いに致命傷は与えられないまま、攻撃を互いに何度も繰り返す。


そして俺は剣を合わせながら、その相手に奇妙な感じを受けていた。



「・・・・・ッ!!」



剣を扱うものは誰しも自分だけの癖というものを持っていて、たとえ師が同じだとしても、どうしても全てが同じにはなりえないことが多い。


そしてその『男』の癖はとても俺に似ている。


しかも、その少し荒削りな部分は今の俺ではなく、あの頃の俺にとてもよく似ていた。




【気づいたようですね】



「赤い魔女様!?」



『くっ・・・おせぇーな』



「!?」




一際激しく剣の打ち合いが続いたあとに、お互いに同じタイミングで距離を取る。




「ハァ、ハァ・・・・赤い魔女様、あいつは」



【彼はレイラの呪いの魔法で生み出された、死神。死神は目の前の者の闇を映し出す鏡でもあるわ。彼は、あなたの闇そのもの】



「俺の・・・・闇?」



【あなたが彼を倒すことができれば、死神にとらわれているクローディアも助けられる】



「・・・・・わかりました」




ジークフリートの厳しい眼差しが、自分と同じ姿をした男に向けられる。




『いい目だな。だが、今のお前じゃ俺を倒すことはできねぇよ』


「何だと?」




男は、黒の炎が激しく燃え上がる大剣を自分の肩にもたれさせると、片方の手だけ自然とイバラが解けたクローディアの手を掴む。




「クローディアに触るなっ!!」


『お前、ここに来る時も俺の命1つでクローディアが助かるなら、いくらでも掛けてやるなんて言っていたよな?』


「それがなんだ!俺を庇って命の危険にさらされているクローディアを助ける為に、俺が命をかけるのは当然のことだ!!」


『当然・・・・ね。かわいそうなクローディア。お前のは命をかけてるんじゃなくて、命を捨ててるのにな』


「!!??」




男は持ち上げたクローディアの手の甲に口づけると、ジークフリートに向かって手を伸ばし、その手のひらから黒い炎を生み出してジークフリートの体を包み込む。




「くっ!!体が、動かない!?」



『お前の為にどれだけクローディアが命をかけて守っても、お前は簡単にその命を危険にさらす。かわいそうにな。俺は確かに死神だが、クローディアにとっての死神は間違いなくお前だよ、ジークフリート』



「な・・・・なん、だとっ?!」




ジークフリートを包む黒い炎はどんどん大きくなり、全身を覆っていく。




『誰かを守る為になら、自分が死んでも構わない。そんなお前を守る為に、クローディアは何度だって死んでまたここへ来る。そんなお前には、何1つ守れやしない』




お前はここで死ぬんだ!!



死神の声が頭に響き、黒い炎がジークフリートの体を強く締め付ける。





「くっ・・・・!!」




俺は、死ぬのか?


こんなところで?




『・・・・・大切な人を、守るためです』



そう決め本当にその言葉通りに守る為、たくさんの行動をしていたクローディアを、守ることもできずに?




ーーーーお願い、あなたは生きてーーーー





そう決めて、行動したあの人を守れなかった時と同じように。



また俺は、大切なものを目の前で失うのか?




「・・・・・・ッ!?」




ジークフリートの目の前に、自分を庇って立つ2人の背中が重なりながら映る。


そしてその体に、何本もの矢が一気に彼女を突き刺す。




あの時の、ようにーーーーーーーー。





『母さんっ!!!』


『ジーク・・・・い、きて』





全身から血を流し、それでも振り返った彼女は微笑んでいた。



あの後、俺は心が悲しみと怒りと絶望に荒み、死が隣り合わせの戦場に身を置くことでその感情を吐き出していた。


確かにあの頃の俺は、いつ死んでもおかしくなかった。



だが、それでも。



あの時の悲しみをーーーーーー後悔を、無念を、怒りを、絶望を。



俺は絶対に繰返さないっ!!!





そしてとうとう、黒い炎がジークフリートの全身を覆い尽くした。










『静かだな・・・・・・死んだか??』




謁見の間で、玉座に再び座った『死神』の前ではジークフリートを包み込んだ黒い炎が静かに揺れていた。




『?!?!』




なんだ?



何かの気配というよりも、強い殺気を強く感じるのに、姿がどこにも見えない。


いたと思った瞬間には、もうそこにいない。




『ジークフリート!いるなら出てこい!!』



「・・・・・・・もう、ここにいるさ!!」




グサッ!!




『ぐっ!!』





自分の姿をした『死神』を背中から剣で一気に突き刺す。


死神だというのに、その血は紅かった。


そして剣を引き抜くと、『死神』の背中と胸部から血が溢れ出る。





『くっ・・・・・・やるじゃないか、今回は負けといてやるよ』


「俺は生きる!!生きて、今度こそ絶対に守り抜くっ!!!」


『それがお前に、できるか・・・・な』





『死神』はそう言い残すと、クローディアの目の前に倒れた。




「・・・・・・・・」




クローディアの虚ろだった瞳に、血まみれで倒れていくジークフリートの姿が映る。




「・・・・・・・・」





血まみれの、ジークフリート様ーーーーー。




「!!??」




視点の定まらなかった瞳に光が戻り、その瞳からは涙が次から次へとこぼれていく。




「く、クローディア!!大丈夫かっ??」




ジークフリートが彼女を縛るイバラを斬りすてて外し、クローディアの体を支えて声をかけるが、彼女の涙は止まらない。




「ジーク、フリート様が・・・・・嫌だ!嫌だ!!死なないでっ!!」




クローディアは泣きながら、今まさに血まみれで倒れている『死神』に駆け寄ろうと手を必死に伸ばす。




「クローディア!それは俺じゃない!!俺はここだ!!」


「嫌だ!!嫌っ!!放してっ!!ジークフリート様が・・・・・ッ!!」


「クローディアっ!!」





血まみれの死神の姿に、俺が死んだと思い込んでる彼女の悲しみは止まらない。


そんな彼女の腕を引っぱり、強く抱きしめる。





「クローディア!!俺は生きてる!!お前のおかげで、俺は生きてるんだっ!!」



「生き・・・・てる」




クローディアの目と俺の目がようやく合い、視線がゆっくりと絡み合う。





「ジークフリート、様??」




そして、涙を流したままの彼女の両手が俺の両頬に触れた。




「本当に、ジークフリート様??」


「あぁ、俺だ。クローディア」




ジークフリートの両手もクローディアの両頬を暖かく包み込み、その涙を親指のはらでそっと拭ってやる。




「・・・・・よかっ、た」


「!?!?」




そして、彼女が笑った。



俺が生きていることに心の底から安心した彼女が、涙をこぼしながら柔らかく笑った。





「ーーーーーーッ!!!」




その笑顔を見た途端、俺は突然心の奥底から沸き起こった抑えきれない熱い衝動に動かされ、彼女の唇にかみつくような深い口づけをする。




「うっ・・・ん!あ・・・・っ!!」




合わせた唇の隙間から、彼女の苦しそうな声が漏れ出るが、止められない。



彼女の頬に添えていた両手を、頭の後ろと腰に手を回し、より強くその身体を抱きしめて口づけもより深く熱くなっていく。



苦しさに逃げようとしたその舌先ごと角度を変えて貪り、思うがままに奪いつくす。




それがどんな感情かなんて、知らない。


ただ胸の奥が熱いんだ。


抱きしめている彼女の体と彼女の唇から感じられる信じられないくらいの熱さに、俺の心は支配されていた。





「ーーーーーーーーッ!!!」







どれくらい、そうしていただろうか??



それは一瞬だったのか、長い時間が過ぎたのか。


気づくと彼女は俺の腕の中で眠っており、俺は先ほどの強い衝動が嘘のように穏やかな気持ちで眠る彼女を優しく抱きしめていた。




「お、俺は一体、何を・・・・ッ?!」




我を忘れて感情のままに暴走するなど、これまでそんな経験をしたことは戦場でも無かったのに!!




「ジーク、フリート、さま・・・・」


「!!??」



クローディアの安らかな寝顔を見ているだけでも、ジークフリートの顔が熱くなり心臓が大きく跳ね上がる。




「ーーーーーー何をしてるんだ、俺は!」




深い眠りの中にあるクローディアに見られる心配はないというのに、真っ赤な顔を隠すようにジークフリートはクローディアの肩越しに自分の顔を埋めた。



だが、心臓の音は変わらずにうるさく響き渡る。




「何を、してるんだ」




そして、彼女を抱きしめる腕にしっかりと力がこめた瞬間ーーーーーーー逆らえない眠りに襲われて、そのまま意識を失った。









【ジークフリート殿、私の娘を助けてくれて・・・・・ありがとう】




そのあと優しい女性の声が響き、ジークフリートとクローディアの姿がその場所から、空間に溶け込むようにして消えていった。





ようやく主人公が復活できますかね!


死神ジークも、もしかしたらまた出てくるかもな〜なんてすでに考えてたらだめですね!



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