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氷の神と赤髪の少年 3

いつも読んで頂き、ありがとうございます!


氷の神と赤髪の、ただのイチャイチャ話になってしまってるんじゃないかと、書いてからヒヤヒヤしております。


どうか、皆様の温かい心で見てあげて下さい!


その日から、私はジャックと『恋人』というものになったらしいが、今一まだよく分からない。





とりあえず、姿を人間のものには化けてみる。


見た目だけではなく細胞まで作り変えるから、繊細で綿密な人の身体になるのには結構苦労した。


見た目は、氷の体の名残が青い髪の毛と青い瞳に残り、ジャックと同じ年頃の娘の姿にしてみた。


洋服は、村の娘のものをそのまま真似して作る。


神としては洋服なんて着ないから、すごく違和感があるがそのうち慣れるだろう。


私のこの姿に、ジャックは全身を震わせながら驚いていた。




そんなに変だっただろうか??




『へ、変じゃない!!すごい可愛い!!キレイ!!可愛い!!』




可愛い!!可愛い!!と繰り返して言うからには、とりあえず変ではないのだろう。



それならばいい。



そして、最初にジャックが私としたがったのは、隣の町にあるお店での『デート』というものらしい。


ごはんや飲み物など、いつも山で一緒に食べてたじゃないかと言ってはみたが、あの時と今は気持ちが全然違うんだ!!と、逆に怒られてしまった。




うーーーーーーん、何が違うんだ??




街では人気だという、お店でのごはんは確かにおいしかった。


神としては食べ物を摂取しなくても、自然から気を得られれればいいのだが。


人間の体になってから、お腹が空くという感覚を私は初めて味わった。




なるほど!




人間がなぜあんなにも食を大事にするのか、よく分かった。


私が食べることに夢中になっているのを、ジャックは嬉しそうに見ていた。


これと、これもおいしいよ!と次から次へと新しい味が出てくる。




うん、これは飽きない。




『はい、イヴァーナ、アーーーン!』


『なんだ??私は子どもではないから、自分で食べられるぞ?』


『そ、そうじゃなくて、俺が食べさせてあげたいの!』


『それなら弟のジョンに食べさせてあげればいいんじゃないのか??』


『そ、そうじゃないーーーーー!!!』


『???』




最近、ジャックといると分からないことばかり起こる。



私はもともとの住処が山で人間のような家はなかったから、ジャックが2人で暮らそうと村の外れにある小さな家に一緒に住むことになった。


私はそこで、そうじや洗濯など、人の生活というものを一から学んでいる。



これは面白い。




前から生活を眺めていたつもりだが、見ているだけと、実際に自分がやってみるのとでは全然違った。


人間とは、こんなにも1日の中でやることにありふれているのだな。


限りある寿命がある中で、毎日これだけ色々あると、あっという間に年を重ねてしまいそうだ。


ジャックは街の工房で朝から夕方まで働くことになり、帰ってくると一緒にご飯を食べてからお風呂に入り、寝る。


それの繰り返しの中で家事もだんだん慣れてきて、余裕も出てくるようになってきた。




『ただいまーーー!!』


『あぁ、おかえり。ジャック』




ただいま、とおかえり。



不思議な言葉だ。


神の時はそう言い合う人間を見てるだけで特に何も思わなかったが、この言葉を言うたびにどこか安心する自分がいる。


そして、朝になるとおはよう!と起きて、ご飯を一緒に食べる。


誰かと毎日一緒に何かを食べるなんて、今までになかった何よりも新鮮なことだ。


朝目覚めると隣のベットにはジャックがいて、その寝顔も子どもの時からよく見かけたものなのに、何か胸の奥が弾んだ音を立てる。



『恋人』と、『家族』は何が違うのか?まだよく分からない。



子どもがいるかどうかだろうか??



そういえば、私に家族をと散々言っていたが、子作りはしなくていいのだろうか??


それをジャックに告げたら、真っ赤な顔をして、それはちょっと待って!!ととても慌てていた。


動物だって虫だって、むしろ草花だって生き物は皆が子孫繁栄の為に子作りをするのに、何をそんなに恥ずかしがっているのか??




『・・・・・あ、あの!イヴァーナ!』


『なんだ??』




今日もご飯を食べ終わり、お風呂にお互い別々に入って後は寝るだけだというところで、ジャックが声をかけてきた。


あ、そうそう!


お風呂に入ることは、氷の神の私には1番ビックリしたことだ。


あんなにも気持ちがいいものなら、ぜひとも毎日入りたい!


体が氷の時は考えもしなかったことだ。




『どうした?ジャック?』


『・・・・・き、キスしてもいいかな??』




なんだ?


あぁ!


ずいぶん前に私からした、口と口をくっつける行為か。




『別に構わないぞ??』


『わ、分かった!』




私をベットの端に座らせると、ジャックが私の両頬を手で包んで私に顔を近づける。




『・・・・・・・・』


『あ、あの〜〜イヴァーナさん??』


『なんだ?しないのか??』


『いや、あの〜〜目をつむってくれる??』


『なんでだ??』


『そういうもんなの!!』


『変な行為だな。目を閉じたら、愛しいお前の顔が見えないじゃないか』


『!!??』




ギュッ!!





ジャックが突然私の体を抱きしめる。




『どうした??』


『・・・・・ず、ずるい!!』


『ずるはしてないぞ??』


『そうじゃなくて!あぁ〜〜もう!大好きだ!』


『!?』




チュッ!!




ジャックが私の唇に自分のを勢いよくくっつける。



今のは歯が当たって少し痛かった。



そして、すぐに放すと今度はゆっくりともう一度唇をくっつけてくる。




うん、やっぱり温かいな。




その日から、ジャックは私によく触れてくるようになった。


キスはもちろん抱きしめて来たり、あとそばによく来たがった。


私もジャックのそばにいるのは嬉しい。


そして、温もりを実際に肌で感じるのもとても好きだ。


彼が生きて側にいることが、すごく実感できる。





あとこの間、とても不思議なことが起こった。



ジャックが働いている工房の近くをたまたま通ることがあり、その時に彼の姿も見ていこうと思ったら、彼の周りには同世代の女性がたくさんいたのだ。


『グラン』の村でもとても人気者だった彼だから、これは当然だろうと微笑ましくみていたはずなのに。




ズキン!




胸の奥に突然痛みが走った。




『???』




おかしい。


ケガはしてないはずだ。


そのあと、私の存在に気づいたジャックが周りの女子を見向きもしないで、嬉しそうにこちらに来る頃には、もうそんな痛みはなかった。



なんだったんだろうか??




そのことを夜ジャックに話したら、泣きながら『イヴァーナ!!』と抱きしめてきた。


そのあと、キスとやらもたくさんされた。




うーーーん、結局あの痛みはなんだったのか??




『イヴァーナ!大好きだ!!』


『あぁ。私も愛してるよ、ジャック』




チュッ!





『・・・・・・・んっ』




最近、私は少し困っている。



ジャックが前からしてくるこのキスとやらが、ここ最近になってやたらと長いのだ。


しかも、前は温かいとだけしか感じなかったのに、今は何やら体の奥がムズムズするような、苦しいような、温かいを通り越して熱いような、そんな変な感覚に襲われる。


その最中に、ジャックには内緒で目を開けると、真っ赤なそれでいて真剣な顔のジャックが映り、私の人間の心臓がうるさい音を立ててたまらない。



そして、『愛おしい』と彼のことをそう感じる瞬間が増えた。



人間とは、こんなにも色んな感情に日々動かされているんだと、身をもって今は感じている。


しかも、こんなにも自分が心を動かされるのはジャック限定なのだと言うことは、ついこの間思い知らされてしまった。


私は人間そのものを愛しく思っていたはずなのに。





『やぁ!こんにちは、お嬢さん♪』


『・・・・こんにちは』




ん?誰だ??


あぁ、確か街に住むジャックと同じ工房で働く男で、名前はロデオとかいったか。



以前、ジャックの工房に顔を出した時に自己紹介をされたように思う。


年はジャックぐらいの、金髪で青い瞳の割と整った顔をした青年だ。


『グラン』の娘たちがみたら、大騒ぎしそうな感じだな。


明るく元気なジャックとは対照的に、落ち着いた雰囲気で女性に対して優しく、何やらねっとりとした甘い目をしてくる男。





『突然すまない、君は僕のことを覚えてくれているだろうか??』


『ジャックの友人の、ロデオ・・・さんだろう?何か私に用か?』





今日はたまたま街に、お菓子作りで使う果物を買いに来たのだ。


村にも果物は木から取れるが、街の方が種類が豊富で見てるだけでも楽しい。


今私が夢中になってるのが、この果物を使ったお菓子作りだ。


食事と違って、ちょっとした分量の違いで姿や味を変えるそれが面白くて、おいしくできるまで同じものを作りながら日々戦っている。


今日は5度目になる、パイに挑戦しようと思っていた。




『まさか、君に覚えていてもらえるなんて!実は僕も、一目会ったその時から君の事が忘れられなかったんだ!』


『そうか』




そんなに私の印象は強烈だったのだろうか?


服はわりと薄い色を来ているのだが。




『君が好きだ、イヴァーナ!どうか、この僕の想いを受け取ってくれないだろうか?』


『!?』




そう言うとロデオは私の手を引き、抱きしめてきた。




ぞわぞわぞわぞわぞわッ!!!




『は、離せっ!!!』




ドン!!




私は身体中に走った気持ち悪いほどの悪寒に、思わずロデオを突き飛ばした。




『い、いきなり何をする!!』


『す、すまない。だが、俺の気持ちは本物なんだ!』


『私が愛しているのはジャックだ!お前ではない!!』




おかしい。


ジャックに毎日のようにされていることなのに、なぜこうも受ける感覚が違うのか?


ジャックに抱きしめられると、ときおり苦しくなるものの、温かいものと熱いもので心がいっぱいになるのに。




『あ!い、イヴァーナ!!』


『もう2度と私の許しなく、勝手に触るな!』




私はそのまま予定していた果物を買わずして、まっすぐ村の家へと帰った。


帰ってからも何やらイライラして、何をしていても落ち着かない。



おかしい。



私はもっと人間全てに穏やかな気持ちでいられたはずだ。


こんなことぐらいで、気持ちが動かされるなんて!



どうしてしまったんだ、私は?




『・・・・・・・ッ!!』




結局、簡単な野菜のスープだけを作ると、そのあと私はベットの中に潜り込んだ。


こういう時は寝てしまえばいい。


寝るという行為は、身体も心も癒してくれる、神にはなかったことだ。


きっと、人間になってから日々色々なことが起こって疲れてしまったんだ、そうに違いない。






『・・・・・・・・』


『ただいまーー!!イヴァーナ??』





ジャックが帰ってきた。


どうしよう、今はなぜか起き上がるのも面倒だ。




『イヴァーナ〜??あれ?ベットにいるなんて、具合でも悪い??』


『・・・・・・』




ジャックが私のおでこに手を添えて、自分のそれと温度を比べている。



愛しいジャック。



先ほどのロデオとお前と、一体何が違うというのか。




『うーーーん、熱はないみたいだ。今日、何かあった?』




心配そうに、私の顔を覗き込んでくるジャックの大きな緑の瞳が、私をまっすぐに見てくる。




あぁ、愛おしい。




私はジャックの頬に手を添えて、自分から口付けた。




『い、イヴァーナッ?!どうしたの?!』


『すまない。今はお前とこうしていたい』


『・・・・・イヴァーナ』




その後、何があったのかを深くジャックが聞いてくることはなく、私の気がすむまで優しく抱きしめてくれながら、何度も2人で触れるだけのキスをした。


やっぱり私は、こうして触れ合うのはジャックがいい。


いや、ジャックだけだ。


私が触れ合いと心から願うのは、目の前の彼だけ。




『・・・・・ジャック、愛している』


『俺もだよ、イヴァーナ』




その夜、そのままジャックから離れたくないと珍しく駄々をこねた私に、ジャックはとても驚いていた。


だが、今夜はどうしても別々ではなく一緒に寝てほしいと思った。


ロデオの、別の人の温もりが身体に残るのがどうにもこうにも嫌だった。


別にロデオは悪い男ではない。


女には軽く、色んな女性に声をかけているようだが、それだけで別段悪人というほどひどい人間ではない。



私に対しても、ただ抱きしめてきただけだ。




だが、それでもーーーーーーーー。






『ジャック、私はもっとお前と触れ合いたい。お前と離れたくない』


『い、イヴァーナッ!?』


『私はどうしてしまったんだ??お前に触れられ、キスをされ、とても嬉しいのに何かが足りないともっと欲しがる自分がいる』


『!!??』


『他の人に触れられるのは嫌なんだ。お前がいい!お前じゃないと、私はダメなんだ!』


『・・・・・・ッ!!』


『私はおかしい。お前と暮らすようになってから、私はおかしくなってしまった』


『イヴァーナッ!!』




ジャックが私を強く抱きしめる。





『イヴァーナ!おかしくなんて、ない!!おかしくなんてないよ!!』


『・・・・・ジャック?』




ジャックの顔は、なぜかとても嬉しそうだった。




『ごめん、だって俺すごい嬉しいんだ!俺はずっと前から、むしろ子どもの時から同じ気持ちだった。イヴァーナしかダメだって』


『・・・・・・ジャック』





話しながら、ジャックの目からは次から次へと涙がこぼれる。


あぁ、なんてキレイな涙だろう。





『イヴァーナが好きだ!イヴァーナしか俺はいらない!って、ずっと俺はその気持ちだったから、イヴァーナが今同じような気持ちでいてくれるなんて、すごく嬉しい!!』


『・・・・・・』




ポロポロポロポロ




ジャックの涙がこぼれていく。


その涙が床に落ちるのがもったいなくて、私は彼の目に唇を寄せて受け取る。




『イヴァーナ?』




不思議そうに私を見てくる緑の瞳。


私の大好きな自然をぎゅっと凝縮したような、深い緑の愛しい瞳。




その目に映るのが、ずっと私だけならいいのに。




私はそのまま、ジャックにキスをした。




『!!??』




ジャックも私の背中に手を回して、より深く唇を重ねる。



いつからか口の中に彼の舌が入り込んできて、より深いキスを交わすようになったが、彼と深く繋がるようで私はその行為が嫌ではなかった。


今日は自分からも彼の口の中へと入っていく。




ジャックが好きだ。どうしようなく。




『イヴァーナ・・・・・好きだ』




ジャックは私をベットに横たわらせると、真剣な眼差しで見つめてくる。




『私もだ、ジャック』


『ごめん、イヴァーナが好きすぎて、無理をさせたらごめん』


『変ことを言う奴だ。愛しいお前が私にすることで、嫌なことなどあるはずがないだろう?』


『そ、そういうのがダメなの!!俺が俺を抑えられなくなっちゃうじゃん!!』


『なんだ??別に抑える必要はないだろう??』


『い、イヴァーナのバカ!!もう、後で文句言っても知らないからな!!』


『お前、また神に向かってバカと・・・・・んっ!!』




その時のキスは、噛み付くような激しいキスだった。


そしてその後、私はジャックとより深く触れ合い、とうとう結ばれることとなる。





『ジャ、ジャック!!ちょっと待ってくれッ!!』


『待たない!!!どれだけ俺が待ったと思ってんの!!今夜はたっぷりと俺の想いを伝えるから、寝られると思うなよ!!』


『じゃ、ジャックッ!!あっ・・・・!!』





そして、本当に私はこの日朝まで寝られなかった。




あぁーーーー無邪気で可愛い、私の愛おしい子どものジャックはどこへ行ったのか??



魚だ、木の実だと、満面の笑みで見せに来てははしゃいでいた昔のお前が懐かしい。




朝になって心が落ち着くと、私は人間の女性全てに心からの賞賛をおくった。



そしてジャックには終わった後に、散々文句をはいたが、全く聞いてなかった。




『・・・・・・イヴァーナ、愛してる』


『!!!??』




もうどんな文句をついても、とろけるような甘く熱い目と表情で見てきて、見られたこちらの方が恥ずかしい。


でも、幸せそうに笑うジャックの顔を見れるならそれでもいいかと、許してしまう私も大概ジャックには甘すぎる。



『・・・・・・・・』




だが、ジャックよ。


子作りのためでもあるこの行為が、とても大切なことだとはよく分かっている。


お前と触れ合うのが嫌なわけでは決してない。


ただ、ただ・・・・・ジャックよ。




毎日というのはさすがに身体がきついのだ!!




前はキスだけで終われたじゃないか!!


あの時の優しく温かいお前はどこにいった?


あの時の素晴らしい我慢と理性をどこに捨ててきたんだ!?




それでもジャックにキスをされ身体を触れられれば、最後には許してしまう私も私だ。




『ごめん、イヴァーナ。我慢できない』


『・・・・・おい、最近のお前は我慢のがの字もしてないぞ??』


『だって、イヴァーナが可愛すぎるのが悪い!』


『こら、人に責任を押し付けるんじゃない!』


『イヴァーナ・・・・・・大好きだ!!』


『全く、仕方のないやつだな』





どんなジャックでも、愛おしく好きになってしまうのだから私はやっぱりおかしい。


おかしいが、毎日は楽しくとても幸せだ。



願わくば、この幸せが少しでも長く続きますようにーーーーーーーー。









そして、2人でそんな幸せな生活を送っていた1年後。


我が家にとうとう、新しい家族ができた。




前書きもしたように、皆さんにひかれやしないかとヒヤヒヤしながら書きましたが、私自身は本編でまだ書けないラブラブを書けるのは、とても楽しかったです!


そして待望の家族とのハッピーライフ突入です!

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