モブ女子、死亡フラグが立ってしまいました!
いつも読んでいただき、ありがとうございます!!
今回はクローディアのターンです。レオの方と行ったり来たりで、私がわけがわからなくならないように気をつけます!
森を歩く道中、なぜか私はずっと団長と手を繋いでいた。
森の中は岩や盛り上がった木の根などがあって危ないからとの理由からで、私の心はトキメキメモリアルMaxだ!!
「大丈夫か??クローディア」
「は、はいぃぃっ!!!」
しかも、ちょこちょこ振り返っては私に声をかけてくる。
さらには、無理をするんじゃないぞと甘々スマイル&極上ボイス&頭ポンポンまでついてくる、なんて出血死確実の破格な大・大・大サービス!!
何これ何これ何これぇぇぇーーーーー!!!
どこからやってきたのか、トキメキコロシアムぅぅぅーーーーーッ!!
「どうした?クローディア」
「ハァ!ハァ!・・・・あ!いえッ!!なんでも、ないです!!」
「なんでもないって顔じゃないぞ、熱でもあるんじゃないのか??」
コツン
「!!??」
はい!!
おでここっつん入りましたぁぁぁーーーーーー!!!
喜んでーーーーーー!!
ち、近い近い近い近い近い近い近い!!!!
なんなんですかッ?!?!?!
ただいま乙女の夢に、本気で殺されかけてるよ!!!
倒れたらぜひとも責任お願いしま〜〜〜す!!
「よかった。熱はないようだな」
「は・・・・・はひぃぃ」
って、この流れ、何かおかしくないですか?!
だってこのトキメキどんぶり!
盛りすぎ!なんでもあり!!は、私がゲームをしていて妄想していた団長とのときめきタイムそのものじゃない!!!
そうそう、この後は確か顔が近くなった団長と目が合った私に、団長が頬にそっと手を添えて。
「・・・・・クローディア」
って、添えてきたぁぁぁーーーーーーッ!!!
キターーーーーーーーーー!!!!
ま、まさか、まさか!!
この後の妄想通り、私が目を閉じたら、ま、ま、まさかの、まさかの坂のまさか様の!!
キ・・・き・・・キィ・・・・・ッ!!
く、クローディア=シャーロット!!
何億年と2000年前からではありませんが、前世からいつでも覚悟はできております!!!
大佐!!
すでに目も閉じて、準備万端であります!!
さぁ!
さぁっ!!
さあぁぁぁっーーーーーー!!!!
「ほら、髪に葉っぱがついてたぞ!」
「ーーーーーーーー」
って、そこはしないんかぁぁぁーーーーーーいッ!!!!
期待だけ散々させておいて、まさかの華麗過ぎるほどの天然スルーーー!!
どれだけ小悪魔で自由にこちらを振り回すんですかッ!!!
えぇ、そんなあなたも大好きですよッ!!
「ど、どうした?クローディア?突然四つん這いになって、地面をそんなに強く殴り始めて」
「うぅぅ、うぅぅっ!!わかってた!わかってたけど・・・・チキショーーーー!!!」
握りしめた拳を何度も地面に叩きつけて、このどうしようもない葛藤をなんとかしようとしていると、ふと目を開けた先に見覚えのある一輪の黒い花が映る。
「・・・・・・黒い、花?」
何度も目をこすって確認してみるが、それはやっぱり黒い色の花だった。
「クローディア?あぁ、黒い花とは珍しいな。」
森の中に生い茂る、たくさんの草花の中でひときわ異彩を放ちながら、その花はひっそりと咲いていた。
「まさか・・・あれはっ!」
ゲーム中で嫌でも何度も見ることとなった、バラのシルエットによく似たその花の名は、
『デス・ブラック』
ある存在の魔力に反応して、突然変異で生まれてくる花で、ゲームの中ではそのあるボスモンスターがいる場所の目印として、ダンジョンの中ではそのボス戦に入る直前のフロアーの中で、デス・ブラックがたくさん咲き乱れていた。
「・・・・これ、本物のデス・ブラック??
そしたら、この森は!!」
グオォォォォーーーーーーーーッ!!!
その瞬間、激しく強い風とともに何かの咆哮のような叫び声が辺り一帯に響き渡る。
あまりに大きな音と衝撃に、耳がビリビリと痛くなり思わず耳を両手で塞いだ。
「な、なんだこの声はッ!!!!」
「う、嘘でしょッ!?なんでこんなところに、あいつがいるのッ??!!」
ゲームで団長ルートが終盤に進むと、あるイベントで誰もが簡単に先に進めなくなる、大きな大きな壁にぶち当たる。
大きな森の中でデス・ブラックが咲き乱れ、その森の近くに住む街の住人が次々と行方不明になる事件が相次ぎ、とうとう王都の騎士院へ解決してくれるよう依頼が届いた。
その依頼の担当になり、部下を引き連れて原因究明の指揮を取ったのが今目の前にいるジークフリート様。
ローズは心配だからとついていくのだが、ここでルートがいくつかに分かれる。
キーーになるのは、いつものようにジークフリート様との好感度と主人公のステータス。
ローズのステータスが低く、なおかつジークフリート様との好感度が低いと、そもそもこのイベントが起きないか、起きても主人公が一緒についていけない。
この時点で、これ以上ジークフリート様のルートは攻略できなくなる。
そして、ジークフリート様との好感度が規定値を満たしていても、ステータスが低い場合は一緒についてはいけるが、団長が死亡するかもしくはローズが死亡してバットエンド。
この規定値のステータスがかなりやっかいで、レベルを上げればいいってものでもなく、特殊なスキルも身につけてなければクリアとならないため、かなり計画的にローズを鍛えていかないと、誰もがここで苦渋を舐める。
もちろん、私もその1人。
その規定値のステータス&必須スキルは攻略法がかなりの間公開されることはなく、難攻不落の壁として団長ルートの前に立ちはだかっていた。
「・・・・団長、この森はまずいです!!」
「何??この森がどこのものかお前は知ってるのか??」
「たぶん知ってます!だから、今すぐ急いで逃げないと!!」
イベントクリアに必要なスキルもレベルも、ローズでない、だだのモブである私が持ち合わせてるわけがない!!
いつかこのフラグも絶対に折らなければ!!
とは考えていたけど、それはずっと先の話だと思っていたのに!!
なんでこんな急に難易度Maxイベントがスタートしてしまったのッ!!??
「逃げるって、いきなりどうしたんだクローディア!」
「お願いですなら、今は何も聞かないで一緒に逃げてください!!早くしないと、あいつにばれてしまいますッ!!」
「お、おい!クローディア!あいつとはなんなんだッ??!!」
団長の手を引きながら、先ほどのデス・ブラックの場所から離れようと必死に走る。
「ごめんなさい、団長!!今の私じゃあいつには到底勝てません!!」
「??!!」
グオォォォォーーーーーーーーッ!!!!
再び鳴り響く、あいつの咆哮。
身体中にまでビリビリと振動が響いている。
一刻も早くこの場から逃げなければ、このままでは団長の死亡フラグまっしぐらだ!!
「ハァ!ハァッ!!とにかく、今すぐこの森からでないとッ!!」
「無事に森からでたら、ちゃんと訳を話してくれよ!」
「はいっ!!」
助けて下さい!!
神様!仏様!女神様!!
高レベルで特殊スキル持ちの育成済みローズがいない今、あいつと戦えるのは団長のみ。
私は悲しいかな、武器の1つも持ち合わせてなんかいない。
その辺に、ヒノキの棒があるじゃないって??
残念ながらあいつの身体は、他のものよりも強度を誇つ団長の持っている名の知れた名剣ですら、傷を負わせるのが難しいのだ。
奥の手が1つだけ自分にもあるが、それもリスクが高くて今使えるかどうかも分からない。
「クローディア!!森の向こうから明かりが見えてきたぞ!!出口だ!!」
「??!!」
本当だ!!ようやく森の終わりが見えてきた!!
これで、今回はもう大丈夫!!
このフラグは、また後からどうしたら折れるかを考えよう。
その時には、特殊スキルもしっかり習得して準備万端で望むのだ!!
あぁ、差し込む太陽の光が本当に暖かくてキレイ!!
神様ありがとう!!
「やったぁぁぁーーーー!!!森を無事に出られた・・・・・へ?」
目の前に広がるのは、青い空と『花畑』。
何百という花が咲いているだろう、その花の色はーーーーーー全てが、漆黒だった。
「うそ・・・・でしょ??」
「突然立ち止まって、どうかしたのか?クローディ・・・・ッ!!??」
呆然と立ち尽くす私と、目の前の存在に気づいた団長が、すぐさまそんな私をかばうように立ちながら剣を構える。
そう、その漆黒の花畑の中心でゆっくりと佇む、大きな生き物はーーーーーーー。
「・・・・・ブラック、ドラゴン!」
全身を闇色に染め、鋭い目は血のように赤色。
ゲームや映画でしか見たことのない、クローディアも伝説上の中でしか見たことがない、どこか威厳を感じさせる黒く大きな身体のドラゴンが、私たちを厳しい眼差しで見下ろしていた。
その鱗はダイヤモンド以上に硬く、物理的な攻撃はほとんど受けつけないと言われているほどの強固であり、その爪や牙は人間など一瞬で切り裂かれてしまうほどの鋭さを持つ。
『我が眠りをじゃまするのは、お前達か?』
「!!??」
どうしよう!?
私の目の前で、ついに死亡フラグが立ってしまいましたッッ!!!!
私が以前やったゲームの中で、かなり複雑なものがありまして。攻略者だけを追いかけててもダメ。いろんな人と関わりイベント起こし、必要なスキルもゲットしつつ、ステータスアップもしないと攻略できない!って感じで。
一番大好きキャラのエンドを見るのに苦労しました。今思い出しても、すごいゲームだなと思います。




