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モブ女子、迷子になりました!

今日も読んで頂き、ありがとうございます!


懐かしい光景を見ると、似た光景だけでも涙が出そうになります。



チチチチチチッ!




どこからか、小鳥のさえずる声がする。

昔はよくこうして目をつぶって寝転がりながら、歌うように語りかけてくる鳥の声を聞いていたっけ??


そう、俺がまだ騎士になるために王都に行く前、まだ俺が生まれた故郷にいた頃はーーーーーー。




「・・・・・・ん?ここは??」




目を開けると、そこには深い緑の色をした山々の景色がどこまでも続いていた。



「え??」



そして自分の今いる場所は、色とりどりの小さな花が咲き誇る草原。


そこから、山々の間に小さな集落のある1つの村が見える。


田畑を耕す人に、馬や牛の世話をする人。



そうだ。

病弱で寝てばかりいた俺は、中々その手伝いができず、こうして眺めていることが多かった。


少しずつ体が丈夫になり、皆の手伝いができるようになったことがどれだけ嬉しかったことか!


そして、仕事の合間にこうして訪れていた、心地よい風がいつも吹くその場所が、自分はいつもお気に入りだった。




「まさか、ここって・・・ッ!!」




いつも変わらぬ、穏やかな時間が流れるその村の名は『レーシア』。


王都からだいぶ山々に囲まれたのどかな場所にあるこの村は、とても平和で俺は村を離れた今も変わらず大好きだった。


そしてーーーーーーー。




「・・・・・・レーーーオーーー!!」


「!!??」




遠くから、俺の名を叫びながら走ってくるその声と少女のことも、とてもよく知っている。



桃色の肩までの髪に、丸くて大きな目をいつもぱっちり開けて、いつだってここにいる俺を笑顔で迎えに来てくれた人。




「なんで、なんで君がここにいるんだ・・・・ッ??」


「ハァ、ハァ!レオったら、またここにいた!そろそろ、一緒に村に帰ろうよ!」




無邪気に笑いながら、俺の手を握って歩き出す君に、俺はいつもドキドキしてた。


きっと、君はそんなこと思いなんて気にもしてないで、誰にだって同じことをしてるんだろうと分かってはいたけれど。




「レオ??どうしたの?変な顔して」


「・・・・・ううん。なんでもないよ、ローズ」




陽が沈み始め、空がオレンジ色に染まっていく。



柔らかい朱色の光が山々とともに、俺の手を引いて前を歩く、君の優しく笑った横顔を照らして眩しく光る。



「・・・・・・」




泣きたくなるぐらい、懐かしい場所と君。




「うん!!村に帰ろう!ローズ!」


「今日はレオのおばさんが、レオの大好きなものばかり用意してくれくれてるって!」


「本当〜??それは楽しみだなぁ〜〜!」





でも、なんでだろう?


何か、すごく大事なことを忘れている気がするんだ。






※※※※※※※※






「・・・・ん、うん」




瞼の裏側に眩しい光を感じて、目を開けると、そこは青々とした木々がおいしげる見慣れぬ森の中だった。




「ここは・・・・??」




自分は先ほどまで、吹雪が吹き荒れる雪山にいたはずだ。


ならば、この場所は??




「れ、レオ??ボルケーノ??」




先ほどまで一緒にいた、2人の姿もどこにも見えない。




「レオーーー!!ボルケーノーーー!!」




どれだけ声を張り上げても、森の中で声がかき消えていくだけで、返事はない。



「・・・・・ど、どうしよう」



森はどこを見ても似たような風景で、どちらに進んでいいのかもサッパリわからない。


明るい日差しの通った森ならまだしも、暗い雰囲気に包まれたこの森はどこか不気味で、不安だけが胸の中に広がっていく。



「・・・・うぅ、怖いよ。アラサーでも、女子力なくても、怖いものは怖いんだよ〜〜」




バサバサッ!!




「ギャァッ!!!」




音ともに、木々の上の方で鳥が羽ばたいていく。




「・・・・ハァ、ハァ!と、鳥か!!」




フゥゥゥ〜〜〜!!と、緊張とともに強張った体から一気に力を抜く。




だが、次の瞬間ーーーーーー。




ガサガサガサガサッ!!




「ぎ、ギャァァァァーーーーーッ!!!!」




クローディアのすぐ後ろの草むらが大きな音を立てて動き、その音にビックリしたクローディアは大絶叫とともに飛び上がり、地面の上ですっ転ぶ。



「・・・・ひ、ひ、ひいぃぃっ!!!」




助けて!!お父さん!お母さん!!



どうにかしてその場から逃げようとするのだが、腰が抜けたのか、地面に倒れたまま足がガクガクして動けない。



ジークフリート様ァァァーーーーーーーッ!!!





「ーーーーーーーい!大丈夫か!!」


「・・・・・へ??」




低めの声が聞こえ、恐怖のあまりに目をつむっていた目をゆっくり開けると、そこには黒髪で黒い瞳を持った、今まさに心の中で強く思い浮かべていた姿がッ!!




「じ、ジークフリート、様??」


「あぁ!!クローディア、無事で良かった!!」




ジークフリート様は、私の手を掴んで腰を支えながらゆっくり抱き起こしてくれると、安心したように小さく笑う。




「な、なんで!?ジークフリート様が、なんでこんなところに??」


「いや、俺にもわけが分からないんだ。気がついたら、突然こんな見知らぬ村に放り出されてしまっていて。お前の声を向こうで聞いた時は、本当に驚いたんだぞ??」


「・・・・・ッ!!」




ジークフリート様が私の頭をポンポンとたたく。あの夜のように、優しく穏やかな顔をしながら。



「・・・・じ、ジーク、フリート様」



その時、太陽の光が森に差し込みジークフリートと自分に光をあてる。


その光景を見たら不思議と安心して、うっかり泣きそうになってしまった。



「さて、この森から一緒に脱出するか!」



あぁ、この人がそばにいればもう大丈夫。


何があっても、きっと全部うまくいく!



「はいッ!!!」




ジークフリートに手を引かれながら、クローディアは満面の笑みを浮かべながら森の外へ出るべく一緒に歩き出した。



実は赤とんぼは、私の思い出の光景の1つでもあります。


小さい頃に、山の中でススキがたくさん生えていた場所があり、そこに赤トンボが本当にたくさん飛んでいる中で家族と遊んでいる思い出があり。


赤とんぼがたくさん飛んでいるのを見ると、なんどか胸の奥が温かくなります。

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