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赤と白の紡ぐ糸 16

いつも呼んで頂きありがとうございます!


ようやく内容が進み出して来ました。


よろしくお願いします!


その運命の日は、何気ない日常の中で静かにそしてゆっくりと訪れた。











ライラは子どもを産んでからは割と頻繁に感じる、黒い魔女の気配に対し敏感に反応し村近くのあちこちに飛び回りながら警戒の手を緩めなかった。


ラスターは村での仕事によりいっそう励み、村の男達との関係も良好で今では色んな仕事を任されている。


アスターはラスターとともに村の仕事を取り組みながら、そちらよりもライラとラスターの赤ん坊であるシャインの面倒を見ることに己の生きがいがあるかのように、誰よりも愛し慈しんだ。


おかげでシャインが言うことを聞くのが、ライラでもラスターでもなく、このアスターであることにライラは少しどころかかなりおもしろくないのだが、面倒を見てくれることは大変ありがたいので文句はある程度我慢している。


そう、ある程度。


アプリコットは森の奥地にあった自分の小屋で住みながらも、時折ライラ達は大丈夫かと様子を伺いに来ていた。


その時には、数年前に親に捨てられ森でさまよい歩いていたところをアプリコットが拾ったという幼い子どもも一緒に来る。


年齢はようやく4歳になったシャインのより少し上くらい。


親から捨てられたとのことでアプリコットと出会った当初は、身体はかなり貧弱に痩せ細り室内に閉じこもっていたのかその肌は青白く言葉をほとんど発しなかったという。


今は、相変わらず身体は細身だが青白かった顔色もいくらかマシになり、親代わりのアプリコットと同世代のシャインには自分から話すようになった。


ライラには近づこうとすらしない。


時期が時期なだけに最初こそ黒い魔女に繋がるのではないかと警戒し、その少年ーーー名はナハトをかなり念入りに調べたがそもそも彼からは全く魔力を感じず、それよりも近隣に感じる黒い魔女の息がかかった魔物達の退治の方が急を要した。


普段ならおとなしい魔物も、黒い魔女の魔力の影響で意識が暴走し自力では収まらない為ライラがある程度その動きを弱めて封じるか殺してしまうことでしか救えない。


そんな魔物が次から次へと後を絶たずに現れる為、ライラの気は休まるどころかより心がざわついて仕方がなかった。



『パパ、にいに、ママは〜?』


『ママなら今日も朝早くから出かけてるよ。今日はパパもにいにもお仕事でこれから家を出るから、シャインはアプリコットさんと一緒にいい子で待っていてくれないか?』


『ナハトは?ナハトもくる?』


『そうだったな。うん、ナハトも一緒に来るよ』


『わかった。ぼく、ナハトといいこでまってる』


『安心しろ、シャイン!!仕事をすぐに終わらせて俺が戻ってきてやるからな!!』


『うん、ありがと!にいに、だいすき!』


『くそぉぉーーー!!!なんで俺まで行かなきゃならないんだ!そうだ、兄貴が俺の分まで働いてくれ!そうしたらその分俺はシャインと一緒にいられる!!』


『何バカなことを言ってるんだよ。今日はお前も必ず来るようにって、何度も言われたじゃないか』


『あんな奴らの言うことなんか知るもんか!俺にはシャインの方が大切だ!』


『それはぼくもだけど、ちゃんと働かないとまたシャインにはしばらく合わせないって魔女様に出禁にされるぞ?』


『!!??』



少し前に、シャイン可愛さに側から離れたくないと仕事をラスターに押しつけシャインの側に毎日べったりしていたところ、それがライラにバレて1週間シャインに全く会えず触れられずその姿を遠目から見ることも許させず、のまさに地獄の日々を送った。


その日々を思い出すだけでアスターの目の前が真っ暗になり、両目からは涙がにじみ出る。



『にいに、だいじょぶ?』


『しゃ、シャイン!』



そんなアスターの前に、天使の笑顔をしたシャインが顔を覗き込みアスターの顔をその小さな手でそっと触れた。



『にいに、がんばれ!』


『うぅ・・・・シャイン!すぐに、すぐにお前のところに帰って来るからな!!』


『うん!ぼく、いいこでまってる!』


『!!??』



その後、愛らしい天使を離すまいとしっかりと抱きしめたアスターをなんとか引き離して、ラスターがアスターを引きずるような形で2人は仕事へとようやく出かけていった。



『全く、毎朝毎朝懲りずによくやるのう〜』


『ばぁば!』


『・・・・・シャイン』


『ナハト!』



だいぶ前から家の前にはいたのだが、毎朝の恒例儀式を終えるまではとすぐ近くで待機していたアプリコットとナハトがシャインの前に姿を現わす。


アプリコットとはシャインが生まれた時からの付き合いともあって、血の繋がりが無くともシャインにとっては家族同然の存在だ。



『さて、今日もばぁばの薬草摘みを手伝ってくれるかの?』


『うん!ぼく、いっぱいあつめる!!』



医者であるアプリコットの主な仕事は、村人のケガや病気に効く薬を作るための様々効能を持つ薬草を集めて煎じ調合すること。


その薬草集めを手伝うのが、シャインとナハトの『お手伝い』だ。



『ナハト、これあってる?』


『・・・・・うん。それ、いいやつ』


『よかった!』



森の中には薬草によく似た毒草も生えている為、その見極めがとても大切である。


子どもは新しい知識を吸収するのが大人よりも早い。

特にこのナハトはアプリコットが教えたことはすぐに覚え、薬草摘みどころかその調合さえ代わりにできるレベルまでになっていた。


あまり自分からは話さないおとなしい子ではあるが、よく気がつく頭のいいこれからが楽しみな子だ。



『・・・・・・シャイン、これ』


『なにこれ?すごい、きれい!!』



アプリコットが振り返ると、何やら小さな赤い石を拾ったナハトがそれをシャインに見せている。


シャインは村の子どもとはほとんど遊べず寂しい気持ちもあるだろうが、その分ナハトと遊べることが何より嬉しいのだろう。


『ナハト、シャイン!集めた薬草を納屋に置いてくるから、少しだけそこで待っていておくれ!』


いつものように、平たいざるいっぱいに集めた薬草を一度置きに移動する。



『・・・・・シャイン』


『なぁに、ナハト?ねぇ、これどこにあるの?ぼくもほしい〜〜ママよろこぶ!』



ママはあまり家にいない。


ママの仕事が忙しいからってパパとにいには言うけど、ぼくはもっとママともっと一緒にいたい。


パパもにいにも、ばぁばもナハトも大好きだけど、きれいなママが一番好き。



『・・・・・いっしょに、とおくにいかない?』


『とおく?とおくはダメ。ひとりでとおくにいったらダメって、ママとのやくそく』


『・・・・・ひとりじゃない。ナハトもいる。このいしのおおきいのが、すこしだけとおくにある』


『!?』



前にママに何か欲しいモノはないのかと聞いたら、それならキレイな花や石でじゅうぶんよと話していた。


キレイな花をこの間プレゼントしたら、ママは言葉には多くしなかったけどすごく喜んでくれて、あの時のママの笑顔をもう一度見たい。



『ナハト、ほんとにすこしだけ?』


『うん・・・・・すこしだけ』



こくん、と小さくナハトが頷いた。



『それなら、いっしょにいく!』



シャインの頭に、優しく笑う母・ライラの顔が浮かびシャインの顔もニッコリと綻ぶ。


その後、アプリコットに『とおく』へ移動したことがバレたら行けないと、ナハトが木でできた人形をポケットから出してきた。



『ぼくらのかわり』


『これが?』


『そう・・・・まえに、ばばさまがやってるのをみた』



木彫りの人形に自身の血をほんの少し染み込ませある魔法をかけると、短時間ではあるがまるで本人がそこにいるかのような幻を作り出すことができる。



『すごい!ぼくとナハトだ!』



以前、それを悪そうな男たちが訪ねて来た時に使ってごまかしていたその魔法をナハトは影から見て覚えていた。



『シャイン・・・・この奥だよ』


『なぁに?このきのあな』



森の中にできた小さな木でできたトンネルをくぐっていくと、木ではない土でできたトンネルに繋がり全く違う場所にたどり着く。



『さて、もうひとがんばりかのぉ〜。ナハトとシャインも・・・・うむ、あの2人もがんばっておるな』



アプリコットが集めた薬草を納屋に置いて戻ると、2人は変わらず森の中で楽しそうに話しながら薬草を摘んでいた。










その頃、ラスターに引きづられてしぶしぶ仕事に駆り出されたアスターは、何やら胸騒ぎがした為仕事をこっそり放棄して逃げ出していた。



『おい、アスターはどうした?』


『す、すみません!すぐに連れ戻して来ます!』



行き先は分かっているから、すぐに後を追いかければそんなに時間はかからないだろう。



『それはだめだ!』


『え?』



気づけば、数人しかいなかったはずの村人の男たちが大勢ラスターを取り囲んでいた。



『な、何かあったんですか?』



最近は、皆を怒らせるようなドジはやらかしていないはずだ。



『まだ、何もないさ。まだ・・・・な』


『!!??』



怪しい笑みを浮かべた村の男たちがラスターにジリジリと近づき、ラスターは普段とは様子の違う雰囲気を感じ取りながら唾を飲み込む。


何かが、いつもと違った。


孫バカはよくありますが、おじやおばバカもよくあるのだと自身と友人を含めて感じてます。


自分の身内というだけで、なんであんなに可愛らしく見えるのか。

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