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赤と白の紡ぐ糸8

今回も読んで頂き、ありがとうございます!


アップが遅くなりました!


ストーリーが遅い進みなのが、申し訳ないです。


アスターが再び目を覚ました時、その視界は紅色に染まっていた。



深く、そして鮮やかな赤い色彩が自分の脳裏を埋め尽くす。




「・・・・・・・ま、じょ?」




辛うじて喉から発せられた自分の声は、ひどく掠れていた。


赤い豊かな髪が揺れ、自分を包み込んでいた赤色の存在が側から離れる。




「ラスターの魔力と気配が突然掴めなくなったわ。何があったのか今すぐ私に教えなさい」



「!?!?」




兄貴の居場所が赤い魔女にも分からない?



まさか、あの化け物にもうその命を奪われてしまったというのか?




「あに・・・・・・き、兄貴がっ!!!」




アスターは涙を次々に流しながら、何の躊躇いもなく赤い魔女へ縋るようにしてその両腕を掴んだ。




「助けてくれ!!俺はどうなってもいいっ!!だから、今すぐ兄貴と俺を入れ替えてくれっ!!早くしないと兄貴がっ!!兄貴がっ!!!」



死んでもおかしくなかったほど傷つけられたアスターの体の全身の傷は、すでに赤い魔女によって癒され痛みは少しもない。


だが、その分今それと同じかそれ以上の傷をラスターが受けているかも知れないと思うと、心が張り裂けそうなほどに悲鳴をあげていた。



「俺は神には祈らないし頼まないっ!!!あいつを助けられるのは神じゃなくて力のあるお前だけだっ!!!俺の命をお前にくれてやるっ!!だから今すぐあいつを、ラスターを助けてくれっ!!!」




「・・・・・・・・冗談はよしてちょうだい」




「!?!?」




「お前みたいな、蟻のように弱く小さき者の命など頼まれたって願い下げよ」




「なっ!?」




涙に濡れてきたアスターの顔が、一気に怒りのものへと変わる。


今にも噛みつきそうな様子のアスターを、楽しそうに上から覗き込みながら赤い魔女はその両手を彼の頬に当てて包み込む。




「それよりも、お前の記憶を頂くわ。私にお前の見たものを見せて」



「!?!?」




赤い魔女、ライラとアスターの額がそっと触れ合う。



アスターの眼差しの先にはライラの紅き瞳があり、そこから目線が離せない。



まるで口づけするかのような、互いの息遣いを肌に感じる程あまりに近い距離感の中で、アスターの心臓は大きく高鳴った。






まるで、全身が心臓になったかのようだった。




それは耳ではなく、頭の奥で強く鳴り響く。





「・・・・・・・・ッ!?」





なんなんだ、これは?



こんな感情、俺は知らない。





同時に、全身を流れる血が沸騰したかのような熱さを感じた。



その時、ライラの頭の中にはアスターが見た化け物が映っていた。



元々はただの人間にすぎなかったものが、その魂ごと歪められ体に彼の器以上の魔力が無理やり押し込められている。



その為に、彼の人としての心は今にも壊れかかっていた。





誰がこんな悪趣味なことを・・・・・?




いや、いるわね。こんなことをしそうな頭の狂った最悪なやつが1人。





愉しそう、面白そう。




そんな感情を味わい得る為に、他の存在がどうなろうと何の痛みも葛藤も感じない、悦びと快楽を得る為に他者を絶望へと導き突き落とす。



魔に落ちたこの人間の男も、己の中に蠢めく欲に目をつけられ闇へと落とされたのだ。



誰もが一生に一度は胸に抱くはずの、奥底に閉じ込めたままで膨れ上がった暗く深い欲や狂気を引きずり出され。



本来なら表に出ずに済んだかもしれない、狂気をその心の中心に宿らされて。





「・・・・・・・・・いた!!」





ラスターではなく、化け物と化した男の魔力を辿った先にそれは見つかった。



懇切丁寧に編み込まれた、それは強固な闇の中にその魔力が微かに感じられている。



こんな何層もの結界が複雑に折り重なった凶悪な闇の封印など、並の魔法使いでは側に近寄るだけでその魔力と命を吸い取られてしまうだろう。



だが、曲がりなりにも魔女と呼ばれた自分ならばこれは解ける。




いや、これは恐らく『私』に張られた罠かもしれない。




ほんの少しだけ綻びのあるところから漏れ出ている化け物の魔力は、わざと私がそこに気づけるようにあえて弱くしてあるのだ。




こっちへおいで、と。





歪んだ笑みに浮かべられた唇が、こちらに妖しく笑いかける姿が脳裏に浮かぶ。





上等じゃないの。




「!?」




その瞬間、ライラの姿がアスターの前から消え空間を跳ぶ。





お前もろとも、目障りなその魔力全てを燃やし尽くしてあげるわ。




罠とわかりつつ、ライラは黒い魔女の張った蜘蛛の巣の中へとあえて飛び込んでいった。


恋とはするものではなく落ちるものだというのは有名ですが、この言葉を思いついた人は本当に凄いなと。


したくてするものでもなく、どれだけ抗おうとも勝手に落ちているのが恋なんですよね。

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