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モブ女子、大地から蘇る命

今回も読んで頂き、ありがとうございます!


番外編からようやく本編に戻りますが、色々久しぶりなキャラもいて作者なのに戸惑いました。





本当に大切な人の命と、その他大勢の人達とこの世界の命。


もしどちらかしか選べないとしたら。






あなたなら、どちらを選びますか?
















クローディア達が順調に村人達からのクエストをこなしていた頃、アルカンダル王国の城門には全身が傷と血に塗れ今にも倒れてしまいそうな兵士が、なんとかその意識を保ちながらたどり着いていた。



「お、お前は国境警備のっ!?」


「い、一体何があったのだっ!!」




あまりの惨状に、城門を警備していた兵士達が慌てて彼の側へと駆け寄る。



「・・・・・・・っ」



見知った仲間の姿をその視界に見つけると、緊張感が解かれたのか足元から地面へと一気に崩れ落ち、仰向けに倒れそうになるところを兵士2人に支えられるものの、その息はすでに虫の息であった。



「・・・・・・・・王に!い・・・・・で、伝れ・・・・を!」



そのすぐ後、大量の血をその場で吐いた国境の警備兵士な城まで自分の身が保たないことを察し、自分の身体を支える兵士に最後の命を振り絞って全てを託し、その腕の中で静かに息を引き取る。




「そ、そんなっ!!」


「大勢の魔物がこちらへ向かってきているだとっ!?くそっ!!急ぎこのことを王へ知らせなくてはっ!!」




城門の兵士の1人が、同志の命懸けの伝令を伝える為に城へと駆けていく。





敵は、もうすぐそこまで来ていた。

















アヴァロニア城にてーーーーーーーーー。




「な、なんとっ!!それは誠かっ!!!」



玉座に座していたアレキサンダー王は目の前で膝をついている兵士の口から放たれた、あまりの出来事に思わず勢いよく前のめりに立ち上がる。



「はっ!我が国にその事を伝えにきた兵士は、国境が魔物に襲われてすぐ伝令の為その場を離れた為になんとか逃げおおせたようですが、途中で受けた傷が思った以上に深手だった為、そのことを我らに伝えて息を引き取りましてございます!」



「・・・・・・・・なんという、なんということだっ!!」



アルカンダル王国の国境を越えた先には魔の者が多く棲みつき徘徊している、荒れ果てた地『龍の墓場』がある。


古の龍の骨が風で晒されているその大地はどこまでも乾いた砂漠で、植物はほとんど生えておらず生き物が暮らしていくには過酷な場所な為人が立ち入ることはまずなく、気づけば危険な魔物達の巣と化していた。


その入り口は何代も前のアルカンダル王が大勢の魔法使いとともに入り口を封印し、その国境が越えられることは滅多に起こらないはずだった。


少なくともその封印を解けるのは、聖なる力を持つ『選ばれし者』だけと言われていたのだ。



「騎士院の長であるジークフリートと、魔法院の長であるルーク=サクリファイスの行方が知れず、頼みの綱であるクローディア殿もこの地にいない時に、まさかこんなことが起こるとは・・・・・・・!!」




クローディアの居場所だけは分かっている為すでにそちらへ使者を出しているが、それでも戻ってくるまでにどれだけの時間がかかることか。



他国へ力を借りるにしても、あまりにその事実に気づくのが遅すぎた。


城門を守っていた兵士達の目に間違えがなければ、遠い地にいるはずの魔物達は魔力を使用しているのか、すでにこの国の近くまでその足を伸ばしてきているという。



それならば、この国を守る王としてアレキサンダーがすることはただ1つだ。




「・・・・・・・・・聞けっ!!!!」


「!!??」



アレキサンダー王は、自らの腰にさしていたそれは立派な装飾に縁取られた銀の大剣を天井高く振り上げる。




「城の兵士、城下の騎士、そして魔法院にいる魔導師に我が言葉を伝えよっ!!決して魔物どもをこのアルカンダルの大切な民が暮らす地に、一歩でもその足を入れさせてはならぬっ!我が国は、我が国の者達全員で力を合わせ、必ずや守りきるのじゃっ!決して、闇の者にただ1つとしてかけがえのない命を奪わせてはならぬっ!!!!」




「ははぁぁーーーーーーー!!!」




普段は温厚で決して怒鳴ったりなどしない優しい王の怒号に、その場にいた兵士・家来達が一斉にその膝を折って頭を伏せる。



「わしも行くぞ、マーサ!!大事な民の危機に、王が安全な場所でその身を守ってるわけにはいかぬっ!!」



「・・・・はい。どうか、お気をつけて」



「うむ!!」



心配げな瞳を一瞬見せながら、それでもマーサはいつも以上に強いく柔らかな眼差しで愛する夫である王を見つめた。


出会った頃から目の前の男は国の為にと、皆が止めるのも聞かないで敵地へと乗り込んでいく勇気ある青年で、若い頃の彼を見ていた臣下達はそれはそれは心臓をいつもヒヤヒヤさせていた。



そして、そんな彼だからこそ自分の一生をかけて支えていこうと決めたのだ。





「・・・・・・・・・へ、陛下ぁぁぁーーーーーーっ!!!!!」



「今度は何じゃっ!!!」



覚悟を決め『王者の剣』を手にしたアレキサンダー王の元に、息を切らしながら1人の兵士が駆け込んでくる。



「わ、我が国の城壁がっ!!も、も、燃えていますっ!!!」



「な、な、なんじゃとぉぉぉーーーーーーーーッ!!!!!」




アレキサンダーが急ぎ城の外が見える窓際へと出ると、兵士の言う通り城壁がその周りを取り囲むようにして炎に包まれていた。


壁際だけでなく、そこからさらに燃え上がった炎は遙か上空にまで勢いを伸ばし、アルカンダル王国全てを覆い隠していく。


当然ながら城下町の民達は皆、突然空を覆った炎に驚き恐怖し建物の中へと急ぎ避難していた。



「・・・・・・・・こ、これはっ!?」



その炎はアルカンダル王国を覆うだけで、中にある城下町には決して燃え広がることはなく、まるで外から襲い来る魔物から守るようにして激しく燃え盛っている。




「まさか、クローディア殿か?」




彼女を守護するボルケーノ様のものだろうか?


ふと、そんな思考が頭をよぎるが、すぐにそれは別の者によるものだということが分かる。



「へ、陛下っ!!!そ、そ、空に赤い髪の女がっ!!!!」



「何ぃぃぃっ!?!?」



兵士の1人が、上空のある一点を見つめて大きく叫ぶ。


炎越しに見えるせいなのでは?と思ったが、確かにそこにいる女性の長い髪は深紅に彩られ、彼女の全身を包み込む紅蓮のローブを纏ったその姿はまさに炎の化身のようだった。



「あれは・・・・・まさか、赤い魔女様か?」



その名を持った者はここ数十年の間誰1人として目撃した者はおらず、消息不明となっており名前だけが知れ渡っている存在だった。


だが、姿こそは見てないものの、少し前のジークフリート達による白い魔女の封印には、彼女の力を借りていたのだと、アレキサンダー王だけはその事を聞き彼女の存在が確かにある事を知っている。



「ま、魔女っ!?ま、まさか、魔女が魔物に手を貸しているのですかっ!?!?」



「いや・・・・・違う。あの方は我らを、いやこの国を守ってくれておるのだ」



「!!??」



その証拠に、空から我が国を襲おうとした魔物は、国を包み込んでいる炎に触れた瞬間に全身が激しい炎に焼かれ、断末魔の悲鳴をあげながらあっという間に息絶えたーーーーーーーーー。












「あらまぁ、ずいぶんと大勢でわざわざ遠くからお出ましになったこと♪」



深紅の髪と瞳を持った美しい女性が目の前の何百と集まっている魔物達を前に、その鮮やかな赤い唇をペロリと舐める。



「せっかくこんなところまでご足労頂いて悪いけれど・・・・・・今すぐ冥土に、お帰りなさいな♪」



ゆっくりと、艶やかな笑みと仕草で両手を横に広げると、女性の手からは新たな炎が生まれその炎の球体が次々と魔物達に襲いかかった。


その炎は魔物達の体に触れた瞬間に大きな爆発を起こし、次々とその命を奪っていく。



「フフフ・・・・・・愛しいあの人とあの子が生まれ育ったこの国を、あの子がいないからといっお前達に傷つけさせるわけにはいかないわ」



その口元は柔らかな微笑みを浮かべつつ、紅い瞳はまっすぐな眼差しで魔物達を射抜き、次々とその紅色の爪をした手からは激しい炎がさらに生まれては襲いかかり、ただの一匹ですらアルカンダル王国にその足をふみ入ることができない。


そしてあっという間に、空と大地に何百といたはずの魔物達は全員黒焦げに燃やされ大地に倒れていく。




「どれだけ数多くの魔物にこの地を襲わせようと、赤い魔女であるこの私が守護している限り、思い通りにはさせないわ・・・・・・黒い魔女っ!!」



『赤い魔女』ライラは、横に広げていた両手を今度は正面に構えると、とびきり大きな炎の球をある空間に向けて放つ。



何の姿も見られなかったはずのその空間にライラの炎がぶつかると、その途端に大きな爆発を起こし、激しく燃え盛る爆発の中からは黒き闇の塊が現れた。



『・・・・・・な〜〜〜んだ、バレてたのか。つまんない』



「!!??」



闇の塊は次第に人の形をかたどり、黒髪に黒い瞳、そして黒き衣をその身に纏った姿へと変形していく。


しかし髪の毛からわずかに肌の色が垣間見えるものの、黒き衣を顔深くまで身につけたその姿はやはり闇そのものと変わらない。


目の前にあるその赤き目が、自分に心地いいほどの憎しみの念を込めていることに気がつくと、それは愉しそうな笑みを浮かべた。



『こんにちは、ライラ。君とこうして対峙するのは、何年ぶりだろう?相変わらず君の鋭すぎる殺気は・・・・・ぞくぞくするほど心地いい』



「そうね。あなたとな久しぶりの逢瀬だけれど、すぐにまたさよならになるわ」



『!?』



うっとりと顔をわずかに赤らめる黒い魔女に向けて、ライラの両手から発せられた蛇とドラゴンを合わせたような形をした激しい炎が襲いかかる。



『・・・・・久しぶりの逢瀬もゆっくり楽しめないなんて、残念だなぁ』



だがその炎は、同じ形をしたさらに大きな闇の炎によって包み込まれ、あっという間に掻き消されてしまった。



『嫌だな〜〜あんな雑魚モンスターはただのご挨拶だよ?』



「!?」



黒い魔女の瞳が狂気に光を放ち、唇がにいぃ〜〜っとどこまでも横に広げられた途端、アルカンダル王国の城壁の周りの大地からはボコボコと音をたてながら死人が何十と現れる。



「・・・・・・・はぁ。嫌だわ。また数で勝負なの?黒い魔女は同じことしかできないのかしら?いくら大勢の魔のものを差し向けようと、私の炎で焼けないものはないわよ?」



『へぇ〜〜〜〜なら、これも君には焼けるのかな?』



「なんですって?」




黒い魔女が両手を下に向け、黒い光が2つ大地に向かって放たれると、そこから再び死人が2つ蘇る。



『さぁ、これが君へとプレゼントだ!喜んでくれるといいなぁ〜〜〜〜♪』



「・・・・・・・・・・どう、して」



赤い魔女の動揺に揺らめく紅き瞳には、2人の死人がゆっくりと近づく。



1人は白き髪と褐色の肌をもった若き青年。



そして、もう1人は赤き髪と褐色の肌をもった幼き少年。






「・・・・・・・ラス、ター?シャ、イン?」




消えいりそうなほどの小さい声で放たれたその名は、今ではララという名でアルカンダル王国で暮らしていた赤い魔女、ライラがかつてその手で命を奪った愛しい夫と子どもの名だった。


これから先のイメージが漠然とだけだったんですが、具体的にイメージができた為ようやく続きが書けました。


でも、また書きながら色々変更も出てくるんだろうなと、生きたキャラクター達のこれからの動向を楽しみにしています♪

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