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オマケ外伝、学園モブ女子7

遅くなって申し訳ないです。今回も読んで頂きありがとうございます!


あまり登場できていないアルフレドを書こうと思ったら、いきいき動いてしまい今回も追われてません。本編でも生き生きさせてあげたいです。


午前中の授業が終わって食堂にてエリザベスやレオ達と遠くに座るジークフリート様を眺め、じゃなくて見守りつつそれは楽しく食事を終え、次の授業の為に自分のクラスへと少し早めに戻ると、私の席に違う生徒が座っていた。


確か、クラスの中でもわりかしおとなしい細身でガリ勉タイプの男の子だ。


瓶底メガネをかけており、それを取ったらまさかの(いや王道の)美少年キャラになるのか?と密かに勘ぐっていた相手である。



「あの〜、そこ私の席なんですが?」



「・・・・・い、いや!こ、ここは!ま、間違いなく、ぼ、僕の席です!!」




先ほどまで手元に持っていた分厚い本を真剣に読んでいたメガネくんは、声をかけたとたんとても分かりやすくひどく焦った様子で振り返った。



「いやいや、さっきまでそこに座ってたんですけど?」



その席をまさかこの私が間違えるはずがない。


なぜなら、この席の上の上には愛しのジークフリート様の席があるのだ。


真上でないことが大変悔やまれるが、それでもこの上にはあの人がいて空間が繋がっていると思えばそれだけで心は十分喜びで満たされる!!




2階の部屋の空間とそこに座る生徒なんて障害ではない!!


まさか真面目に?人助けと任務をしている間に、席替えが行われたとでもいうのか?


けれど、周りを見れば他の生徒はいつもと同じ席順で座っている。



「い、いいえ!!きょ、今日からこの席は僕のものになったんです!!あ、あなたがどんな手を使おうと、こ、この席だけは譲れませんっ!!」


「!?」



メガネくんはガバッ!っと広げた両手で机に仰向けに倒れると、上半身全部で机から離れまいと必死でしがみついている。




「な、なんでそこまで?・・・・・ん?」



だが、そのあまりの勢いの為に彼の懐から一枚の写真がひらひらとこぼれ落ちた。



「あ、あぁっ!!!そ、それはぁ!?!」


「!?」



思わず拾おうとしたクローディアの手をものすごい速さで打ち払い、メガネくんはその写真を奪い取るとすぐさま懐へと隠し入れる。


ほんの一瞬しか写真の中身が見れなかったものの、その姿はよぉ〜〜〜〜く知っていた。


しかも知っている姿よりもずいぶん幼い気がしたが、彼女の生まれ持った美しさと気品は当時から何ら変わっていない。



「どういうことかな〜〜〜〜〜?」


「ひ、ひいぃぃっ!!」



ニッコリと満面の笑みを浮かべながら、真っ青に青ざめて震えあがるメガネくんの肩をポンポンとたたく。



「それ、公式のファンクラブから出された品物じゃないよね〜〜〜〜〜??」


「!?!?」



写真にうつっていたのは、一応公式扱いとなっているファンクラブすらも発足している校内ナンバー1マドンナであり、高嶺の花として陰からの信者が王勢いるお嬢様こと、エリザベスの恐らくは小学生頃。


青い薔薇模様がついた品のあるキレイな水色のドレスに身を包んだ、幼くも凛とした眼差しの美少女がそこにはいた。



「ど〜こでそんな羨ま・・・・・じゃなくて、激レア写真を手に入れたのかな〜〜〜〜?」



自称でないと信じてる!親友ポジの私ですら、そんな可愛い写真見せてもらったことないのに!!



「く、くるし・・・・!!い、息が!!」



「エリザベスの写真がそんなに欲しいか!庶民の女っ!!」



「!?!?」



メガネくんの襟元に掴みかかっていたその時、クローディアの耳に入ってきたのは声質だけは最高ランクの青年。


その持ち主は、腰に手を当てながらそれは偉そうな態度でクローディアの近くへと歩いてくる。




「・・・・・アルフレド。そうか、あんたか!」



アルフレドとエリザベスは、いわゆる親同士が決めた許嫁とやらで幼い頃から顔なじみなのだ。



なるほど。


幼い頃から一応数度かの親交?があった彼ならあの写真を持っていてもおかしくはない。


だが、クラスメイトのほとんどを庶民と自分は違う!俺の側に来るな寄るな!関わるな!と距離を自らおいていた彼が、わざわざこれまでいっさい接触がなかったであろうメガネくんにエリザベスの写真をなぜあげたのか?



「ふん!!喜べっ!お前の席は今日この時から、この俺の隣だ!!」



「は?」





バンっ!!




と大きな音を立ててアルフレドが手をついたのは、休みがちだったアルフレドの隣の席であり元々はメガネくんの席である。


つまりはエリザベスの写真と交換で、私の席は勝手な取引の末に変えられてしまったらしい。




「・・・・・・え、なんで?」



「な、なんでだと?お前は今日から、俺のボディーガードにしてやるからだ!」



「!?」




パチン!と、アルフレドが片手を上げて指を鳴らしたその時、クローディアの両目がくわっとこれ以上はないくらいに開眼する。




「何だその中途ハンパな指ぱっちんはぁぁぁーーーーーー!!!帝王やるんなら完コピでやんなさいよっ!!!!」



「・・・・・・・・・え?」




後ろに控えさせていた部下のバーチから、クローディアの眼前に、かの福○諭吉×何百枚が敷き詰められた黒のアタッシュケースを開かせる予定だったのだが。



鬼気迫る表情のクローディアから、なぜか指ぱっちんする際のポーズについてスパルタ指導が始まる。



「鳴らす指はもっと高く!!指先までしっかり意識して!!腰は反りすぎないっ!!」



「こ、こうか?」



「あと全体的にもっとこう、ぐわ〜っと来るようなカリスマ感出して!!偉そうに!!でも、それが自然と全身からにじみ出るように!!目線はもっと鋭く!!周りをこれでもかと見下すかのように!!でも目線は下に下がらないっ!!違う!!相手を下げるんじゃなくて、自分がスカ○ツリーに上がる気持ちでっ!!」



「?!?!」





アルフレドの あたまは こんらんした!





「そうじゃないっ!!その辺のチンピラ風じゃなくて、あんたは帝王!!王の中の王!!例えストーリーの中ではぽっとでのラスボスでも、ボスはボス!!ただの金持ちじゃなくて、オーギュスト財閥の御曹司!!うん、ステータスだけなら近しいものがあるから大丈夫!!そう!もっと気持ちは踏ん反り返るけど顎は引いてっ!!」



「あ、あぁ?」



「それ!!やるならもっと傲慢風に!!」



「ご・・・・・・傲慢?」




気づけば、周りにいた生徒達も何か楽しそうだと周りに集まってきていた。


普段は近寄りがたい財閥の御曹司でトゲトゲした人を寄せ付けない雰囲気のアルフレドが、クローディアの気迫に押されて戸惑いながらも格好良くポーズを取る姿に、クラスの女子生徒達も黄色い声を上げ始める。



なぜなら、彼は顔も体もイケメンだからだ。




「うん、やっぱり胸元のネクタイは緩めよう!ボタンも少し外した方がいいかな?」



「ちょっ!な、何を・・・・・!?」



優等生のごとくきっちり閉められていたシャツの首元をいきなりつかまれ緩められて真っ赤になって慌てるが、クローディアは全く気にせず腕のシャツもサクサクと捲り上げて見た目をどんどん仕上げていく。



「見た目は品ある高潔俺様ワイルドっ!!色気もあればなおよしっ!!はい!!そこのテーブルの上に足乗せてっ!!!!」



「???」




近くの机を高く重ねていき、その上に訳も分からず立たされる。


これ、本当に危険なので良い子は絶対に真似しないように!!





「よっしゃっ!!女子達の黄色い声援・・・・・カモンっ!!!」



「「 キャァァァーーーーーーッ!!♡♡♡」」



「!?!?」




その瞬間、面白がって参加し始めた女子一同が一斉に声を上げる。





アルフレドは ますます こんらんした!




「はい!!ここでクラス中の生徒に偉そうに、かつ絶対王者の逆らえない目力200%の流し目&前髪かきあげキラキラMAXでよろしくっ!!!」




「ーーーーーーッ!!」




自分に起きている事態がよく分からないまま、クローディアに言われるままにクラスメイトへと黄金の髪を後ろへかきあげつつ視線を送ると女子生徒だけでなく、男子生徒の一部までもが顔をさっと赤らめた。



一応、国宝級の美形はだてではない。




「よしっ!!そのまま流れるように片手を天井に振り上げるっ!!!」



「ッ!!」



「ここで花びら隊、用意っ!!!」



なぜそこにそれがあるのか、男子生徒の何人かが手元のかごから赤い薔薇の花びらに模した紙吹雪を下から舞いあげる為にアルフレドのそばで控える。


ネタをバラせば、演劇部員が舞台で使う小道具だ。



「照明、用意っ!!!」



「・・・・・・・・・ッ」





そしていつの間にか部屋の電気は消され、カーテンを閉められて薄暗くなった部屋は生徒が30人近くいるとは思えないほど沈黙を一気に作った。









パチンッ!!!!!








指の音とともにアルフレドの頭上を照らす真ん中の照明だけがつけられ、そのライトの下では皇帝?アルフレドが鋭い眼差しを向けながら微動だにせずポーズを決めている。



その下からは、薔薇を模した花びらが宙を舞った。





おおおおぉっ!!




今度こそ完璧だっ!!!!




さぁっ!!!




あの、決め台詞をっ!!!!












「・・・・・・・・で、この後どうするんだ?」



「!?!?」





アルフレドは 正気に戻った!




拳を力強く握りしめたクローディアへと振り返った未だ混乱中である王の中の王は、ぱちくりとその大きな目を向けた。




「ーーーーーーごめん、そこ教えるの忘れてた」




ポーズを完成させることに集中し過ぎて、一番大事な決め台詞を仕込むのをうっかり忘れていた。



だが、ちょうどクラス全体が静まり返ったところで前の扉が開く。




「遅れてすまなかった!!すぐに授業を・・・・って、なんだこれは?」



教室に入ってきたイヴァーナの前には、何とも奇妙な光景が。




「ーーーーーーーーーコホン。みんな席につけ!出席を取る!」



その後、1つもツッコミを受けることなく何事もなかったかのように授業は始められた。



クローディアを始めとした生徒達も、静かに室内を片付けて授業へと切り替える。






(い、今のは何だったんだ???)






アルフレドだけが、再び混乱中であった。



ちらっと、自分が無理やり変えた席に座っているクローディアの様子を伺ってみれば、先ほどとは違っておとなしく授業を受けている。


時々、目線が外や天井、後は少し離れたところにいる彼女とはよく一緒にいるらしいレオナルドという男子生徒に向く以外、特に目立った行動はない。



「・・・・・・・なに?」


「!?!?」



不意に、あまりに彼女を一心に見ていたら訝しげな彼女と目が合った。


だが、何か言おうとした次の瞬間、彼女の右手がまっすぐ天井に向かって上がる。




「せんせぇーーーー!!今黒板にある問題、オーギュスト君が全部解きたいそうです!」



「な、何だとっ!?」



「そうか!今回は少し難しい問題もあるが、大丈夫か?」



「!?!?」



学校に来ること自体が本当にレアなアルフレドの動向を、クラスメイト全員の好奇の目が襲う。



「な、何でこの俺がそんなことをっ!!!」



怒りで顔を真っ赤にしたアルフレドがクローディアへと詰め寄り、彼女の顔は途端に曇ったものへと変化した。



「・・・・・・・・そうだよね。滅多に学校に来てくなくてまともに授業受けてないアルフレド君なら、こんな難しい問題なんて解けるわけがないよね?」



「な、なにっ!?」



「学校に来なくても実はすごく成績優秀でいつもテストではベスト3入りのアルフレド君なら、こんな問題簡単に解いてくれると思ったんだけど」



「・・・・・・・・おい、貴様誰に向かって言っている?」



「!?」



「見てろよ、こんな問題5分で完璧に解いてやる!!」



自信満々な様子で黒板に向かって堂々と歩いていくアルフレドは真っ白なチョークをその指に持つと、キレが良い軽快な音をたてながらとても早い動きで回答を次々に埋めていく。




「す、すごい!!この難問をこの速さで!」



「「「 キャァァァーーーーーーーーーーーーー!!!アルフレド様!ステキっ♡♡♡ 」」」



「・・・・・・・どうだっ!!!!!!」




フェニッシュ!!とチョークを持っていた指を、先ほどのスパルタ指導の賜物な素晴らしい動きで持って空にふり上げると、アルフレドはあまりの見事さにあっけにとられているだろうクローディアに向かって、勢いよく振り返った。





「・・・・・・・・・・・い、いない?」



「クロエなら、トイレに行きましてよ?」



「!?!?」



鈴が転がるように可愛らしく笑うエリザベスの言葉に、アルフレド自信があっけにとられている後ろでは、イヴァーナがアルフレドの書いた回答に次々とピンクのチョークで丸を書いていく。



「これは素晴らしい!!全問正解だっ!!」


「・・・・・・・・く、くそっ!!!」



クラス中が羨望と感嘆で溢れかえる中、アルフレド本人だけは悔しさと怒りで唇を噛み締める。


この日から、アルカンダル学園での彼の人気はウナギのぼりに上がっていくのだが、彼自身はそのことにまだ気づいていない。





そしてクロエはといえば、ルークから高い代償で(もちろんお金ではない)手に入れた情報から知った、ジークフリートを付け狙う学園に潜んでいたスパイを締め上げていた。

続いてしまいました。そしてまた続きます(笑)


本当はもっとさらっと進む場面のはずが、ここぞとばかりに活躍し始めて終わりません。


きっと長いこと出してあげなかった反動でしょう。ごめんね、アルフレド君。

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