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モブ女子、あなたはどこの誰ですか?

祝、200話達成しました!


本当に読んで頂き、ありがとうございます!!


こんなに書き続けられたのは読んでくれる人がいるおかげだと、改めて感じてます!

クエストを提示されてからすぐに、私達は手分けしてクリアーする為にそれぞれ動き出した。



レオには力仕事になる薪割りを。



これは何件も重複してる為、それだけに集中してもらうようお願いした。



果たして、一体何百の薪を割るのやら。



ちなみにこの材料になる樹木は自然に影響が出ない為に、雷で折れたり病気や老朽の為に折らざるを得なかった木々を使うとのことだった。




次に、動物に関しての迷子捜索や喧嘩の仲裁、果てにはお見合いの斡旋?とやらは言葉の通じる紅丸が。



お見合いって、人間が介入していいのか?



いや、正確に言えば紅丸は人間ではないのだけれど。






クローディアとルイーズは、その他の全てだ。


朝の内に牛の乳搾りと馬小屋の掃除などとその他にも幾つかのクエストを2人ですでに終え、太陽がその頂点で光輝く空の下でただいま絶賛草むしりに精を出している。


一応暑さ対策として頭から濡れたタオルを被り、その上から麦わら帽子を2人して被っていた。


根の強い雑草を汗をだくだく流しては力強く引き抜きながら、クローディアはルイーズの方へとふと目線を向ける。




「ふんふ〜〜ん♪それっ!ふんふ〜ん♪」



何が楽しいかは分からないが、ルイーズは鼻歌を歌いながらそれはそれはリズムカルに雑草を次々に抜いていた。



「・・・・・・・・」



力強く抜きすぎて、雑草どころかそこら中が穴だらけだったりしているが、本人は全く気にしていない。




いやいや、それにしてもだ。




クエストはこなしてもこなしてもまだまだたくさんあり、手伝ってくれるのは大助かりだが果たしてこの男は一体何者なのか。



さっきまでのクエストも破茶滅茶だった。



たとえば、マダムが井戸の中に落とした新品の指輪を拾いに井戸の底へと降りたら、降りた先でその指輪を見事に踏み潰して粉々にするものの、その先で見つけた古い錆び付いた指輪が実はその持ち主のはるか昔に無くしてから見つからないと諦めていた結婚指輪だったり。



馬小屋ではルイーズのフェロモン?にあてられた雌馬達が暴れ出すものの、その中の1頭が妊娠しており中々陣痛が来ていない所だったようで、その騒ぎでびっくりしたせいか急に産気づき無事に健康な雄馬を産み落としてしまったり。


新しい井戸を掘る為に穴を掘っていれば、はりきり過ぎて穴を大きく掘り過ぎた挙句その地下からまさかの温泉を掘り当てて沸かせるという、この短時間で果たしてどれだけ濃いイベントが立て続けに起こったことか!



そして、その男らしいイケメンを村の女達が放っておくわけがなく、その視線を釘付けにすることはもちろんなぜか男達にも気づけば慕われているのだ。


2人で畑を耕していた際には、近くを通りかかった村の男と何かを話したと思ったらその男がなぜか突然手伝い始め、次第に他の男達も加わって互いに競い合って畑を耕し、その様子を見ていた女性達が黄色い声援を送るというよく分からない事態にまでなっていた。



同じ余所者のはずなのに、ルイーズはまるで生まれてからずっとこの村に暮らす者のように溶け込み、彼を中心にしていつの間にか輪ができている。


レオも人気者だが彼は年上のお姉様方か同年代の若者の指示を得ており、紅丸は主に動物だけでなく子ども達とおじいさんおばあさん達を中心に人気だ。


あと、紅丸を少女と勘違いしている村の男達にも密かな指示を得ていて、陰から見つめられている熱い視線に彼は全く気づいていない。



「よしっ!あと半分!」



かなりの量の雑草が好き放題に伸びていたが、ようやく全体量の半分ほどがまっさらな大地が姿を現す。



「もう一度水をまいて・・・・・・土を柔らかくしておくか」



雨が降った翌日ならば土が柔らかく雑草が抜けやすいが、晴れの日が続いたあとの大地は固く抜くだけでも結構な力を要してしまう為、あらかじめ水を含ませておく必要があった。


この世界にホースはない為、バケツ変わりの容器に井戸から水を汲み上げてくるしかない。



「よいしょ・・・・・・・って、あれ?なんか、視界がぐらぐらする?」




膝を伸ばして立ち上がった途端、目の前の世界がぐらりと揺れる。



「!?」




まずい。



そういえば、抜くのに夢中で水分を取るのをうっかり忘れていたかもしれない。



暑さには強い方だと思ってたけど、これはさすがに気持ちが悪い。




「・・・・・・水、飲まな・・・きゃ」





バタンッ!!





次の瞬間。


目の前が真っ白になり、クローディアは大地の上にそのままうつ伏せに倒れこんだ。

















遠くから、鳥のさえずりが聞こえた。



そして、木々が風に揺れる音が小鳥達の歌に合わせて心地いいメロディとなって耳へと届く。


昔はよく、立ち入り禁止になってたアルカンダル王国のナーサディア神殿の近くの野原にこっそり侵入して時々休憩しに行ってたっけ。



警備の兵士はどうしたかって?



人が通る道じゃない裏道が実はあって、そこから行くと警備の兵士に気づかれないでそこへ行けるんだよね。


神聖な場所であるそこへは一般の町の人達は基本近寄りもしないのが暗黙の了解らしいのだが、ゲームで散々自由に行き来していた身としてはそんな常識はなく、バレなければ大丈夫だろうとこっそり出入りを繰り返していた。


その場所にクローディアがいることを知っていたのは、ジークフリート様の死亡フラグ折りの相棒をしてくれていたレオナルドで、そこでうっかり爆睡していたクローディアを起こしに来てくれたことも何度かあった。



その時と同じように、クローディアの閉じたまぶたの向こうで人の影を感じ、覚醒し始めた頭がゆっくりと動き始める。




「・・・・・・・・ん、レオ?」



逆光で目の前に映った人の顔は影がさしていたが、そのシルエットから男性のものだということだけが分かった。


前世の世界で言う日射病であのまま倒れた自分を、彼が助けてくれたのか。




ぽた、ぽた、ぽた。




「・・・・・・・ん、み・・・ず?」



顔の上に水で濡れたタオルがぶら下がり、そこから滴り落ちる水滴がゆっくりとクローディアの口に水分を送る。


少しずつハッキリとしてきた感覚により、おでこにも同じように水で濡れた布が乗せられているのが分かった。


そういえば、日射病のような脱水症状の時は水を一気に飲まないで、こんな風にゆっくりと水分を口に含みながら体に与えていった方がよかったんだっけ?



心なしか、舌に伝わる水分は普通の水よりも塩気が感じるような気がする。




そうだった。


確か、水分だけじゃなくてミネラルの塩分も同時に取らないと意味ないんだったっけか。


向こうの世界ならポ◯リとかア◯エリがあったから、迷うこともなかったけど。




「・・・・・・・・ッ」



にしても、ずいぶん硬い地面に寝かされてるなぁ。


でも、地面とは違う感じの硬さだ。




ぽた、ぽた、ぽた。




「・・・・・・・・え?」




ゆっくりと水分を口に含み、だいぶ喉も潤って意識もクリアーになってくると、その視界に映っているのが彼ではないことがようやく分かった。



「よぉ、気がついたか?」



「!?」



風に赤髪が揺れ、同じ紅い瞳がクローディアの視線を捉える。



「る、ルイーズさんっ!?」



「おっと!いいからまだ寝てろよ?」



「・・・・・・ッ!?」



視界いっぱいに彼の満面の笑顔が映り慌てて上半身を起き上がらせるが、その顔面を彼の大きな手に抑えられながらすぐさま勢いよく元の場所へと頭を戻された。


地面とは感触が違うような気がしていたそこはなんと彼の太ももであり、大きな木の根元に座りこんでいる彼の足の上にクローディアが寝ている状態である。


勢いよく起き上がった為におでこから外れた布がクローディアのお腹の辺りに落ちるが、それを横にあった先ほど水を大地にまくためにバケツ代わりに使っていた容器の中で湿らし、軽く絞ると再び彼女の額へと乗せた。



火照った部分から伝わる、ひんやりしたその感触がとても気持ちがいい。




「・・・・・・ありがとう、ござい、ます」



「気にすんな。あんだけ一気に色々こなした後に、この炎天下で水もろくに飲まずに動いてりゃあ倒れもするさ」



「すみま、せん」



ルイーズが介抱してくれたことがわかり、素直にお礼と謝罪を伝える。



「全く、お前みたいに一度集中すると馬鹿みたいに真面目にやり過ぎて倒れるようなやつは、休み方が下手くそなんだよな。適度な休みは大事なんだぞ?」



「!?」



ぽんぽんと頭を大きな手の平で乗せられたかと思えば、思わず見惚れてしまいそうになるほどに優しい微笑みがクローディアへと向けられた。



だがそれは、自分へと向けられたものではないような気がして彼の眼差しに違和感を覚える。



「そんな人が、ルイーズさんの側にいたんですか?」



記憶が蘇らなければ、この男の正体も分からない。



「・・・・・・・どうだろうな。それが誰なのかはさっぱり思い出せないが、こんな風に熱い日差しの時は、誰かを膝に乗せて木陰で休んでいたようなことがあった気がする」



ルイーズの目が遠くを見つめ、頭の中でその姿を欠片も見つけ出せない『誰か』をそれでも探す。


だが、どれだけ思い出を探そうとしてもその引き出しは全くの空っぽで閉じられた記憶の扉は少しも開かない。



「本当は、お嬢ちゃんの顔に直接水をかけようと思ったんだぜ?でも、なんか知らねぇけど、それをやったら誰かにものすごい怒られたような気がして・・・・・・あれ?誰だっけかな?」




なるほど。



確かに、先ほどまでのルイーズの行動を見ていたなら何にも考えず豪快に水を患者に向かってぶちまけるに違いない。



きっと、彼の記憶にいるはずの誰かさんが彼に正しい対処法を教えたのだろう。



すでに乾き始めていたが、実は首元にも濡れたタオルが巻かれていた。



先ほどの眼差しを向けていたのがその人ならば、多分彼にとってはとても親しい間柄の相手のような気がするが、元々の知り合いでもないクローディアにそれを確かめる術は少ない。




「ま!そのうち思い出すさ!お嬢ちゃんはもう少しここで休んでな、残りは俺がやっといてやるからよ!」



「る、ルイーズさん!?」



ルイーズはクローディアをお姫様抱っこで持ち上げると木の根元に座らせると、自分はそのまま途中になっていた草むしの現場へと意気揚々と戻っていく。




「・・・・・・・適度な休みも、必要か」



まだまだ太陽が沈むまでには時間がありそうなことを、樹木の生い茂った葉の隙間の斜め方向から差し込んでくる光により感じ、もう少しだけ休んだら次のクエストに行こうと決めてその瞳を閉じる。




「少しだけ・・・・・・ね」




心地いい風と、癒しを感じさせる小鳥のさえずりに耳を傾けながら、クローディアは束の間の休みを穏やかなとても気持ちで過ごした。

200話達成の記念の番外編を考え中です。


以前の学生バージョンか何か別なものになるかわかりませんが、せっかくの記念なので書こうと思ってます。


これからも、よろしくお願いします!

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