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モブ女子、泣きたくなりました!

今回も読んでいただきありがとうございます!


本当に長くて濃い1日だな〜と、前の話を読み返しながら思いました。

ゲームだと、ほんの一瞬ですぎるんですけどね!





「ハァァァァ〜〜〜〜!今日も一日、私よく頑張ったぁぁぁ〜〜〜〜〜ッ!!」




両手を空高くにあげて、全身を一気に伸ばすと身体のあちこちが次々とパキポキ音をならした。


ミシミシ言わないなんて、さすがは10代の若き身体バンザイッ!!



あの後、ルークに(一応の)お礼とさよならを告げて、逃げるようにしてようやく魔法院を出た頃には、辺りはすっかり陽が落ちて真っ暗になっていた。


夜空には今日も満天の星がとても美しく瞬いている。


本当に、今日は内容の濃い、濃すぎるぐらいの1日だった。


一体、いくつイベントが一斉に発生したことか!!




ゲーム上ならウハウハで喜んでるところだが、実際にプレイするのが自分の身体となると、体力的にこれは正直辛い。


今思うとあのゲームの主人公も、あのゲームでのヒロインも、あっちへこっちへひたすらに走らせて動かしてーーーーーー実際にやろうとしたら、かなりの無茶ばかりさせていたような気がする。




「ハァ〜〜〜〜〜!!モブでこんなに疲れるんだから、主人公達は相当な体力がないとやってけないわ!」




絶対に今日は会わない!!と決意して騎士院に行ったら、まさかの一番会っちゃいけない団長本人が目の前に出てきて。


なんでそういう時はいるんですか!

今まで何十回、空っぽの部屋に涙を飲んだことか!!

でも会えたのはメチャクチャ嬉しかったです!おかげで明日からも頑張れます!



そのあとは、まさかの王子さま登場!!で、ついに攻略相手が出揃ってしまった


未だにヒロイン不在にも関わらず!!



しかも、なぜかその流れでルークのいる死亡フラグだらけの魔法院に移動してて、そこで何度も殺されかけた挙句、なぜか魔法が扱えるように(一部だが)なった。



そしてーーーーー。





『随分と、浮かない顔をしておるな。我が主よ』




頭の中に鳴り響く、低い重厚感溢れる渋めの美ボイス。



この声の主の名は、『ボルケーノ』。



先ほど、魔法院で私が殺されかけている中でルークから渡された一本の木の杖の中に、なんと何百年も前に封印されていたとかいう、実態は2Mぐらいの大きさを誇るナイスなマッチョボディをお持ちの紅き炎の神様。


呪われた挙句に、その封印されていた杖の呪縛を破った礼として、なぜかこれからは守護をしてくれるという、なんとも大変ありがたい豪快で太っ腹な神様です。


おかげで、冬は全く寒くない自動ヒーター機能と、いつでもお前を燃やせるぞ☆的な火炎放射機能が手に入りました。



おぉッ!!


今度かっこいい必殺技の名前を考えないとね!!



「・・・・いや、ずいぶんひどい目にあったなと」



あの地獄のダブルパンチは、いやトリプルパンチか?の恨みは、絶対に一生忘れない。

今思い出すだけでも、身体中に恐怖の震えがきそうだ。



『くくっ。なるほど、古の血を引く魔導師か。確かにあやつは面倒な男のようだな』




面倒、という言葉を使いながらも声の向こうではなぜか笑っているような気もする。




『だが、今は許してやれ。そうせざるを得ない理由があやつにもあるのだ』



「・・・・理由??」



『あぁ。今はまだその時ではないゆえ、我からは話せぬが。時が来れば、自ずと分かろう』




なんの理由があるのかは分からない。

彼のルートを何百回やったわけでもないし、それでも彼の心の奥の奥までは分からないかもしれない。


それでも、彼のおかげで私は死の山に登る前に登山?の心構えを多少なりともさせてもらい、体力的にかなりキツい目にはあったものの、実際にケガをしたわけでもない。


一部だが魔法も扱えるようになり、私にはもったいないほどのものすごい護り神がそばについた。


ろくに戦えないのに、最強のサブキャラが一緒だぜっ!!



「・・・・・」



果たしてどこまでが彼の思惑なのか、それともただ単に全部が偶然なのか、さらに裏があるのかは分からないがーーーーーー。


結果的に、今私が必要で望むものを彼からもらっている。


イライラすることばかり起こすが、きっと根本的に悪い人ではないのだと、そう感じた。



「・・・・分かった」



ただ、1つだけひっかかってることがある。


ボルケーノがルークを見て話していた、『アイリス』という名前。


絶対に『私』は聞き覚えがある気がする。


しかも、その名を聞いたルークも、一瞬だけだが空気がいつもと違っていた。




『うむ。久しぶりに現世の世界へ出たせいか、我もまだ本調子ではない。今一度眠りにつくが、必要であればすぐに呼べ』


「分かった!おやすみなさい、ボルケーノ」


『おやすみ・・・?くくっ、面白い主だ』


「???」




何がおかしいのかはわからないが、頭の奥でボルケーノは静かに笑っていた。



『あぁ、おやすみ。我が主よ』



ボルケーノの声が聞こえなくなり、彼が眠りについたのが分かった。







「・・・・・・フゥゥ〜〜」



まさか、こんな展開になるとは。


脳内会議の皆さんもびっくりの急展開だ。




「まぁ、今日も星はきれいだし。それでいいかな♪」



街の中心に位置している、円形になっている噴水の、石造りの部分にストンと座ると、手を後ろの石について夜空をもう一度見上げた。


ここは私のお気に入りの場所の1つ。




「・・・・きれい」




そういえば、ここ最近ずっとバタバタしていて、こうしてゆっくりと星を眺めてる時間もなかった気がする。


もしかしたら、この星空のどこかに『私』がいた地球があるのだろうか?


それとも、ここも実は『〇の惑星』のように地球で、『私』がいた世界のずっとはるか先の未来なのかーーーーーーー。




「みんな、どうしてるかな?」




『私』の記憶の中で次々に映る、家族や友人、職場の先輩や同期に後輩にクラスの子ども達。


今更かもしれないが、ここが『私』の後世なら『私』はなんらかの理由で死んだことになる。

どんな理由で死んだのかも、本人なのに全く分からないし、その後のことなど知る由もない。



「辛い思いさせてたらごめんね。お父さん、お母さん」



『クローディア』の父と母を見るたびに、思い出されて仕方がなかった『私』の両親。


結婚のけの字も見えなかった『私』だということもありいつも心配させてしまっていて、とうとう楽しみにしていた孫の顔を見せられなかったのは、本当にごめんなさい。



いつもいつも、あーしろ!こーしーろ!ってうるさいな!とか思ってごめんね、お母さん。

私のことを考えてくれてのことなのに、素直にありがとう、と言えたのはどれだけだったか。


もっとたくさん、ありがとうと言えばよかった。

お母さんの作る煮物や、色んなご飯をもっとたくさん食べておけばよかった。



お父さん、無口なお父さんとはあまり話をできなかったね。

もっと話せばよかった。お父さんを思い出す時に、どんなことを話したのかがたくさん思い出せないよ。


2人に親孝行の1つもできなかった。

ダメな娘でごめんなさい。


でも、孫は妹に期待してくれ!あの子はできる子だ!!



「・・・瞳とは、最後までケンカしてたな」



3歳年の離れた妹の瞳。


私と違って、賢くしっかりしていて、女の子としての自分を磨くことも大好きで、女子力ゼロどころかマイナスの私とはよくケンカをしていた。


確か珍しく一年以上続いている彼氏がいたから、その人がいい人であることを祈ってる。


あんたは私と一緒で強がるところがあるから、そういうところも可愛いって許してくれる人ならいいな。


どうか『私』の分まで幸せであって欲しい。


今はそれを願うことしか出来ないのが、とても悲しい。




「・・・・・・会いたいな」




目を閉じると、たくさんの『私』の思い出が頭と心に浮かんでは消え、浮かんでは心に刻まれていき、気がつけば涙が自然と流れていた。


ーーーーーーその時、突然ほおに暖かい温もりを感じ、涙がスッと拭わられる。



「!!??」



急に感じた温もりに、ハッ!!と瞬時に目を開けてみれば、



目の前にいたのはーーーーーー。





「どうした?何か、あったのか?」


「・・・・じ、ジーク、フリート様ッ!?」




私のほおに手を添えて、目の前で心配気に眉間にシワを寄せたジークフリート=ウルンリヒ団長が、私の顔を見るためか少しかがみながらそこに立っていた。



こういう時。


神様、仏様、女神様!!ま、まさかの!!

本日最後にして最大のイベントが、たった今始まってしまいましたぁぁぁーーーー!!!



「・・・・・・どう、して?」



なんて、いつもならそんな感じで私の心の叫びが興奮とともに止まらなくなるのに、今日はそんな叫びは生まれなかった。


柄でもないのに、感傷に浸りすぎたせいかもしれない。


こんなに嬉しいのに、全力で喜べないなんて。



「お前の母上である、ララ殿が娘がまだ家に帰らないのは、騎士院にいるからなんじゃないかと、尋ねてきたんだ」


「!!??」



お母さん!!

本当にごめん、心配かけて。

あっちでもこっちでも、私は心配をかけてばっかりだ。



「・・・・すみません、でした」



なんだか今日は、色々あり過ぎたせいか心と頭がぐるぐるする。


こんなんじゃダメなのに。


どうしよう、また涙が目から滲んできた。




「クローディア、大丈夫か?」


「・・・・は、はい!目にゴミが入っちゃっただけなので、もう大丈夫です!!」




目の前の人に心配をかけてはいけない!!と、慌てて涙を手の甲と指とで無理矢理に拭き取る。




「クローディア」


「は、はいっ??」




ほら、もう大丈夫でしょッ??と、笑顔を作った私を、真剣なジークフリートの目線が注がれる。




「じ、ジークフリー・・・」


「そういう顔をしているのは、何かを1人で必死に耐えている時だ」


「!!??」




ジークフリート様は、両手で私の手を包み込むと、真剣で力強い瞳はそのままに、彼にしてはとても穏やかで優しく笑みを浮かべた。



「お前はじゅうぶんに、よく頑張っている」


「ッ!?」




これは一体、何のイベントへのフラグなのでしょうか??


なんで、こんなにも優しい眼差しでジークフリート様は私を見てくれるんでしょうか??


なんで握られた手はこんなにも、温もりに溢れているのでしょうかーーーーーー??




「騎士院の皆が話していた。お前は騎士院にただお弁当を届けてくれるだけではなく、一人一人と向き合って話してくれると。お前と話すと皆が楽しい気分になり、元気になると嬉しそうにしていた」


「・・・・・・そ、それはっ!」




あなたの死亡フラグの為に、少しでも手がかりになる情報が欲しいと思ったから。


少しでもフラグの影を見つけたら対応出来るようにと、騎士院の人達とも仲良くなろうと思ったのだ。


団長の死亡フラグを折るためという名の、自分の為だ。


それだって、果たしてどこまで役に立ててるのか、もしかしたら無意味なことも多くあるかもしれないと思うこともたくさんある。



「・・・それは、私のせいじゃない、です」


「クローディア??」


「あ!いえ、なんでもありません!」


「お前のおかげで、毎日が楽しくなったと、皆は話していたぞ?」


「・・・・・ッ!」




だってそれは、私と会って元気になるのは私じゃなくて自動回復機能のおかげだから。




「・・・・私は、何もできてない」


「ーーーーークローディア」


「は、はい!」




ポン!ポン!




「・・・・・へ?」



暗く落ちこむ心とともに下がっていた私の頭に、団長の大きな手が2、3度優しく跳ねると、そのまま頭の上に温もりがかぶさる。




「何をバカなことを言ってるんだ、お前は」


「え?」


「少なくとも、俺はお前のおかげですごく助かってるんだぞ?」


「!?」



団長がぐいっと顔を近づけて、私の目をしっかり見つめて来る。




「お前はじゅうぶんに頑張っている。お前に必要なのは頑張ることじゃなくて、もっと力を抜いて、泣きたい時に泣くことだ」


「え??」




ギュッ!!




「!!??」




頭に置かれていた手が私の背中に周り、気づくと私は団長の胸の中に力強く包み込まれていた。



「辛い気持ちを言いたくないなら、無理に言わなくても構わない。だが、たまには泣ける場所が誰だって必要だ」




耳元で響く低い声が、私の心の中のぐしゃぐしゃしたものを溶かしていく。




「お前にその場所がまだないなら、俺を使え」


「・・・・・・ッ!?」




な、何を言ってるの??




「すまないが、俺にはお前への礼はそんなことぐらいしかできそうにない」


「お、お礼だなんてッ!!」




私はまだ何もできてない!




「たまには、大人に思いっきり甘えたらいい」


「!?」



そっか。


大人に、ということはつまり、子ども扱いされてるのと同じだ。


つまりこれは、女性としては全く恋愛的に意識されてないという、かなりのショックなことだ。


今が落ち込んでる時でなければ、このショックで数時間は泣き叫んでいたかもしれない。



だけど、それでもーーーーーーー。




「・・・・・・うぅっ」




今はその優しさに甘えたい。


このどこまでも温かい腕と心に、今日だけは何も考えずに委ねてしまおう。




「うぅっ・・・うぅぅっ!!」




お父さん、お母さん、親不孝者な娘で本当にごめんなさい。


それでも、私はやっぱりここでこの人と一緒に生きられることが嬉しいの。




「うわぁぁぁ〜〜〜〜ッッ!!!」


「・・・・・・・」




この世界に来てから初めて、『私』は心の底から思っきり泣いた。


大好きな人の胸の中で、気のすむまで『私』は子どものように泣きじゃくった。




「ーーーーーーーー」




ジークフリート様は、ただ黙って泣き疲れて子どものように寝てしまうまで、静かに私の頭と背中を静かに抱いていてくれていた。







今回も色々話の内容が二転三転コロコロコロコロ転がりました。


最後は、とにかくクローディアを泣かせて、吐き出させてあげたいという団長の気持ちから、こういう形になりました。

恋愛モードに早くしてあげたいです

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