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モブ女子、タダより高いものはない

今回も読んで頂き、ありがとうございます!


武器とか落とすモンスターは、やっぱりそれを装備してるんですかね?

お金を持ってるってことは、モンスター同士でも何か売買してるのかなど、色々妄想しては気がつくと違う話題へと意識がすぐに飛んでいきます。


次の日、私たちはエリスの祖父であるクラヴィス氏に会いに村の外れにある家へと出向いた。



そこで、まだ二日酔いで頭が痛いらしいクラヴィスさんから神殿への道を教える条件を提示されるらしく、少し待っておれと部屋で立ったまま待たされていた。




もとより、タダでは教えてくれないだろうことは覚悟の上だったが、その条件がお金だったらどうしようかと結構本気で心配していたりする。


普通、ゲームの中では決まって戦闘の後にモンスターがお金かアイテムを落とす為お金にはそんなに困らないのだが、現実は悲しいかな滅多に何も落とさなかった。


以前ルークに聞いた時も、人を何度も襲ってその財産を奪っていたようなモンスターならばまだしも、実は人間の物やお金に興味のないモンスターがほとんどな為、財宝狙いなら山賊の住処や古い遺跡を狙って探索した方がよっぽど稼げるし、良いものが見つかるよと。


後は裏街にあるギルドに登録して、モンスターハンターをするとか。



うん、これは間違いなくゲームの種類が違ってくるね!



英雄エンドどころか、チートな能力がついてのドラゴンスレイヤー的な猛者になるフラグがビシバシ感じますよ。



確かに強くはなりたいけれど、こういう世界は加減を知らないからね?



転生者は、能力を平均値でってお願いしてもチート能力を無理やり平気でつけられてしまう世界ですから。



むしろ、下手すれば神様とガチで勝負して圧勝してしまう世界ですからね?



それなのに、エンディングではただの村人に戻るってどういうことですか?



1人で世界の覇者になれる能力持ちながら、違うタイトルの違う世界観では新勢力に割と簡単にやられてるってどういうこと!?



たかだか人間の軍隊が100人、1000人攻めてきたって大技使って君なら一発KOでしょうがっ!!



お母さんはそんな軟弱な戦士に育てた覚えはありませんっ!!



ラスボスダンジョンを裸で歩いてたって、へっちゃらなぐらいには色々なものを君につぎ込んだはずですよ!!




「おーーーーーい」



「・・・・・・・・・・」




そうだ、思い出した!



必死にレベル上げしたのに、実はレベル上げれば上げるほど周りの敵も比例して強くなるゲームのせいで、序盤からかなりの苦戦を強いられたあのゲーム!




タイトルなんだったっけ?




用心深くしっかり育成してから向かいたい、この性格が仇になって結局さいごまでできなかったんだよ〜〜〜!!




あぁ〜〜〜〜!!



あれのエンディング、見たかったなぁ。






「おーーーーーい!」





ギュゥゥゥーーーーーーーーーー!!!





「な、何っ!?!?」




突然強い力で左右にある部分を引っ張られ、意識が一気に覚醒する。



引っ張られたのは、まさかの両耳!!




「・・・・・・どうだ?随分とぼうっとしてたようだけどよ、頭がスッキリしたんじゃねぇか?」



「!?」




至近距離にはイケメンが1人。



ニヤリと私の様子に笑うと、耳から手を離しそれと同時にいつもの大きな笑いを立てながら側を離れていった。



「な、何するんですかっ!!」



「ハハッ!!お前みたいにすぐぼけっとするような奴には、これぐらいやらないとな!

あれ・・・・・?他にも誰かいたっけかな?」




ルイーズは腕を組んでうーーーんとしばらく考えこむが、すぐにまぁいっか!と気持ちを切り替えて鼻歌を歌っている。




「クロエ、あのルイーズってやつ、どこかの国の騎士か何かじゃないのかな?今朝ちょっとだけ剣を合わせたけど、団長や副団長並みに強かったよ?」



「!?」



ルイーズが離れると同時に彼女の側へと来たレオがクローディアの耳元でこそっと呟く。




そうか。



他国の騎士ならその可能性は高いかも。




記憶喪失の状態で仲間になった実力も強い戦士が、実は他国の王子だったって設定はそれはよく見かけたことがある。



まぁ、王子というにはアルフレド王子のような生まれ持った気品みたいなのは感じられないけど、存在感というか人を惹きつける強い光のようなものは感じていた。




「・・・・・・・ずいぶん、待たせたのぅ」



何やらその手に長い巻物のようなものを持ったクラヴィスが、ようやく奥の扉から出てくる。




「ほれ、これが条件じゃ!」



「・・・・・・・・こ、これがっ!?」



「おぉっ!!すげぇっ!!」



「ヒュ〜〜〜♪」



「???」




私たちの目の前に堂々と広げられたその巻物には、艶かしい若い女性達のーーーーーーー裸体が。



「・・・・・・・・これが、条件ですか?」


「ん?」



女性誌のモデルのような細身の女性ではなく色気の溢れる肉感的に描かれたその絵は、なるほどただの絵とはいえ女の自分でも思わず息をのむほどには魅力的に映った。



純日本風に言えば、春画。



ゲームの中でも、時々アイテムでも現れるそれはまさにHなーーーーーーー。




「こ、こ、こ、こ、これはわしの秘蔵のコレクションじゃっっ!!!そうじゃっ!条件の書かれた巻物はこっちじゃ!こっちっ!!」



真っ赤なお鼻のトナカイのように赤くさせたクラヴィスは大慌てで秘蔵のコレクションをなるべく丁寧に急いで巻き直しして懐にしまうと、裏に飛んで帰り別の巻物を改めてクローディア達の前に広げた。




「・・・・・・・こ、これが?!」




今度こそ、本物の巻物に書かれたいたこととは!




「うーーーんと、何々?イポメア家、牛の乳搾りの手伝い。ハイドランジア家、馬小屋の掃除。エレクタム家、インディカ家は薪割りを1月分・・・・・・なんだこりゃあ?」



興味津々な様子で一番に巻物の側へと近寄ったルイーズが、書かれた文章の一部を読み上げた。



「ええっと、クロッカス家は畑の収穫の手伝いに、サルビア家は庭の草むしりって・・・・・・何これ?」




同じく、興味津々に内容を覗き込みに行ったレオの頭上にも大きなハテナマークが浮かんでいる。



「あ、あの、クラヴィスさん。これは一体?」



どれだけ見ても、家の名前とその下には何やら家事の一部らしいものが永遠と書かれている。



「ふぉっふぉっふぉっ!これはのう、以前村人達に聞いた今一番困っていること、もしくは今すぐ手伝って欲しいことの全村人分じゃっ!!これを全部こなして村人達の信頼を勝ち取ったならば、神殿への道を教えてやるぞい♪」



「やったね!クロエ、これ全部やったら教えてくれるって!!」



「えっ・・・・・・・・・・・ぜ、全部?」




これ、全部やらなきゃいけないの?



クエスト数ハンパなさすぎるよね?



普通、1つの村の中で起こるクエストって多くても3つぐらいじゃなかったっけ?



軽く見ても30、いや40くらいはあるよね?



しかも、一瞬見えた気がする幾つかの文字の中に『ドラゴン』とかあったような気がするのは是非とも気のせいであって欲しい!!




「わしは別にどっちでもいいがのぅ、どうするんじゃ?」




せっかく掴んだ、トルナード様へと繋がる貴重なフラグだ。



これを逃して、広い谷と森の中から自力で村人ですらほとんど知らない神の神殿への道を見つけるなど、まさに雲を掴むようなもの。




「・・・・・・・・・・」




その時、クローディアの脳裏には彼女にとって何よりも愛おしい黒髪のあの人の姿と声がが蘇る。





『旅から無事に帰ってきたら、お前に話したいことがあるんだ』




『だから、全部終わったら・・・・・ここに帰ってこい』





「!?」




そうだ。


今の自分にとって、そんな時間はない。




「・・・・・・よ、喜んでやらせて頂きますっ!!!」




絶対にこんなクエストはさっさと終わらせて、1日も早くあの人のところへ戻るのだっ!!





こうして、ゲームではよく見られる『クエスト』という名の試練であり、いわゆる何でも屋と化した村人達にとっては『都合のいい人まっしぐら』への道がスタートすることとなった。



勇者のスペックは村人の願いを叶えている内に、自然と高くならざるを得ないのではないかと。


命賭けて叶える何でも屋の割に、代金は要求せずにくれるものなら何でもオッケー!って現実で考えると凄いですよね。

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