モブ女子、影での攻防戦
読んでいただき、本当に感謝です!
最初の頃ならまだしも、レベルが色々上がった後に出会うすぐに倒せる中ボス的な感じでしょうか?
それからも、クローディアに差し向けた男達はことごとくその側にいるジークフリートによって近づくことも許されずに殲滅させられていた。
たった1人の女を消すだけなのに、なぜこんなにも手間取らなければならないのか!
確かに、彼女を守るあのジークフリートという男は国の英雄と呼ばれた国一番の実力を持つと言われている騎士だ。
だが、それでもたかが騎士は騎士。
多人数で襲えば1人一振りの剣などに何ができると言うのかとたかを括っていたら、彼は魔術も操るようで彼の側には常に炎の守護がまとわりついて仕方がない。
それならばと、今度はジークフリートとあの女を同時に襲わせた。
その間に彼女を殺れればそれで構わないし、男の方は別に時間が稼げればそれでいいと、人数だけは多く送り込む。
今度こそ!と、騎士院から店に帰る際の彼女が共に歩く女と2人きりになったところを襲わせた。
「!?」
だが、強靭な肉体を持つ男達5人ほどに囲まれたクローディアという女は、その登場に驚きはするものの普通の女のように怯える素振りが全くないことが気にかかる。
斧や短剣、鎖鎌に棍棒を構えた自分よりもはるかに大きい男達を前に、側にいた女ですらも悲鳴1つ上げずに『ちょっと、なんなの?こいつらは』などとため息をついている。
とにかくあの男が駆けつける前にやってしまえ!!と部下の男達に目線で合図を送り、一斉に男達がクローディアに向かって襲いかかった。
さぁ!!
恐れ怯え、悲鳴をあげろっ!!
「主が求む、全てを凍てつかせろ!!真なる氷、フィンブル・ヘイル!!!」
「「「「「 !!?? 」」」」」
「・・・・・・・・・・は?」
クローディアの落ち着いた、それでいて力のこもった声が空に響くと同時に5人の男達の体が一斉に氷漬けにされて次々と地面に倒れる。
「さすがはクロエね!!」
「い、いや、それよりこの人達なんなのっ?!」
「さぁ〜〜?あ、ほら!王子様を狙ってた奴らの残党とか?」
「うーーーーん、それにしては動きが遅すぎるけど」
「まぁ、いいじゃない!それより早くお店に帰らないと、2人揃って叱られちゃうわよ?」
「ヤバっ!!早く帰ろう!!」
氷漬けにされたままの男達をそのままに、クローディアとイザベルは駆け足でその場を去っていく。
今まさに襲われたことなど、もうその頭にはどこにもない様子で。
その日以降もジークフリートを側から離した状態の彼女を男達に襲わせるが、時には騎士院の男が2人べったりと側から離れず、そのまま襲いかかったところその2人にあっという間に倒されてしまった。
2人も側にいない、彼女が1人きりでありかつ完全な死角からの状態で暗殺を試みようとすれば、暗殺者自身が何者かによってその直前に暗殺されてしまっている。
「・・・・・くそっ!!どいつもこいつも、この俺をバカにしやがってッ!!」
ハンスの心は苛立ちですでに大きく掻き乱れていた。
なぜこんなにも、たかだかガキ1人に手間取らなければいけないのか!!
「仕方がありませんよ。彼女はいくつもの存在の守護を受けている特異な存在ですから」
「だ、誰だっ!!??」
その気配すら自分は何も感じなかった。
振り向いた先にいたその存在は、銀色の甲冑を全身に着込んだモノ。
「初めまして、我が身に名はございません。銀の騎士とでもお呼びください、ハンス=ブルースト様」
「ぎ、銀の騎士だと?」
銀の騎士は、ハンスの前に恭しく膝を折りその鉄仮面を被った頭を静かに下げる。
「ご安心ください、ハンス=ブルースト様。我が君よりあなた様に力を貸すよう申しつかって参りました」
「わ、我が君?」
「・・・・・それ以上の追求はお勧めできかねます。心配なさらなくとも、我々はあなた様の味方です。あの女を消したいのでしょう?」
「!?」
ハンスの目がその動きを少しも捉えることなく、銀の騎士の姿が目前に移動し彼の持つ剣が喉元へと真横に向けられた。
少しでも動けば命はない。
「・・・・・・・・・」
「もし我らと手を組むことに了解するならば、一度。異を唱えるならば、細かく二度瞬きをしてくださればいい」
この状態のまま二度瞬きをすればどうなるかなど、考えなくとも分かる。
ハンスは無言のまま、瞬きをゆっくりと一度だけして了解の意を伝えた。
「ハンス様が話の分かる方で良かった。これで余計な血を流さなくて済みます」
「・・・・・・・・ッ!」
ようやくハンスの喉元に置かれていた剣が離され、止めていた呼吸を浅く繰り返す。
「な、何が望みだ!?金か?それとも地位かッ?!」
叫ぶようにして吐き出したハンスの声に、銀の騎士はしばらく沈黙を続けた後で一言呟く。
「・・・・・・・何も」
「そんなバカな!!何の対価もなしに、こんなことをっ!?」
「物欲や、名誉を望むものばかりではないということです。それよりも、次回はどうぞ彼女をお使い下さい」
「な、何っ?!」
銀の騎士の後ろから、1人の少女が前に出てくる。
「何をするのかと思えば、こんな女が一体何の役に立つと?」
銀の騎士の実力は認めざるを得ないものの、そんな男がこんなただの小娘を差し出してくるなど、何という茶番か!
ハンスはメガネの位置を指で直しながら、鼻で笑いその少女へと蔑みの目で見下す。
オリビアのような気品も美しさもない、どこにでもいそうな普通の女じゃないか!
「ええ。ですが、彼女にとってはただの女ではないのです。それと、我が君よりこの腕輪をあなた様に差し上げるようにと」
「・・・・・・・これは?」
「魔封じの腕輪です。ですが普通のそれとは違って、一度つければそうそう簡単には外れません」
「なるほど。それならば、有り難く使わせて頂くとしよう」
「どうぞ、ご自由にお使い下さい」
そしてハンスが受け取った腕輪に目を向けた次の瞬間には、銀の騎士はその姿を微塵も残さずに消えさる。
「・・・・・・・ちっ、薄気味悪い野郎だ」
残されたのは手の中にある『魔封じの腕輪』と、先ほどから一言も発しない少女1人だけ。
だが、わざわざ自分の元に連れてこられたのだとすれば多少の役には立つに違いない。
「おい、女!俺についてこい!」
「・・・・・・・」
少女はハンスの後ろを黙ったまま歩いていき、そんな彼らを紅い夕日が照らしていた。
男達よりも、彼女自身の側にいる存在の方がさらに最強ですよね。
手下ばっか使ってないで自分で闘えよ!と途中から思ってしまいました。次回こそは本人が戦う場面が来る?んですかね。




