モブ女子、呪われました!
2つ分くらいで終わると思ったら、うっかりどんどん広がってきてしまいました。
色々怒られそうな部分がいっぱいかもですが、少しでも楽しく読んで頂けたら幸いです♪
『その』部屋に着くと、ルークは奥に向かい何かを探し始めた。
「ね、ねえ。何を探してるの?」
「クスクス♪もちろん、君にとってすごくいいものだよ」
「ーーーーーー」
はいこれ、絶対違うやつですね〜〜☆
だって、この部屋に置かれているものは、何やら呪文のような文字が書かれた布を巻かれていたり、紙が貼られていたり・・・・危険な匂いしかプンプンしない。
それがどんなもので、何であるのか細かく確認したい気持ちも確かにあったが、今の私にはとにかく余裕がない。
「ーーーーーーーうプッ!」
さっきのあの怪しげな飲み物のせいで、まだ口の中にはあのなんとも表現できない最悪な味が後を引いて残っていった。
体も動けるようになったとはいえ、心があまりにグッタリしてるせいかずっしりと重く、時々腹の奥から逆流してくる色んなものと、私はどうにかしてうち勝たなくてはと激しく戦っていた。
あぁ!!
もう早々に胃が白旗を上げて負けを認めてしまっている!!
負けるな私!!
次は食道との必死の攻防が続いている!!
寄せては引いて、また寄せて!
うぅ・・・・これは気持ち悪い!!
あぁ!!!
食道がついに侵入を許してしまった!!
頑張れ!!喉元の勇者よ!!
お前が最後の希望の砦だッ!!!
負ければ待っているのは、ステキなリバースマウンテン!!!!
お前に全てがかかってるんだ!
喉元の勇者よぉぉぉーーーーーーーッ!!
「ーーーーーーーウップ!!」
「クスクス♪それ、外に出したら・・・・もう一杯飲ませるからね」
「!!!???」
勇者、よ・・・・・。
よっしゃあぁぁぁーーーーー!!!
なんとか、なんとか打ち勝ちましたッ!!
でも、代わりに何かを失いました。
「ーーーーーふぅ〜〜〜。あ、あのさ!」
「クスクス・・・・なんですか??」
気を取り直して声をかけてみると、ルークが手は変わらず何かをガサゴソとたくさんの道具の中で動かしながら、顔だけ営業スマイルで振り返る。
「さっき話してた魔法って、私はどうやって使えるようになるの??」
「クスクス・・・・簡単だよ♪」
「え???」
敵をやっつけて経験値獲得!とか、レベルアップ!とかをしなくていいんだろうか??
それか、ものすごい量の魔法に関する書物を読んで覚えるとか??
「フフ・・・それをしても構わないけど、君は元々魔力が常に無駄に垂れ流し状態だなら、その力をコントロールする媒体を使うことからスタートだね♪」
「ーーーーーえ??それだけ?」
あれ??思ったよりすごく簡単だ。
って、そしたらあの地獄の階段いらないよねっ?!
そして、やっぱり無駄にハッスルして出ているのか!私の魔力よ!
悪いことは言わないから、大事な時にとっておきなさいッ!!!
「クスクス・・・あぁ、あった♪」
「ん??」
謎の道具や薬が溢れかえる中からルークが取り出したのは、白い布に先端がしっかりと包まれた、一本の木の杖。
布に包まれているものの、そのシルエットと握る部分の見た目の木の感じは、RPGのゲームとかのイラストでよく見たことがある、魔法使いが手にしていたまさにあの杖だった。
「この木の杖が、魔力の媒体になるの??」
「クスクス、そうだよ♪」
「普通の、木の杖だよね??」
「フフ♪魔力を持ってるけど、今は普通の木の杖だよ」
「・・・・・・」
はい♪と、笑顔のままでその杖を渡されるが、すぐに手が伸びない。
今度は何が起こるのかと、全身全霊で警戒を呼びかけて私を引き止めようとしている。
手を出せ!出すんだ私!!
大丈夫!!地獄階段&地獄の飲み物&地獄のリバースマウンテンまでも乗り超えられたんだ!!
次に地獄の鬼がきても、何が来てもそれは予想の範囲内じゃないか!!
「クスクス・・・・どうしたの??」
ニッコリ♪
あぁ!!なんていい悪い笑顔ッ!!
「ーーーーーッ!!」
顔を杖から背けて、目を強く閉じて歯をくいしばりながら、その布に包まれたままの杖を震える両手でなんとか受け取る。
「・・・・・ッ!?」
手にした瞬間に、ズシッと思った以上の重みが腕にきた。
ルークは軽々持っていたように見えたのに、木の杖ってみんなこんなに重いの??
いや実はルークが隠れマッチョだったりするのかもしれない!!
「ありがとう、ルーク」
とりあえず、何も起きなかったことにホッと息を吐く。
「クスクス♪どういたしまして」
「ちなみに、こういう杖ってさ。よく名前があったりするけど、これも何かあるの??」
ルーンなんとかとか、マジックなんとかとか。
いや、本格的な杖ならもっとカッコいい名前かもしれない!
「よく知ってるね♪」
「ま、まあね〜〜〜〜」
だてに、リア充と女としての色々を犠牲にして、現世でゲームに明け暮れてないぜ!!
「フフ・・・この杖には、2つ名があるんだ♪」
「2つ名??」
「そう、1つはボルケーノ。君の持つ石と同じく、炎の山で生まれた紅き石が埋め込まれていることから、そう呼ばれるんだ♪」
「へぇ〜〜〜ボルケーノ!!RPGでなんか聞いたことあるかも!もう1つは?」
「クスクス♪」
「・・・・・・あの、ルーク、さん?」
あの、さっきからとてもいい悪い顔にどんどん黒いオーラを感じるんですが、これって絶対に気のせいじゃありませんよね?
なんだか、先ほどよりも腕にずしりとさらに重みがくる杖をよく見ようと手をゆっくりと動かしてみた瞬間、くるんでいた布がパサリと床に落ちた。
ハラリ
「フフ・・・・もう1つは、呪われた杖だよ♪」
「へぇ〜〜!呪われた杖だなんて、かっこいーーーーーー」
布がはがれたあと、そこに残ってこちらに向かってこんにちは♪してるのは、木の枝に絡みつかれながら先端につく、何か小さな生き物の頭蓋骨だった。
しかも、その頭蓋骨もそれを覆う周りの木の部分にも気づけば布で隠されていたギリギリまであちこちに古い血の跡が見える。
「・・・・・・・」
デンドンデンドン デンドンデンドン
デレンドロン !!
その途端、聞いたことのある懐かしいメロディーが頭の中に流れた。
『 町民Aは、呪われてしまった !』
「ぎ、ギャァァァーーーーーーーッ!!!」
こんなところで、死亡フラグがいきなり立つんかぁぁぁーーーーーーーいッッ!!!!
ム○クの叫びのような真っ青な顔で、うっかり八兵衛☆で手にしてしまった呪われし杖を離そうと必死に動かして振り回すが、どういう仕組みになってるのか私の手から少しもちっとも離れない!!
ブンブンブンブンッ!!!
ハチが飛ばないッ!!!
「なんで!?なんでこれ手から外せないのッ!?」
『その装備は、呪われているから外せないようだ』
「くっ!!それかッ!!!」
確か、どこかの世界の武器屋のおじさんがそんなことを話していたっけ。
あぁ〜〜なつかしい!!
呪いを解くのは教会だっけ?
神父さんは一体どこにいますか?!
お願いですから、私の冒険の書を記録した少し前に今すぐ戻してくださいッ!!!
「クスクスクス・・・すごいね♪
ヘタしたら持つだけで呪い殺されてしまうこともあるのに、離れないってことは気に入られた証だよ。さすがだね♪」
「!!!???」
ヘタしたらって!
今、さらっと、なんてことを話してくれやがりましたかッ!!!
「な、なんでルークが触って平気で、私が触ったら呪われるわけっ!!??」
呪いのかからない装備とかって、あったっけ?!
「クスクス♪」
ルークが笑いながら呪いの杖を手にした私の手を両手で触れて、そしてぐっと顔を近づけてくる。
普段は閉じて?いるように見えて姿を見せない、長い睫毛に縁取られた両の深い紫の瞳がゆっくりと開かれて、私の目をまっすぐに射抜く。
「クスクス♪だって」
「だって?」
「僕・・・・・もう呪われてるから♪」
「くっ!!」
そうでしたぁぁぁぁっ!!!
あなたもうすでに十分呪われてました!!!
別口で呪われている者は、他の呪いには二重でかからない仕様かッ!!
しかも、呪い殺されてしまう未来じゃないかっ!!!
まさかの、ゲームにはあるようでなかった、2人で仲良く呪い殺されてね☆エンドのフラグか!!
「・・・・・・うぅっ!!」
拝啓 団長様。
愛するジークフリート様!
どうやらここからは、空と海と大地と呪われし町民Aの物語がスタートしてしまうようです。
「クスクス・・・呪われた気分はどう??
身体が結構重くて、かなり辛いんじゃない??」
「ーーーーーー」
えぇ。
ずっしりと今も腕に重みが来てて、正直こうして杖を持っていることすらも辛くなってきました。
これって、これからどうなるんですか??
呪われし町民Aは、一体何の旅に出るんですか??
「・・・・クスクスクス♪」
隣には暗黒オーラ満載の、闇の魔導士ルーク様のいい笑顔。
分かってたよ。
こうなることは、頭のどこかで分かってたけどッ!!!
あぁぁーーーーーーもうッ!!!
「ルークの大バカ野郎ぉぉぉぉーーーーッ!!!」
バリィィーーーンッッ!!!!
「!!??」
怒りに任せて、叫ぶとともに両手を力いっぱい上に放り投げたら、まさかの呪いの杖が手から離れてその勢いのまま、天井のガラスを割って外に飛び出した。
「・・・・さすがだね♪」
ルークが指をスッと胸元で素早く何かの文字をなぞると、ガラスの破片から身を守る薄い紫色のバリアーが2人の外側に現れる。
杖はそのままの勢いでさらに空高く舞い、そこで何十回とくるくるっと回転すると、今度はスピードをつけてまっすぐと杖の下の部分を下向きにして一気に落ちてきた!
「ギャァァァッ!!!」
クローディアの身体のすぐそばを通過しそうになり、思わず近くにいたルークに飛びついて避難する。
ズドォォォーーーンッ!!!!
激しい音とともに、辺りには煙が立ち込め、ここから遥か下に落ちた杖が今どうなってるのかは全く分からなかった。
「・・・・・・な、何なの?これ?」
「クスクス♪じゃ、見にいこうか?」
「えっ??」
ルークの手が自分の腰に回ったかと思うと、フワッと身体が宙に浮き、床のない空間をそのままゆっくりと降りていく。
「えっ?!ちょ、う、浮いてる?!な、何なのこれ?!」
あまりの高さに、落ちてはたまらない!とルークの首にしっかりとしがみついた。
「クスクス・・・積極的だね♪」
「な、何バカなこと言って!!っていうか、この方法があるなら、さっき自力で上がらなくても良かったじゃん!!」
「クスクス♪だって、簡単に登ったらつまらないじゃない?」
「るうぅぅぅぐうぅぅぅッッ!!!!」
「フフ・・・相変わらず、面白い顔だね♪」
「!!!???」
本気で今、この首に周りしてる両手を外して、この美しい白い首を思いっきり締めてやりたい!!!衝動と、必死で戦っております。
おかげで、顔がどえらく醜く歪んでおりますが、そんなことは知りません!!
この腸煮えくり返る、どす黒い感情をどうしてくれる!!
今首から手を離したら私の命の方が危ないからできないが、床に着いたらどうしてやろうかッ!!!!
「・・・・クスクス♪さ、着いたよ」
「つ、杖は?!」
「あ・そ・こ♪」
「!!??」
一番下の階はかなりの煙が立ち込めていたが、ルークが魔法で室内の窓という窓を開け開け放った為に一気に消えていく。
煙が消えた先には、ちょうど室内の真ん中の床に突き刺さる形で杖がそこにまっすぐと佇んでいた。
その床は突き刺さった衝撃により、隕石でも落ちたかのように杖を中心にして丸いサークルになって吹き飛ばされている。
「ーーーーーあっ!!」
そして2人がその杖に近づくと、杖の先端の部分のドクロにピシピシピシッ!とヒビが入り、その場で粉々に砕かれて破片が床に落ちた。
「!!??」
その中からは、クローディアが持つネックレスの石と同じくらい深い赤色の丸い手のひらにおさまるぐらいの大きい石が現れる。
「あ、あれはっ!!」
「フフ・・・・いよいよ、おでましかな♪」
次の瞬間、ドクロの代わりに杖の先端に収まった赤い石から、紅く輝く光が部屋全体に向かって一気に溢れ出した。
「な、何これッ!?眩しッ!!」
「・・・・・クスクス」
あまりの光の量に、クローディアが顔を腕で覆いながら反射的に目を閉じようとするとーーーーーーその視界の片隅で、大きな龍のような形をした燃え盛る鮮やかな赤い炎が現れ、杖の周りを勢いよく包み込む。
「!!!???」
その炎はこんなにそばにいてもそこまで熱さを感じないにも関わらず、とても力強く巨大なエネルギーに溢れていてーーーーーーー。
これまで見たこともないくらいに美しいと、心の底から思った。
「ボル・・・・ケーノ」
無意識にその言葉を呟いたクローディアの脳裏には、全身に響くようなどこか威圧感さえ感じながらもーーーーーー。
温かく、どこか安心する気持ちさえ生まれそうな、どこまでも低くそしてどこまても力強い声が聞こえた。
『我を呼んだか?我がーーーーー主よ』
書きながら、RPGをやりたくなる呪いにかかってしまいました。
そしてルークさんは一体いつになったら、心のうちを書かせてくれるのか。大量に書いた後に消されるのは、毎回落ち込みます




