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モブ女子、望まぬ目覚め。

いつも読んでいただき、ありがとうございます!


2人の王子のペアで番外編でも登場させようかなと、すでに今から考えてます。




その覚えのある痛みは、ランディ王子を救出してルークのところへ合流する為に来た道を戻っている最中に突然訪れた。




ズキンッ!!




「・・・・・・ッ!!」



頭が割れるかのような激痛に、両手で頭を抱え込みながらその場にしゃがみ込んだクローディアに、2人の王子が驚きとともに駆け寄る。



「クローディアさん、大丈夫ですか!?」


「おいブスっ!!こんなところで、何やってんだ!?」


「・・・・・ごめん、なさいっ」



頭痛とともに胸の奥に気持ちの悪いモヤモヤがだんだんと広がり、眩暈と吐き気まで襲ってきた。



この感覚は間違いない。



あいつが近くにいる!!




「ほっほっほっ。せっかくの貴重な贄を、逃してもらっては困りますな」


「!?」


「お、お前はっ!!!」




クローディア達の前に、ランディ王子を攫った黒いローブを被った老人が音も立てずに現れる。




「・・・・・・ッ!!」


「クローディアさん!?」


「ぶ、ブス、お前っ!?」




老人は1人1人に目を向けつつ、一見人の良さそうに見える笑顔を浮かべた。


だがその本質を知る者からすれば、そんなものは不気味な笑みにしか映らない。


その邪悪なオーラから2人を守る為、痛みと気持ち悪さをなんとかこらえ、クローディアがその前にふらつく体を叱咤して立ちはだかる。




「おやおや。これはまた極上の魂を持つ贄をわざわざここまでお連れして頂き、ありがたいことですじゃ」


「ふ、2人を・・・・贄になんか、するつもりはないっ!!」


「ほっほっほっ。あなた様にその気がなくても、あの方への贄にふさわしい魂を、このまま逃すわけにもいきませんでのう」


「近づかないで!!」



足音を立てず、床の上を滑るようにしてこちらへ近づいてくる老人に向けて、クローディアが魔法剣の魔法を発動させる。



「レ・リベラシオン!!」



言葉とともに氷の魔法が発動し鋭い氷の刃が何度も襲いかかるものの、氷が老人の足元を捉える前に老人がその場を素早くすり抜けていく。



「くっ・・・・ラ・リベラシオン!!」



すぐに炎の魔法も発動させるが、襲いかかる火炎に包まれても何の反応もなかった。



「そ、そんな」


「ほっほっほっ、なんですかな?この子ども騙しのような魔法は。あなた様らしくもない」



老人はそのままクローディアの眼前に瞬時に移動すると、その腕につけられたアクセサリーを見て笑みを深くする。




「なるほど。この神殿に充満した闇の気にあてられないよう、魔封じの腕輪をつけているわけですな。中々良い選択ですが、わしが近くにいればそんなものは何の意味もなしませんぞ?」



「・・・・・ぐっ!!!」



老人の言葉通り、彼との距離が縮まれば縮まるほど頭痛と気持ち悪さは強くなっていく。


それでも背後にいる2人を守る為、気力を振り絞りなが、、クローディアは魔法剣を力強く握りしめながら老人に向けて攻撃をしかけた。


だが、本来は立っているのもやっとの状態でいくら慣れない剣を振り回しても、老人にはかすりもしない。



「本来の魔力の高さが、仇となりましたな。さっさとその愚かで弱い人間の身体など捨ててしまってはいかがですかな?」


「さっきから・・・・なにをわけの、わからないことを!!」



痛みに耐えることで精一杯で、言葉の意味を深く考える余裕なんかどこにもない。




「あなた様と遊ぶのも悪くはないですが、大事な贄に逃げられてはいけないのでね。先に眠らせてもらいますぞ?」


「や、やめてっ!!」




ふわりとクローディアの頭上に浮かんだ老人が、その後ろで震えながらお互いを庇おうと手を広げて立っていた2人にその黒い瞳を向ける。




「「 うわぁぁぁっ!!!」」




老人の瞳が光ったと同時に、ラファエル王子とランディ王子にクローディアと同じかそれ以上の闇の力が襲いかかり、そのあまりの痛みに2人はそのまま失神してしまった。



「ラファエル様!!ランディ様!!」



すぐに2人のそばへと駆け寄ろうとするが、その間には宙に浮いたままの老人が立ちはだかる。




「ほっほっほっ。そんな脆い体では、さぞやお困りでございましょう?わたくしめが壊して差し上げましょう」


「!!??」



ローブの中からほとんど骨と皮でしかない痩せ細った老人の手が現れ、クローディアの眼前でその手の平を広げると、そこから野球ボールほどの黒い球体が現れーーーーーすぐさま弾けた。





「・・・・・・・・・ぁぁぁっ!!!」





弾けた途端、クローディアの腕につけていた魔封じの腕輪がいきなり弾けとび、その体の中に大量の闇のエネルギーが流れ込む。


全身の、ありとあらゆる細胞が悲鳴をあげていた。



骨が軋み、肉が引き裂かれるような強烈な痛みに襲われる、




痛い!!


痛いっ!!


やめてっ!!


嫌だっ!!


誰か、誰か助けてっ!!!




このままじゃ、2人が!!


せっかく、希望を見出した2人のこれからがこんなやつに奪われてしまうっ!!




そんなのは絶対に嫌っ!!


こんなところで、死にたくないっ!!


やりたいことがあるの!!


どうしても、守りたい人がいるのっ!!




会いたい人が、いるのっ!!




誰かっ!!




誰か助けてっ!!







ジーク、フリート様ーーーーーーーーーっ!!!











「ーーーーーークローディア?」




アヴァロニア城の救護室の中では、眠り続けるクローディアの側にジークフリートの姿があった。


彼女の声が聞こえたような気がして、目の前のクローディアの頬に添えるようにして手で触れてみるが、反応はない。




「・・・・・ここにいるのがお前ではないというのは分かっているが、本当のお前は今どこにいるんだ?」



彼女の姿形をした別物だというのはすぐに分かったが、2人の王子の側を離れるわけに行かず彼女を探しに飛び出すことは許されなかった。


手がかりとなる目の前のクローディアは眠ったままで、何度声をかけようとも起きる気配はない。


ボルケーノ様に呼びかけても何の応答もないことが、余計に不安を募らせた。



「頼むから、早く帰ってきてくれ・・・・ッ!」



クローディアの姿をしたその手を祈るようにして強く握りしめ、彼女に伝わるようにと心で呼ぶ。


その手から伝わる温もりは確かに人肌の温度があるはずなのに、普段の彼女の温もりを思い出すたびに冷たく感じてならなかった。












「・・・・・・・・・」




あまりの痛みと衝撃に耐えきれず、地面に倒れこんだクローディアはしばらく絶叫を繰り返しながらもがいていたが、その声が鎮まるとともに体の動きもおさまった。



「ほっほっほっ、死にましたかな?」



空中から地上に降り、床を滑るようにして老人がクローディアの側へと移動していく。



「人間という生き物は、本当になんと脆く儚い生き物であることか。悲しいですね〜〜」



声だけは哀れさを響かせ、その顔は侮蔑の冷たい笑みを浮かべた老人がクローディアの体に触れようとその骨張った手を伸ばすと、その手がわずかに震えていることに気がつく。



「おや?これは・・・・・?」




老人がそこへ視線を向けるのと同時に、その手の平が突然何かによって勢いよく貫かれた。




「!!??」




それは、太い木の枝。


緑の葉っぱがついた薄紫色の木の枝が老人の手の平から甲を貫いている。




「こ、これは・・・・・ッ!!」




その枝を見た老人の黒い目が大きく見開かれ、その中の赤い部分の瞳孔が開いた。




『ーーーーーーー貴様のような輩にこの身が触れられるなど、到底許しがたいことだ』




「!?」




その声は、倒れている人間の少女から響いた。


だがその響きは少女のものとは違って声音は低く、その音は耳ではなく直接頭に響き渡る。




「ほっほっほっ、これはこれは。ようやく目覚められましたな!」




老人を攻撃した木の枝は、いつの間にやらクローディアの周りに蛇がとぐろを巻くように枝や根がそれぞれに意識があるがごとく存在し、彼女を守るようにしてそばで動いていた。


老人は自分を刺していた枝を、もう片方の手に黒いナイフを懐から出して素早く斬り、その根を手から引き抜いて投げすてる。



だが、その手からは本来出るはずの血は一滴も流れない。




「あなた様の目覚めを、どれだけ長い間待ち望んだことか!まさか人の身にあなたの魔力を感じた時は、わしがおかしくなったのだと信じられませんでしたぞっ!!」



「・・・・・・・」




クローディアの体がゆっくりと立ち上がると、その指がある一点を老人に見えないようわずかな動きで差し、命令通り周りの木の根が2人の王子の元へと静かに向かっていく。


その間、老人は興奮し狂ったように笑いながらクローディアの周りを消えては現れを繰り返しながら、その周りを飛び回っていた。




『・・・・・・目障りな羽虫め。私は、目覚めるつもりなど微塵もなかった』



「ほっほっほっ!何をおっしゃいますやら!この神殿を残し、このわしを生かしておいたあなた様が今更なんの戯言を。さぁ、その脆弱な肉体をわしが斬り裂き、あなた様のーーーーーーッ?!」




老人が声を出せたのはそこまで。



気づけばその体は木の根と枝で全身身動きが取れないよう縛られ、その首から口元には木の根が柔らかくしなりながら巻きついてその声を封じていた。




『・・・・・・これ以上、貴様の下衆な声などこの耳に入れたくはない。消えろ』



「!?」




クローディアの右腕がまっすぐ老人に向かい、その眼前に手の平を広げる。


すると、老人の後ろからは鋭い歯のようなトゲのついた口を大きく広げた、巨大な植物が現れ老人を頭から襲いかかった。


その全身が棘の中に包み込まれ、しばらくその閉じた中で暴れている形跡が見えたもののすぐにその動きは止まり、植物がもう一度口を開いた時にはボロボロになった黒いローブというよりもただの黒い布だけが地面に落ちる。



その植物は、次に木の根が大事そうに包み込んでいる2人の王子へと向きなおった。




『・・・・・欲張るな、あれはお前の食料ではない』



クローディアの言葉が分かるのか植物は王子に向けていた体を彼女へと向けて、兵士が王に向けてするかのごとく頭を下げると地響きを立てながら地面の中へと潜り込み、その姿を消す。




『さて、次はあいつらか』




クローディアは眠ったままの2人の王子を木の枝で包みながら、神殿を静かに進んだ。


辺りに充満していた闇の気配は一切なくなり、神殿には清浄な風が立ち込める。





そんな彼女の全身を、エメラルドの輝きを放つオーラが包み込んでいた。


玄関に置いてあるミニバンブーが前の家ではすぐに枯れてしまったのですが、引っ越した新しい家ではすくすくと葉っぱか伸び、根っこが広がっています。


ついつい可愛くて、よく声をかけるようになりました。生きてる命をすごく感じます!

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