モブ女子、名前の分からない神
今回も読んでいただき、ありがとうございます!
ダンジョン内で時々見かける宿屋などは、大変助かりますが家計や身の危険は大丈夫なのだろうか?と、かきながらふと思ってしまいました。
神殿の中に入ると、まさにダンジョンというにふさわしいくらい迷路のように入り組んでいる場所になっていた。
もちろんダンジョンにつきものの宝箱もツボも道中にあったが、確かめようとしたらルークにやんわりと止められる。
「宝や道具以外のあらゆるものを見たいなら、覗きに行ったらいいよ♪」
「!?」
そのどこか意地悪そうな笑顔に、中に入っているものの予想がだいたいついて近づくのをやめたら、何も分からないラファエル王子がうっかり覗き込み、そこから様々な虫が溢れ出て私は危うく意識が飛びそうになった。
虫の大群を目にした王子はといえば、城では見たことのない種類の虫ですね!と、むしろ興味津々。
美少女としか思えない繊細な外見とは裏腹に、彼の心臓は兄よりも全然頑健だった。
ゲームのダンジョンにある宝箱やツボやタルの中に隠された宝物は、絶対にそこにボスがモンスターに命令して仕込ませたやらせではないだろうか?
しかもここまでの道のりの途中、この神殿に忍び入る野党やモンスター向けの罠として作られたのだろう様々な仕掛けがあった。
落とし穴とか毒針とか、岩が襲いかかってきたりとか。
その仕掛けのほとんどは、頭のいい2人が先に解読してくれるのでかわせるのだが、だからといって2人に任せきりでいると命に関わる危険のない罠をルークがわざと残して私をはめるのだ。
たまには楽したっていいじゃない!!
たとえばここにいるのがローズだったら、この男の対応もやっぱり変わってくるんだろうか?
たった今もルークいわく分かりやすいはずの罠をうっかり見過ごし、モンスターのいる壁の中にまんまと閉じ込められている。
「クローディアさん!?大丈夫ですか!!」
「フフ・・・・せっかくだから、渡してある魔法剣の性能でも試してみたらどう?」
壁の向こうから、ラファエル王子とルークの声が聞こえた。
思っているよりもこの壁は薄いらしい。
ルークに殴りかかるのはこの部屋を出てからにして、とりあえず目の前にいる敵をなんとかするしかない。
私の前にいるのは、赤いスライム。
スライムの中では最強に属する最終進化バージョンだ。
「・・・・・・ッ!!」
こいつの弱点はなんだったっけ?
色からしたら炎属性で、氷か水あたりだろうが最終進化ならそんな単純なものではなく、他にありそうな気がする。
ゲームの最後の方はレベルが高すぎて、弱点も何も通常攻撃の殴り合いでワンパンでKO出来た為、そんなことは考えたこともなかった。
旅の中でも最強魔法を唱えればだいたい一掃できたから、頭の弱い私の戦闘はどちらにしても知略とかはいっさいなしの力押しでしかない。
私は腰から魔法剣を抜くと、前に敵に向けて構える。
「レ・リベラシオン!!」
この剣の力を開放する言葉を放った。
剣に埋め込まれた宝玉が光り、氷の魔法が発動してスライムの体を凍らせる。
「キイィィィィッ!!!」
だが、その氷はすぐにヒビが入って割れて砕けた。
スライムにダメージはあまりなさそうだ。
スライムが大きく跳ねながら、こちらへとその体をぶつける為に体当たりしてくる。
「それなら、ラ・リベラシオン!!」
その攻撃を避けつつ、今度は炎の魔法を発動させるが結果はそんなに変わらなかった。
「ちょっと、どっちも効かないじゃんっ!!」
「あ、そうそう!赤いスライムは、外側からの攻撃にはとても強いよ♪」
「・・・・・そういうことは、先に教えてください」
いや、待てよ。
あのルークがあえて外側からの攻撃がと言葉にするということは、もしかしたらーーーーーー。
「よしっ!!」
私はもう一度魔法剣を構えて、スライムに飛びかかった。
その体に剣が突き刺さると同時に、呪文開放の言葉を唱える。
「レ・リベラシオン!ラ・リベラシオン!炎と水よ、合わされ!!」
赤と青の宝玉がどちらもが光ると、モンスターの内部が炎と水で掛け合わされた闇の魔力が黒いエネルギー体となってスライムの中で膨らんでいき、クローディアが剣を抜いて飛びさったと同時にその体が一気に霧散する。
「やったっ!!」
なるほど。
こういう使い方もできるのか!
そういえば、さっきまでモンスターが来たらどちらかの魔法剣に込められた魔法を開放するばかりで、単調な戦い方になっていたのかも。
まさか、それを教える為にわざわざ罠にはめたのか?
いやもう、そういうことは言葉で伝えてくれよっ!
まさか、他の機能がまだ眠ってるとかじゃないよね?
そういうのがあると、また変なところであの男の罠にはめられかねないんですけど!
「・・・・・・ッ!?」
魔法剣をじっくり眺めながらもその剣を腰に納めると、赤いスライムがいたあたりの壁に目が自然と引き寄せられる。
「これは、壁画?」
そこには、何かの絵が描かれていた。
歴史の資料集や映画の中でしか見たことのない、髪やデータと言った媒体の無かった昔の人々が遺した当時の記憶であり生きた記録。
その絵を見ていると、なぜか私の心臓の音がしだいに大きな音を立てて耳にうるさく響く。
ドオォォォンッ!!!
「!?」
その時、破壊音とともに爆撃が起こり、その中からルークとラファエル王子が現れ私の側に歩いてくきた。
「すごいですね!クローディアさん!」
「これは、古代の人々が遺したものだね」
2人の目にも、その壁画が映る。
やっぱりすぐに扉を開けられるのに、この男はわざと閉じ込めたな!
「なに?すごい顔して睨んできて。よかったじゃない、色んな戦い方が分かって」
「うるさい!ランディ王子を無事に助けだしたら、覚えてなさいよ!」
「フフ・・・・じゃ、君が会いに来るのを楽しみに待ってるね♪」
「くっ!!!」
絶対2・3発はげんこつで殴りに行ってやる!!と心に決める中で、ラファエル王子が壁画へと静かに近づいてその壁にそっと手を触れた。
「これはまた、神秘的な壁画ですね。ここに描かれているのが古代の人々で、その上空に描かれているのが神々ですね」
「神々?」
「はい。この上の方に描かれているのが、火の神ボルケーノ様。そのななめ後ろににいるのが氷の神のイヴァーナ様にウンディーネ様だと思います」
ラファエル王子が、1つ1つの壁画の絵を指差しながら教えてくれる。
確かに言われてみれば、その特徴がちゃんと描かれていた。
人々はその神々に向かって跪き、頭を下げて崇めている。
「じゃあ、こっちの上空に描かれているのはもしかして女神・ナーサディア様?」
長い髪を持った、美しい女性が両手を人々に向けて広げて微笑んでいる姿がそこにはある。
「はい、そうです!あれ?おかしいな。こことここ、壁画が割れて砕けてるけど多分他にも神々が描かれてるはずなのに、その名前が分からないです」
「・・・・・分からない?」
ルークが、その部分をまっすぐに見つめながらラファエル王子に問う。
「はい。この壁面に触れていると、色んな情報が流れてくるですが、神々の名前の部分に雑音のようなものが入って、聞こえてくるのに分からない名前がいくつかあるんです。こんなこと、今まで一度もなかったのに」
「・・・・そっか。それならとりあえず、先に進もうか?」
「そ、そうだね!早くランディ王子のところへ行こう!」
落ち着かない様子のクローディアが慌ててその場から出て行き、その後をラファエル王子が追いかける。
「名前の分からない・・・・神か」
ルークはその部屋を出る際にもう一度その壁画へと目を向けるが、その答えはルーク自身にも分からない。
ランディ王子をさらっていった、恐らくは魔に属するだろう老人に会えばその答えが出るのかもそれないが。
彼の頭の中でも何か、警鐘のようなものをこの神殿に入ってからずっと感じているものの、それが何を指してのものなのかがまだ見えていなかった。
今は攻略本やネットがあるから、大変便利でありがたいですよね!
小さい頃は全部自力でやるので、本当に1つの謎解きにすごい時間がかかったものもあり、本気で分からないとクラスの男子に勇気を振り絞って聞いていました。




