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モブ女子、本当に欲しいもの

いつも読んで頂き、ありがとうございます!!


すみません。サブストーリーとは言えなくなってきて、普通に本編のような感じになってます。

散々泣いて彼の気持ちが落ち着いた頃、私はランディ王子を中庭へと連れて移動し2人でベンチに座る。



もちろん道案内は近くにいたお城の兵士さん。


ここは気持ちのいい風を感じながら大空と王都を一望できる、エリザベス一押しのスペシャルな場所だ。



そんな中で私は彼に自分のことを話した。


実は前世の記憶があり、それを思い出したと同時に魔力が突然現れて驚いたこと。


まさかの神様を召喚し、その力を貸してもらえるようになったこと。


旅の間で色んな街や村に行き、色んな人に会えたこと。





それを黙って聞いていたランディ王子は、ぽつりぽつりと自分のことを話してくれた。


両親のことや、周りの人達のこと。


お母さんのことを話す時は本当に苦しそうで、私は思わず彼の体をもう一度しっかりと抱きしめた。


暑苦しいからあまりくっつくな!!と口では言うものの、体はおとなしくその腕を振りほどくことはない。



そしてーーーーーーー。




「たぶん、ランディ様のお父様はあなたに見せたかったんじゃないかな?」


「どういうことだ?」


「うん。世界は広いから、今在る目の前の世界が全てではないってこと。グランハット王国では魔力が高くて特別なあなたが、アルカンダル王国は同じぐらいの人がゴロゴロいて何にも特別じゃないし。むしろ他の国にはもっとすごいものがたくさんあるってことを王子に見せたかったんじゃないのかな?」


「!?」



話を聞く中で、ランディ様のお父様は確かに目に分かるように溺愛するわけではないけれど、彼を息子として愛し大事にしているように思った。


彼の持つ力も、母親のように怖がったり拒否するのではなくて、彼の個性として認めてくれているような気がする。


確かにアルフレドの変化を見てこの国へ送り込むことを決めたのかもしれないが、そうでなくては魔法使いが国の3分の1ほどを占めるこの国には連れて来ないんじゃないだろうか?


魔法院にはその長であるルークを初めとした(彼は特にだが)まさに化け物級の魔法使いがゴロゴロいるのだ。


ここではスライムを召喚することなど、子どもの遊びのように思われるだろう。



「・・・・・でも、新しい母上はまたぼくを怖がってしまうかもしれない」


「!?」



そう、彼が1番気にしているのはここだ。


他の人のことも確かに気にはしているだろうけど、彼の中ではそこまで重要ではない。


彼が真に心から求めているのは、自分を拒絶せずありのまま受け入れ愛してくれる『母親』だ。


子どもにとって『母親』は、その世界のほとんどを占める。


たとえ自分を拒否するような母親であっても、子どもは腹を痛めて産んでくれた母親の愛を求めて、その愛を得るために必死に頑張ろうとするのだ。




「どんなお母さんが来るの?」


「・・・・・さぁ。名前もまだ父上からは聞いてないよ」


「そっか。そしたら、どんなお母さんだったらランディ様は嬉しい?」


「え?」



あなたは、どんな『お母さん』を望む?



「・・・・・ぼくは」



ランディ王子はしばらく考え込んでから顔をあげてベンチから立ち上がると、王都をまっすぐに見つめながら口を開いた。



「ぼくが悪いことをしたら怒っていいし、ケンカもたくさんしてもいいから、ぼくと一緒に生きてくれる人がいい」


「!?」


「もちろん、魔法のことを受け入れてくれたら1番うれしいけど。そうじゃなくて、ごはんを食べたりベットで本を読んでから寝たり、遊んだり勉強したり。そういう他の人からしたら普通かもしれないことが一緒にできる人がいい」


「・・・・・ランディ様」


「これってやっぱり、ぜいたくなお願いかな?」



ランディ王子は恥ずかしいのか、照れた様子で頬を赤くしてうつむく。




それは、ずっと願っていたことだった。


王都でたくさん見かけた、どこにでもあるような親子の姿。



いたずらをして母親に追いかけられながら怒られている街の子どもも、一緒に手を繋ぎながら街を歩く姿も、遊び疲れて寝てしまった我が子を抱いたりおんぶしながら家へと連れて帰る母親との光景も。


その全てが眩しく、心から羨ましいものとしてランディ王子の目には何度も映った。




城にいれば、おいしいごはんは食べられる。


着るものに困ることはないし、欲しいと望めばどんなに高価なものでも手に入る。


でも、1番欲しいものは誰も与えてはくれなかった。




「・・・・ううん、それは全然ぜいたくなんかじゃないよ」



ランディ王子の言葉に、クローディアは自身の過去を思い返す。


前世は特にだが、現世もそこそこお転婆だった小さい頃はよくお母さんから怒られていた。


これまでおしりを何回たたかれたことか。


それでも、ごはんもお風呂も寝る時も昔はえつだって一緒だった。


そのことはいつだって当たり前で、ありがたいと感謝できたことはあまりなかったかもしれない。




「大丈夫!絶対、そういうお母さんが来るよ!」


「・・・・・・バーーカ!絶対なんてこの世にはないぞ、ブス!」




いくら不敵な笑みを浮かべても、顔を赤くしながらじゃ可愛いだけですよ?


顔をそらした王子の、わずかに見えた口元が少しだけ笑みになっていたような気がして、私は笑いをこぼした。



「だから、私にはクローディアって名前があるんだけど?それに言葉には言霊って言って、口に出すと力を持って叶えてくれるんだから!」


「ことだま?」


「そう。プラスの言葉もマイナスの言葉も、口に出したことが叶うようになってるんだって」



魔法がなかった世界でも、言葉の力はとても大事にされていた。


願いは叶う。


現に『空が飛びたい』というかつての願いは、時空と時を超えて見事に叶ったのだ。




「・・・・・口にだしたことが?じゃあ、お前なら何を願うんだよ、ブス!」


「ブスは余計だってば!えっと、私はね〜〜」




ニコニコしながら、今は何を願おうかと楽しみながら考えていたその時ーーーーーーー。





それは、何の予兆もなく私の身を襲った。





ズキンッ!!!!





「・・・・・・ッ!?」


「ん?どうした?」



突然、私の頭をまるで頭の中から鉄のハンマーで叩かれているかのような激痛が走る。


それと同時に激しい気持ち悪さが胸の奥からに広がり、私は中庭の地面に頭を抱えこみながら倒れこんだ。




「お、おい!!ブス、しっかりしろ!!」


「・・・・・・アァァッ!!!」



目の前で真っ青な顔色をして倒れたクローディアに驚いたランディ王子がそばに駆け寄るが、クローディアは襲いくる激痛に悲鳴をあげるだけ。



「だ、だれか!!だれかいないのかっ!?」



先ほどまで、すぐそばにいたはずの兵士達はすでにその場で眠ったように倒れており、意識がない。


周りからは音がいっさいなくなり、怖いぐらいの静寂の中でクローディアの悲鳴だけが響いていた。




何なの、これはっ!?


助けてっ!!


ボルケーノ!!イヴァーナ様っ!!




激痛の中で、なんとか神達へと助けを求める。




(今すぐにこの場から逃げろ!!クローディア!!)


(我らの力が抑えられている!!この魔力は危険だ!!)




「・・・・・・うアァァッ!!!」




(我が主よーーーーーー!!)




神達の声はなんとか聞こえるもののこの場には現れず、痛みはさらに容赦なくクローディアへと襲いかかり、神達の声もついに遠くへと響いては消えていく。




「ぶ、ブスっ!!待ってろ!今すぐ、あの強そうな騎士を連れてきてやるからな!」


「・・・・・・ほっほっほっ、いけませんな〜〜〜」


「!?」




その時ーーーーーーランディ王子の前に、子どもような背丈で黒いローブに全身を包んだ、手足が痩せ細った老人がしわがれた声とともに現れる。


音も立てず、気配さえも感じさせずに突然現れたその老人の男性に、ランディ王子は本能的な恐怖を感じて体を一気に強張らせた。



「・・・・おう、じ、にげ・・・・てっ!!」



痛みをこらえつつ、何とか身体を起き上がらせたクローディアが王子をその背に庇うようにして老人との間に入る。




「おや?これはーーーー様ではありませんか?」


「!!??」




ズキンッ!!!!!




老人の、本来は白い眼球の部分が黒く、その中心部は深い地の色をした瞳とクローディアが目が合うと、頭痛と吐き気がさらに増した。


クローディアのその姿を見た老人の蛇のような目が、喜びに細く笑みを作る。




「ほぉ?素晴らしい!すでに他の神々を目覚めさせているとは、さすがはーーーーーー様でございますな」



「・・・・・・あぁぁぁぁっ!!」




痛みのせいで、老人の声が全部聞き取れない。




「ですが、まだ目覚めるには不十分なご様子。ほっほっほっ!」


「な、なにを・・・・・・言って!?」


「うわぁっ!!!」


「王子ぃぃっ!!」



そして老人は、ランディ王子を黒いローブから出ている節ばった指から黒い触手を何本も伸ばすと、彼をその場から一歩も動かずに自分のもとへと引き寄せ、全身をその黒いもので覆って拘束した。



「古代神殿でお待ちしておりますよーーーー様」


「まっ!!・・・・・マーーズッ!!!」



叫ぶようにしてその名を呼び炎の鳥を出現させるが、マーズは老人の体に触れた途端にかき消える。



「なっ・・・・・・!!」


「それでは、また後でお会いしましょう」



好々爺のように笑顔を浮かべた老人の後ろからは黒く丸い空間が現れ、その中へと2人は静かに消えていった。




「王子ぃぃぃーーーーーーッ!!!」




必死でその手を伸ばし、炎も氷の魔法もどれだけ声を絞り出して発動させてもその空間の前では霧散し、彼らを止めることは叶わずクローディアの悲鳴だけが空に響きわたる。








その後ーーーーーーークローディアの意識は痛みとともに失い、中庭で1人倒れているところをようやく目覚めた兵士に見つかり、急いで城の救護室へと連れて行かれた。

また新たな敵が出てきてしまいました。


しかも魔法が効かないという。


ゲームでも魔法が効かない敵がいると大技が使えなくて、かなりもどかしいです。

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