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モブ女子、生まれ落ちた場所

今回も読んでいただき、ありがとうございます!


少し短いかもしれません。


ぼくの名前はランディ・ラル・シ・アンブリッジ。


グランハット王国の現国王である、セイアッド王とクラリス王妃の間に生まれた1人息子。




ぼくが生まれた時、母上の周りにはたくさんのモンスターが突然現れそのあまりの光景に気を失った母上は、それからは実の子であるぼくを魔性の子として怖がり近づかなくなった。


母上は貴族のいわゆる箱入り娘で、両親からとても大事に育てられモンスターなど見たこともない人だった。


幼い頃のぼくを直接育てたのは国で唯一の高位の魔法使いである高齢のじいさんで、それも今思えば実験動物のような扱いだったと思う。


物心ついた頃、魔法使いのじいさんが亡くなりぼくは再び両親の元へと戻された。


第一皇子としてのぼくを父上はなんとか育てようとしてくれていたが、母上はぼくを見て「お前なんか私の産んだ子じゃない!あの子を返して!!」と会うたびに泣き叫ばれ、一度もその手にぼくを抱くことはなく、『化け物を産んだ母親』という事実に耐え切れなくなった末に湖へとその身を投げた。



そう、ぼくのせいで母上は死んだ。



だけど、そのことで父上がぼくを責めることは一度もはなかった。


いっそのこと責めて憎んでくれれば、いつだってぼくも母上と同じところへ行ったのに。


そして周りのメイドや兵士達が、ぼくを遠巻きから奇異の目で見ることが何よりも辛かった。


みんなぼくを腫れ物に触るように自ら関わろうはせずに、ぼくがいたずらを仕掛けなければ側にも近寄らない。


そのいたずらも悲鳴をあげて驚きはするものの、ぼくを叱ったり反撃してくるような人間は国王である父上を恐れて大人も子どもも1人もいなかった。



だから、こんな頬の痛みは知らない。



あんな風に感情をぶつけられて、どうしたらいいのかなんて分からない。



「・・・・・くそっ!!」



ランディ王子はとにかく外に出ようと廊下を走り続けたが、何も分からない城の中ではどの道が外へ通じる場所なのかも分からず、闇雲に足を走らせる。


途中、見張りの兵士に見つかるが幻影つきのスライムをそのつど召喚しては逃げきった。



「へへっ!お前らなんかに、つかまるもんか!!」



この国に来る少し前に、父上からもうすぐ新しい妃を迎えることを聞いた。


形式上、自分とは血の繋がらない母親になる。


その女が父上と子どもを作って産めば、その子は自分以外に初めてとなる正式な王位継承者だ。


自分のような異端の王子ではなく、皆と同じ普通の人間の王子。


そうしたら自分の居場所など、あの国にはどこにもない。


いや、だからこそこの国に父上はぼくを連れてきたんじゃないかと思っている。


用無しになったら、いつでも国を出て行かせられるようにと。




だったら、直接そう父上から言ってくれればいいんだ。


出て行けと、一言そう言ってくれればいつだって、あんな国などこっちから喜んですててやるのに!!




「!!??」



その時、突然目の前にランディ王子よりもひと回り大きな背丈を持つ炎の鳥が目の前に現れて、その足を止める。



「な、なんだ!?モンスター!?ぼくは召喚なんかしてないぞっ!?」



無意識に呼び出してしまったことも何度かあるが、それでもこんな立派で力の強そうなモンスターを呼び出したことなど一度もない。



「その子は私が呼んだんですよ、ランディ王子!あぁ、やっと追いついたっ!!」


「お前はっ!?」



後ろを振り向けば、先ほどまで一緒にあの部屋にいた庶民の無礼女が息をきらして自分に向かって走って来ている。



「ま、まさか!お前も召喚ができるのか?」



グランハット国では、自分と同じような人間は1人もいなかった。



「うーーーーん、これも召喚になるのかな?一応魔法が使えるんで、その子も炎の魔法なんですよ」


「・・・・・お前、魔法使いなのか?」



グランハット国では魔力を持つものよりも武力を扱う者が多く、正式な魔法使いと呼ばれる存在は亡くなったじいさん以外はほとんどおらず、魔力の高いものは火をつけたり水を凍らせたりなど、生活に取り入れるぐらいの存在だった。


ここは、こんな庶民の小娘が普通に魔法使いとなれるぐらい全体的にも魔力が強い国なのだろうか?



「まぁ、そうですね。神殿で転職した覚えはないですが、魔法使いになると思います」


「・・・・そうか。お前はその力で、まわりからこわがられたりはしないのか?」


「え?」


「お前の母親は、力のあるお前でもちゃんと育てたのか?」


「あ、はい。私の魔力は、最近目覚めたものなので」


「・・・・・・そういうことも、あるのか」




どうしてぼくの魔力は、生まれた時から生じていたんだろう。


どうしてぼくは、魔力が一般的なこの国で生まれず、魔法に知識のある女性がぼくを生まなかったのか。


どうしてぼくのまわりには、この女のように魔力を普通にあつかうものが周りにたくさんいなかったんだ?




「ら、ランディ王子?」


「うるさい!!ぼくに近よるな!!」




近寄るな!と言ったのに、女は近寄ってくる。



「来るなと言うのが、聞こえないのか!!」



女から逃げたいけれど、足が疲れてもう動けないし、召喚を兵士たちに向けて使いすぎたせいか体がズンと重く感じてしかたがない。


それから、なぜかだんだんと視界がぼやけて上手く周りが見えなくなったと思った瞬間、ぼくの体はとても暖かい何かに全身が包まれた。



「・・・・・は、はなせ!!ぼくに気安くさわるんじゃない!!」


「嫌です。ランディ様が泣き終わるまでは、離しません」


「・・・・・く、くそっ!!お前みたいな無礼な女は、だいっきらいだ!!」


「嫌いでいいですから、今は側にいさせてください」


「!!??」




女の腕の中は、信じられないほど温かかった。


体どころか心の中までポカポカしてきて、ぼくの目からは涙が止まらない。


こんな風にほかの人間にだきしめてもらうなど、いったいいつぶりのことだろうか?





本当はずっと、あの人にこうしてもらいたかったなのに。




「・・・・・うっ、うっ、うわぁぁぁーーーーーーーッ!!!」




声をあげて泣いたのは、その母上が死んだ時いらい初めてだった。

私はよく、好きでお姉ちゃんに生まれたわけではない!と、お姉ちゃんでしょ!と言われるのが嫌で嫌でたまりませんでした。


なんでお姉ちゃんに産んだのか!なんてよく恨んだりしてましたが、妹がいたから1人のさみしさが少なくてすんだのだと後から思いました。

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