モブ女子、個人情報保護法を希望します!!
いつも読んで頂き、感謝です!
ルークさん、とてもイキイキしております♪
目の前には見慣れた騎士院があり、いつものように皆が変わらず訓練をしている姿が目に入る。
その中で皆に声をかけながら、あの人のいる部屋に行くのが今の私の日常の1つ。
時々、いや、割と頻繁に目的の人が中にいない事が多いんだけどね!そこは運次第ですよ!
あの頃の私には想像、いや妄想?はできても、決して叶えられることはなかった、奇跡みたいな幸せな日々ーーーーーー。
ほら、このドアを開ければ今日も大好きなあの人が待ってる!
きっと今日も、運がよければ山のような書類の中で黙々と真面目に仕事をしているに違いない!
そんなところも大好きで、全てが大好きで仕方がないあの人が!!
『ジークフリート様ッ!!!』
バンッ!!!
勢いよく目の前の扉を開くと、そこには思った通りにあの人がそこにいた!
やった!!今日はツイテル日だ!!
『・・・・あぁ、クローディアか。待っていた』
『えっ!?』
『実はお前に、言わなくてはならないことがあるんだ』
ジークフリート様が、椅子から立ち上がって私の方に近づいてくる。
ドキドキドキドキッ!!
何これ??これは夢?夢なの??
『すまない。本当はもっと早く言おうと思っていたんだが・・・・』
『!!??』
まさか!まさかぁーーーーッ?!
『この人が俺の愛する女性、ローズだ』
へ?
『・・・・・えっ?』
『こんにちは!クローディアさん♪
私、ローズ=カロリーナっていいます!』
気がつくと目の前にはーーーーーー。
実際に見ると大変に違和感があるものの、不思議と見慣れた、肩までのピンク色の髪に栗色の瞳を持つ、くりっとした大きな目と明るい笑顔の・・・・ゲームの主人公がそこにいた。
『ローズはまだ騎士院に不慣れなんだ、よろしく頼む』
『クローディアさん♪これからよろしくお願いしますね!』
ニッコリ♪
無邪気で純粋な笑顔が、そこにあった。
『そんな・・・・よろしくって・・・』
あまりのことに思考が一切停止したわたしの前でローズが団長の腕に手を回し、幸せそうに笑っている。
そしてそのローズを、団長は暖かくも優しく甘い顔で見守っていた。
なんですか、その顔は?!
そんな顔、ゲーム中で一度も見たこともなかったですよ!
あまりに素敵で、ついつい惚れ直しました!
そうだ。幸せそうな団長の、これはわたしが望んだ通りの未来。
望んだ通りのーーーーーーー。
『よろしく、なんて・・・・』
そして、次の瞬間。
団長のあの大きく、少しゴツゴツしてるが暖かい温もりにあふれた手の平が、ローズの頬に添えられ、顔がゆっくりローズへと近づいていく。
『よ、よ、よ、よろしくなんて、できるかぁーーーーーーーーーッ!!!!!!』
ガバァッ!!!!
勢いよく叫んで起き上がると、目の前には騎士院ではなく、私もクローディアも見たことのない何やら怪しげな薬や道具がそこかしこの棚に並ぶ光景がそこにあった。
「・・・・・・ハァ、ハァ、ハァ。どこ?ここ」
あまりに全力で叫んだせいで、息が整わずに全身で呼吸をしながら周りを見渡しても、団長とローズの姿はどこにもない。
「もしかして、夢だったの?そっか!夢なんだ・・・・・夢で、夢で、良かったぁぁぁぁーーーーーーーーッ!!!!!」
喜びのあまり、ここがどこなのかも気にならず、ひたすら声をあげて泣きじゃくる。
「・・・・・クスクスクス。そんなに目覚めたことを喜ぶなんて、どんな夢を見ていたのか、教えて欲しいな♪」
「!!??」
あんなに溢れ出ていた涙が、一気に引っ込んだ。
「フフ・・・・また会えたね。クローディア=シャーロット♪」
「・・・・・ッ!!??」
神様、仏様、女神様。
先ほどの夢になんか、死んでも戻りたくはありません。起こしてくださって、心より感謝してます。
でも、なせですか??
なぜ悪夢から目覚めたら、私の目の前に死亡フラグがいるのでしょう?
「る、ルーク=サクリファイスッ!!!!」
「クスクス・・・・ようこそ、魔法院へ。クローディア」
「ま、ま、魔法院ッ!!??」
そんな!?
魔法院には、死んでも行かない予定だったのに!!
いつのまに寝て起きたら、魔法院に自動移動??
どんな、○えもんの道具ですか?
そういえば、私がさっきまでいたのはナーサディア様の神殿だったよね??
あれ??
なんで私、そもそも寝てたの??
「クスクス・・・どうして神殿にいたあなたが、ここにいるのかを悩んでるのかな?」
「!?!?」
え?!何ッ?!
今の私口に出して話してないよね??
またもやエスパーですか??
心を勝手に読みやがったんですかッ?!
「フフ・・・・君が持つ、他者を癒す力を使いすぎたんですよ」
「そう、ですか」
コントロール不可能な気まぐれ能力ですからね。使いすぎとか言われても、何をどうしたのかすらもわかりませんよ、持ち主であるこっちは!
この、癒しの能力が、どこまで相手に影響してるのかも分からないのにーーーーーーって、あれ?
「ーーーーーールーク様、あの、今なんて?」
「クスクス・・・・君の持つ、人を癒す力。それは君の魔力を使って発動されてるものだからね。魔力を扱う魔導師の頂点たる長の僕が、まさか気づいていないとでも思ったのかな??」
「・・・・・・」
バ、ば、ばれたぁぁぁーーーーーーーッ!!!!
まさかの!
こんなところで死亡フラグ発動ですか?!?!
この後進むのは、特殊能力があるゆえの実験動物エンドですかッ?!
それとも、他国に売り飛ばされるエンドですかッ?!
「・・・・・クスクス。君、さっきから色んな顔して面白いね。別に何もしないよ」
「ーーーーーへ?」
「フフ・・・・まぁ、少しは君の力がどんなものか、調べちゃうけどね♪」
ガーーーーーーーン!!
やっぱり実験モルモットエンドじゃないかぁぁぁーーーーーッ!!!
「クスクス・・・・ひどいなぁ。僕はけっこう君を気に入っているのに」
「マニアッテマス」
「クスクス・・・・ねぇ、君。アルベルト王子に触れているとき、体のどこかに違和感がなかった?」
「!!??」
ベットで座ったままの私のそばに来ると、ルークは初めて会った時のようにその真っ白な美しい指で私のアゴに手を添え、自分の方に向けた。
まさかの、こんなところで、
人生二度目のあ・ご・ク・イ!!!
どうして、トキメキ満天のこの相手が団長じゃないんですか??
乙女の夢のシチュエーションですよ??
「僕に断りもなく、たくさん触らせていたんだから、わかるでしょう??」
「!!??」
何デ、アナタノ了解ガイルンデスカ??
あまりに意味不明のことをいわれて、思考がストップする。
だが、よくよく思い出してみれば、確かに触れられたところがピリピリしていた。
途中からそれどころではなくなって、痛みなど、気にもしてなかったんだけど。
「そういえば、確かに少し痛みました」
「クスクス・・・・やっぱり♪」
何がやっぱりなんですか??
あぁ、なんだかあなたのいい笑顔が、身近にいる誰かさんによく似ている気がしてなりません。
「あなたの力が、毒に対してどう働くのかをちょうど気になってたので、毒に侵された人間を作る手間が省けました♪」
ニッコリ♪ニコニコ♪
「はいーーーーーー???」
今さりげなく、いい笑顔でものすごいことをさらっと言いやがりましたよ!この人!!
「クスクス・・・・でも、今のあなたでは毒を少し中和するとともに、あなた自身も少しずつ毒をもらってしまったようです」
「えっ!?」
あごにあった指が、フェイスラインを通って、ゆっくりと首に降りていき、そしてそのまま指は鎖骨の真ん中で止まる。
「・・・・・・んっ」
「クスクス」
肌を指の動きがあまりにゆっくりとなぞるので、何やら身体がくすぐったいような、むずがゆいような、変な感覚がした。
「アルベルト王子の毒を身体に受けて倒れていたので、僕が治してあげたんですよ♪こうやって、魔力を使って・・・・ね」
「!!??」
鎖骨にあった指が、その場で素肌に何やら文字を描く。
ルークの指先はとても冷えていて、ひんやりした指が肌に触れるとゾクッと身体が震えた。
文字を書き終わると、その字が光りを放って金色の粉のような光の粒のようなものに変わり、私の頭の上から降り注ぎ身体に触れると同時に消え去った。
「・・・・・きれい」
「クスクス。これぐらいの毒ならば、魔力で簡単に治せるからね♪」
「あの、毒を治してくれて、ありがとうございました。ルーク様」
確かに身体が不思議と軽くなった。
死亡フラグはごめんだけど、してもらったことにはちゃんとお礼を言わないとね。
ありがとうとごめんなさいを素直に伝えることは、人との関わりの中で1番大事な基本です!
「クスクス・・・・それ、いらない」
「へっ??なんですか?ルーク様」
「だから、それ、様はいらないよ♪」
「えっ?!いや、でもルーク様は魔法院の長ですし!!」
「クスクス・・・・ルーク」
「!!??」
ずいっ!!と、あごくいに指を戻したルークの顔が急に目の前に現れる。
いや、本当に近っ!?
恋人同士がキスでもしそうな距離ですよ!!
今すぐにやめてください!!
するならば、私はジークフリート様とキスがしたいです!!キャッ♡言っちゃった!
確かにめちゃくちゃ顔はきれいで、美形ですけどね!!
ハッ!!!!
なんだこれ??
なんで日焼けもしてなければ、シミもシワも一切ない、陶器みたいな透明感抜群の肌なんかしてるんですかッ!?
普段、使ってる化粧水とクリームはなんですか?!
「クスクス・・・・ルーク♪」
「!!??」
だ、だから、本当に近いってッ!!!
心臓が変な音してるじゃないか!!
しかも、なんであなたそんなにまつげが長いんですか〜〜羨ましいッ!!!!
「・・・・・・・る、ルークッ!!」
あと少しでキスされるっ!?と、思わずキツく目を閉じて、必死な声で叫んだ。
「クスクス・・・よくできました」
チュッ
と、そのとたん、音を立てて柔らかい感触が触れたのはおでこで、目を開けた先にいたルークは満足気にニコニコ笑っていた。
「ひ、人をからかうのはやめてください!!」
クソッ!!
こんなところでデコチューなんて聞いてない!!
ちなみに、顔が赤くなってるのは慣れてないからだからね!
ときめいたからじゃないから!勘違いしないでよね!!
「クスクス・・・・あ、敬語も禁止ね。
もし、破ったら」
「わ、わかった!!敬語もやめる!!タメ口にする!!するから、だからそれ以上近づいて来んなッ!!」
なんなんだ!こいつは!!
アラサーだって、恋愛してない時期が長けりゃあ免疫力だって落ちるんだよ!!
しかも、向こうの世界じゃ見たこともないようなキレイな顔が近づいてきたら、心臓がビックリするに決まってるじゃないか!!
だから、団長!
これ浮気じゃないですからね!?
愛してるのは、昔も今もあなただけです〜〜〜〜!!
頭の中で、団長に対してスーパー土下座をして必死に謝っていると、隣にいたルークがまたクスクスと私の姿を見ながら小さく笑う。
「クスクス・・・君って本当に、面白いね」
「失礼な!私は普通の女子です!」
そう、普通(見た目だけなら10代の若いピチピチの女子)です!!
あれ??ピチピチってもう死語だっけ??
「フフ・・・そういえば、君面白いものを身につけてるね。そのネックレス、どこで手に入れたの?」
スッーーーと、ルークのキレイな指が、私の胸元で光る赤い石を指差す。
「あぁ、これは、お母さんにお守りだってもらって」
「へぇ〜〜〜〜お母さん、ね」
「恋のおまじないの石だって話してたけど、ルークもこの石を知ってるの??」
「フフ・・・うん、知ってるよ。他国にある常に火を吹いて燃え盛っている山の中でしかとれない不思議な石で、その石自体にも炎の守護がついてる」
「そうなんだ!それは知らなかった!」
この石はとても深い赤色をしているから、火の魔力があると言われても確かに!とすんなり納得できてしまった。
「クスクス・・・死の山は吹雪が常に吹き荒れる場所だから、その石は役に立つと思うよ」
「そっか!死の山で役にた・・・・・・・・」
「クスクス。どうしたの??」
「・・・・・・・・・ひいぃぃっ!!!」
私の動きと言葉が同時に止まり、そしてすぐさま全身が恐怖に震え上がった。
神様、仏様、女神様、これは死亡フラグですか?!
恐怖のストーカーエンドですか?!
なんでいきなりホラーフラグを立てましたか??
私はホラーが死ぬほど嫌いです!!
そして私はモブの町民A子。
ストーカーされるようないわれも、女の魅力も、恋愛のいざこざも全くございません!!
なんでこんな、行動に思考まで笑顔でさらっと読んでくるような、最高に怖い刺客を生み出しましたかッ??!!
「ーーーーーーち、ちなみに、ルークはなんでそれ、知ってるのかな?」
「フフ・・・・それは秘密です♪」
「!!??」
ちきしょぉぉーーーーーーーっ!!!
いい笑顔しやがって!
その秘密の花園に今すぐ帰れ!!!
そのセリフが許されるのは、私も大好きだった某赤いバラの人と、某謎の神官様だけですッ!!
「クスクス・・・面白いね♪」
「ーーーーーハァァァ。全然、何にも面白くない!」
ベットの上でグッタリとうなだれるクローディアと、その横ではルークが相も変わらずニコニコと笑いながらそんなクローディアをとても楽しそうに見つめていた。
そして、その光景を見ていた人がもう1人。
「フフ・・・・まぁ、これぐらいのおいたなら許してあげるわよ、ぼうや♪」
クローディアの身につけいる深紅の石が、キラリと光った。
書きながら、自分も攻略情報をバッチリ見ながらゲームをする方ですが、相手からしたら行く場所も思ってることも、話す言葉も相手に知られてるってことだよな、と。
逆だだったらかなり怖いな〜〜とか、思いながら書きました。
ルークさんのターンが、次まで続くかと。




