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モブ女子、新たなフラグ

今回も読んでいただき、ありがとうございます!


皆さんの思い出のゲームは数あるとは思いますが、私の思い出のゲームは某有名RPGがそのひとつです。当時は本体がセーブデータが消えやすく、毎回ハラハラドキドキで始めてました。

城の兵士さんについていき、アヴァロニア城の中へと入っていく。


久し振りの城の中は、マーサ王妃が元気になったことも大きく関係しているのか、とても活気が出て明るい雰囲気になっていた。


前に城へ来た際にお世話になった城のメイドさんや兵士さん達にも会え、そのつど手厚い歓迎をされて謁見室にたどり着いた時にはだいぶ時間がかかってしまった。


城の中は特に危機的なものは感じられないが、今すぐに来て欲しいとは何があったのか?


そういえば、さっきメイドさんの何人かが新しいお客様が来て忙しい的なことを呟いていたが、それが何か関係しているのかもしれない。



「詳しいことは、陛下から直接お聞きください!」


「分かりました。ここまで、ありがとうございます」



広い城の中で、もし案内がなければ確実に迷子になっていただろう広い城の作りに、改めてため息が出る。


これがゲームなら地図や攻略本があってスムーズに目的地にまでたどり着けるのだが、さすがに一度や二度では覚えきれない。


そういえば、この城に住むアルフレドやエリザベスは 元気だろうか?


2人にもパーティー以降、全然会えてないから少しでも話せたら嬉しいのだけれど。



「失礼します!国王陛下、クローディア=シャーロット殿をお連れいたしました!」


「ご苦労。入って参れ」


「はっ!!」



兵士の手によって、ギイィっと重い扉がゆっくりと開かれていく。


そして、謁見室には玉座に堂々とアレキサンダー・ルカ・ド・オーギュスト王が座していた。



「急に呼び出してすまなかったな、クローディア」


「国王陛下!ご、ご機嫌麗しゅう・・・」


「堅苦しい挨拶は不要じゃ、クローディア!もう少し側に。その方は下がってよいぞ」


「はっ!!」


「は、はい」



私を連れて来てくれた兵士を下げさせると、国王は私を近くへと呼び大きなため息をついた。


マーサ王妃は別室にいるようで、この場にはいない。



「クローディア、そなたが我が息子アルフレドを叩き直してくれたその腕を見込んで、ちと頼みがあるのだ」


「いや、叩き直したわけではないんですが」



アルフレド王子とはケンカは口を開くたびによくやったが、躾をしたわけではない。


「実は、隣のグランハット国のセイアッド王からその息子であるランディ王子をしばらく預かることになったのだが・・・・」


「!?」



再びため息をつきながら頭を抱える国王の姿に、私の頭の中で久々に警鐘が鳴り響く。




カンカンカンカン!!



議長『緊急会議だ!!すぐに集まってくれ!!』



クローディアの頭の中では、すぐさま脳内会議がだいぶ久し振りにかなりのフル回転でスタートした。



議長『今のを聞いたか諸君、ターゲットの母国はグランハット王国だ!!』


『はい!まるで大好きだったあのゲームの2つの国を足して2で割ったような国名です!!』



議長『確かに!!』



『はい!しかも、今回の呼び出し理由はアルフレドのように叩き直して欲しい、ということです。つまり、そのランディ王子が同じようにわがまま王子である可能性が高いです!!』



議長『確かに!!』



『はい!これは明らかな新しい死亡フラグではないでしょうか!!怪しすぎます!』


『は、はい!そのわがまま王子がさらに子分にしてやるとか言い出して落とし穴に落とされ、その後行方不明になったりするんじゃないでしょうか!!』




カンカンカンカンッ!!!!




議長『確かに!!その可能性はものすごく極めて大きい!!絶対にそのフラグを立ててはならない!!断固阻止だっ!!』


『『 大賛成です!!! 』



脳内会議、スーパー早送りバージョンを終え、クローディアはため息をつく国王に向き直る。



「つまり、私にその王子のおもりをして欲しい、ということですか?」


「すまんのう。少し前にセイアッド王からの使者がこの国に国交できておって、以前とあまりに違うアルフレドの様子に驚き、それを知ったセイアッド王が有無を言わせずにランディ王子を、国交のより親交の為と我が国に送り込んで来たのじゃ」


「・・・・すごい国王様ですね」



つまりは手に負えないって、押し付けただけじゃないか。


それを国王の権限でしてしまう国王の方が問題大有りなのでは?



「それで、そのランディ王子は?」



この場にいないところを見ると、別室を与えられているのだろうか。



「アルフレドの部屋におる。今はジークフリートが護衛も兼ねて側におるが」


「!?」



まずい。


この流れは例のフラグを出してしまう。



「今すぐ、アルフレド様の部屋に案内して下さい!」


「うむ。衛兵!彼女をアルフレドの元へ」


「かしこまりました!!」



国王の命により、謁見室の警備をしていた兵士の1人が前に出てクローディアに向かい敬礼をした。



「お願いします!」



なるべく急いでくれるよう、衛兵にお願いし急ぎ足で私はアルフレド王子の部屋へと向かう。


そして、その入り口にの横には黒い鎧のジークフリート様と、アルフレド王子が扉の左右に立っていた。



「ジークフリート様!!」


「クローディア!お前がなぜここに?」



ジークフリート様は驚いた表情で私の方へと振り返る。



「なるほど。どうせ、父上が連れてこさせたんだろう。俺の時と同じように、クローディアにあいつをなんとかさせようとな」


「アルフレド!」



久し振りに会えたアルフレド王子は、以前よりも落ち着いていて雰囲気も前とは違いだいぶ丸くなったように感じた。



「ごめんね、ゆっくり話したいんだけど」


「あぁ、ランディ王子ならこの中だ。俺はこの後は用があってここにはいられないんだが、無理はするなよ?子どもな分、俺よりもタチが悪い」



自分のタチが悪かったことは自覚があったのか。


私の頭をポンポンしてくるアルフレドは相当色々やらかされた後なのか、何やら王子もジークフリート様も疲れた様子だった。


ちなみにこの頭ポンポンって、最近流行ってるんですか?



「ありがとう。いやむしろ、子どもの方が私はやりやすいよ」


「すまないな、クローディア。どうやら俺は嫌われてしまったようで側にいさせてもらえないんだ。彼が外に出ないよう入り口で見張ってるから、お前が彼と話をしてみてくれないか?」


「!?」



あぁ、もう!!


なんだって今回は、こんなに濃厚にフラグを立て続けるのか!



「・・・・・はい!アルフレド!」


「なんだ?」


「あなたの部屋の中に、落とし穴はある?」


「落とし穴?いや、そんなものはないが」


「・・・・・子分の証は?」


「なんだそれは?」



はぁ?とアルフレドに心底呆れられた表情をされたが、私は真剣そのものだ。



「ごめん、そうだよね。なんでもない」


「大丈夫か?クローディア」


「!?」



心配したジークフリート様が私の顔を覗き込むが、目が間近で合うだけで心臓がトキメキに高鳴り言葉を失う。


これから何が起こるのかは分からないけれど、あなたを死なせはしない。



「・・・・・は、はい。私は大丈夫です!」



使命にそのドキドキを押し込めてからニッコリ笑ってから目をそらし、それだけを伝えると私は扉の中へと急いで入った。


中に入るとその部屋には誰もいないように感じたが、どこからか犬の鳴き声が響く。



「この・・・・鳴き声は?」


「キャン!キャン!」


「バルバロス!?」



私の目の前に飛び出してきたのは、今はウンディーネ様の神殿にいるはずの守護獣・バルバロス。



「どうしたの?こんなところで」


「キャン!キャン!」



バルバロスは私に嬉しそうに近づいてきて、そしてその体を突然違うモンスターへと変えた。



「ウギャギャギャギャッ!!!」


「!!??」



私は驚くと同時に、見覚えのあるその1つ目のスライムのような低レベルモンスターを瞬時に凍らせる。



「・・・・おどろいた。まさか、ひめいもあげないでやっつけちゃうなんて」


「!?」


部屋の奥から、パチパチと拍手をしながら小柄な少年がクローディアの前に現れた。


緑の爽やかな短い髪に、大きなつり上がった猫のような紺碧の瞳が楽しそうにこちらを見ている。


子どもにしては立派な生地に仕立てられた派手な服から、彼が誰かなんてすぐに分かる。



「・・・・・ランディ王子」


「きみがぼくの、新しいめしつかい?」


「めしつかいじゃないわ。あなたの新しいーーーーーー友達よ。よろしくね」





これが私と、ランディ王子との始まりだった。


当時まだ小学生だった私がハマりにハマり、ある日セーブデータが全部消えたのを母親がゲームで勉強しない腹いせにやったのだと誤解し、密かに恨んでいたのですが。


後日、それは本体のせいだと思い知りました。

無実の母親はゲームの起動方法すらも知らないです。

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