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モブ女子、返ってきた日常?

お読みいただき、ありがとうございます!


少しだけインターバルでサブストーリー編みたいなのを挟もうかと思ってます!




いつの間に寝てしまったのかさっぱりだったが、私は貴重なジークフリート様との2人きりの時間にも関わらず爆睡の上、気がつけば自室の部屋で1人布団を蹴りながら寝こけていた。


窓から入る朝陽の眩しさで目を覚ますが、自分のしでかしたうっかりに激しい後悔の念が襲いかかる。



なぜ!?


なぜあんなドキドキ場面で睡魔に襲われたのっ!?



普通ドキドキで夜まで寝られない!とか、余韻まで楽しめるスペシャルイベントだったでしょうが!!



それなのにーーーー!!!



いつものように、悔しさを床にドンドンッ!!と拳を涙しながらぶつけていると、下の階から何事かとお母さん達がやってくる。



「どうしたの?クロエちゃんったら、朝っぱらからそんな泣いて」


「まさか、その歳になってまで怖い夢を見て泣いてるのか?」


「!!??」



2人の姿に、あの悪夢の中での光景が蘇り、私はさらに激しく2人に泣きついた。



「あらあら、困ったクロエちゃんね〜〜♪」



そんな私をお母さんは優しく受け止めその背中を撫で、お父さんは笑いながら頭をポンポンとたたいてくれている。


当たり前のことがそうでないと分かると、人は心から感動を覚えるものなんだと改めて感じていた。



「朝ごはんは出来てるから、着替えたらゆっくり降りてらっしゃいね」


「うん!ありがとう!!」



当たり前になっていた平和な日々の、なんと尊いことか。


朝ごはんはパンに目玉焼きにサラダの、定番メニュー。


それすらも、なぜだか食べている際に涙がにじんでいた。


当たり前に出てくる朝食も、一緒に過ごせる家族がいることも、安心できる家があることも、何もかもが幸せで尊い!



うん!


しばらくは家でおとなしくしていよう!




「・・・・・そうそう、もしまた長期で旅か何かに行くなら、遠慮なく行ってらっしゃいね?」


「へ?」



今まさに幸せで家族のありがたさを感じて、胸いっぱいになっていた私の目が点になる。



「あなたがいないと、そろそろ帰ってきてるんじゃないかって様子を見に騎士院の人がたくさん来て、お店が結構儲かったよのね〜〜♪」


「は?」


「実際に店に来ればイザベルちゃんの魅力でメロメロになった騎士達がリピーターになってくれるから、おかげでうなぎのぼりで♪だから、また何かあったらどんどん行ってらっしゃいね!」


「・・・・・・」



それはそれはニッコリと、むしろ早く出て行けと喜んで背中を押された気分になり、私は『お母さんのバカッ!!』と叫びながら一応食器は台所の流しに片付けてから家を出る。


もちろん『ごちそうさま』も小さく呟いて。



「・・・・いいのか?母さん、クローディアのやつ、泣いてたぞ?」



ララは、ニコニコ顔でクローディアの食べ終わった食器を洗っている。



「いいのよ。ああ言わないと、また何かあった時にあの子は躊躇するだろうから」


「何かあった時って?」


「フフ・・・・例えばの話よ」



ララは片付けが終わると、早々にランチの仕込みへと入っていく。


今日もお店にはたくさんのお客さんが来るだろうから、仕込みは多めにしておかなければ。


ふと、見上げた空は気持ちのいい風が吹き、太陽がその光を街全体に照らしている。


今日も暑くなりそうだ。






「ぎゃぁぁぁーーーーーーーー!!!」



およそ女子とは思えぬ叫び声と形相でもって街の中を全力で逃げ回っているのは、先ほど家から出たばかりのクローディアだった。



「いたぞ!!クローディア=シャーロットだっ!!!」


「何ぃ!?今すぐ追いかけろ!!」


「な、な、何なの〜〜〜!?」



あの後、家を出てすぐに街の男達になぜか追いかけられるハメになっている。


大勢の男性に追いかけられるなど、全くもって身に覚えがない。


これが可愛いヒロインなら求婚されて〜とかなんだらうが、あいにくモブの私にはそんなことは間違っても起こらない。


現に、男達の視線は親の仇か何かを追うような目だった。



「・・・・はぁ、はぁ、はぁ!」



とりあえず街のはずれまで逃げてくると、その先に見知った女性がこっちだと手招きしていたので、すぐさまそちらへと向かう。



バタンっ!!



小さな小屋のようなところに逃げ込み、私はようやく安堵に息を吐いた。



「あ、ありがとう!イザベル!」


助けてくれたのは、その溢れる美しさと色気で男性を虜にして止まないイザベル。



「いいのよ、クロエ。この騒ぎは元々私のせいだし」


「はぁ?どういうこと?」


「実はね・・・・」



コホンと咳払いをしながらイザベルが言うには、イザベルに付き合いを迫るしつこい男性がおり、あまりのしつこさに婚約者が自分にはいると話し、それが私の身内だという嘘をついたらしい。


お母さんにもそのことは伝えてあるようで、店の者総出でその嘘を事実のように口を合わせ、詳しいことはクローディアが知っているとその一点張りで被害を最小限に留めていたとのことだった。


最小限にって、つまりはみんなで私に面倒事を押し付けただけじゃないか!!



「そ、それなら早く言ってよ〜〜〜!!」


「本当にごめんね!!」



何度も頭を下げるイザベルに、一気に全身の力が抜けて私はその場に崩れ落ちる。


訳も分からず追われることの方が何百倍も怖い。


しかし、さすがはイザベル人気。


なんとその婚約者に勝てたらお付き合いを考えてもいい、と話していたらしく男達の血走った目の恐ろしさといったらなかった。


後で彼らが落ち着いた頃に、その男は遠くに旅に出てるとでも嘘をつこう。



「・・・・・それより、その様子だとまだあの騎士さんとまとまってないようね?」


「へ?」



さっきまで頭を下げてたイザベルが、今度はずすいっと私に躙り寄る。



「想いは伝えたの?」


「あ、いや、それどころじゃ・・・・」



確かに2人きりにはなったが、そんなことを告げようと考える前に眠ってしまったことを話すと、プルプルと震えたイザベルにおバカーーーーーーッ!!と本気で怒鳴られ、思わず正座で縮こまる。



「なんでそんな大事な場面で寝るのよっ!?」


「い、いや私も寝るつもりなんて、全然なかったんだんだけど!」


「全く!そんなんじゃ、どこかのお姫様に取られても知らないわよ?」


「いや取られるのはお姫様じゃなくて、ローズだからそこは大丈夫!!」


「それの何が大丈夫なのっ?!」



うっかりそこからイザベルに恋愛のお説教タイムが始まってしまったが、告白なんてハッキリ言って前世の学生時代以降しようと考えたこともない。


その貴重な学生時代の告白ですら惨敗で終わった苦い記憶でしかないし、ジークフリート様にそんなことをする勇気はとてもじゃないけど持てなかった。


ようやく他人から親しい友人のように接せられるようになったのだ。


もし今フラれてしまったら、会うことすらも辛すぎて2度と話せなくなってしまうかもしれない。



「なんでそこで、両思いの可能性を考えないのよ?」


「・・・・・勘違いして期待して、痛い目を見るのはもう嫌だから」



それに、今はそばにいられるだけで十分だ。


あの悪夢のおかげで、そのことに気づかせてもらった。


『彼が生きている』それ以上に素晴らしいことはない。



「だから、それは勘違いじゃ」


「こっちにいたぞーーーーー!!!」


「やばっ!ごめんね、イザベル!!また後でーーーーー!!」



男達の声に慌ててその場から走って出て行くクローディアの背に、イザベルは大きく息を吐く。



「もう、何をしてるのよ男達は!いつまでもあんなに切ない顔をさせてるなんて!」



彼女はもっと欲張りに、貪欲になってもいいはずなのに。



「・・・・・本当にそのローズって人が目の前に現れたら、どうするのかしら?」



度々彼女の口から出てくる少女の名を思い出し、イザベルはもう見えなくなったクローディアの行く先を見つめる。



その時は全力で彼女の味方になるまでだと固く心に誓い、イザベルは店へと静かに戻っていった。

告白は学生時代の勢いがあってもやっとで、成人してからは失敗を恐れてぶつかること自体が強くなっているように思います。


大人になると、臆病になるのはなんでですかね。

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