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モブ女子、開かれた道

今回も読んでいただき、ありがとうございます!


小説を書くときによくゲームのサントラを聞いているんですが、時々音楽だけで泣かされてしまいます。


ルークの体が虹色の光に包まれ、その光はさらにその体から一気に溢れ出して神殿全てをその輝きで包んだ。



「・・・・・・ッ!?」



あまりの眩しさにクローディアが目を閉じると、一瞬だけ全身が暖かいものに包まれ、その耳元には彼の声が響く。




ありがとう




「ルーー・・・ッ!!」




光の中で、彼が笑っているのが見えた。


いつもの何かを含んでそうな意味ありげなものではなく、本当に心からのものだと分かるぐらい、その笑顔は美しく目が思わず奪われて言葉を失ってしまう。


見慣れた美貌のはずなのに、初めて出逢ったかのようなそれはとても不思議な感覚だった。




次第に光は落ち着き視界もようやくハッキリしてくると、そこには信じられないほど美しい水の神殿が目の前に現れる。


銀色の輝きを放つ、薄い水色の発色をした光沢のある大理石でできた荘厳な景色。


あちこちに清い水が流れて、いやむしろ壁という壁に水が流れている感じだ。


あちこちに神秘的で美しいデザインの石のオブジェが飾られ、そのオブジェからも水が流れている。



恐らくこれこそが本来のこの場所、『水の神殿』のあるべき姿に違いない。




その中で、ようやく光のおさまったルークがいつも目深にかぶっていたフードが頭から落ち、銀色の美しい髪が緩やかな風にたなびいている。




「・・・・・・ルーク?」


「ーーーーーーーー」



彼はしばらく、黙りこんだままだった。


だが、着ていたローブをその場で脱ぎ捨て、袖の中から姿を現した自分のキメ細かい雪のように真っ白な腕をじっと見つめる。


そこにかつてはびっしりと刻まれていた紫の刻印はどこにもない。



「・・・・・・痣がない自分の肌なんて、もう見ることはないと思ってた」


「!?」



ルークの目から、ポタポタと朝露が葉っぱから落ちるように静かに溢れる。




「長く生きることに、興味なんてなかったはずなのに」



彼の紫の瞳は、どこか遠くを一心に見つめていた。


その先には、私の肩から飛び立ったクロワッサリーが神殿の中を自由に羽ばたきながら飛んでいる。


どこまでも自由に、どこまでも限りなく。


大空ではないものの、天井のかなり高いその神殿の中を優雅に飛び続けるクロワッサリーの姿を、ルークはまっすぐに見つめていた。




「・・・・・そうか。僕はまだ、ここで生きていいんだ」




そして、その顔にはもう涙はなく、柔らかく優しい微笑みだけが浮かんでいた。






そんな彼に涙の止まらないアイシスさんと、涙はなんとか堪えているものの、色んな感情に溢れた大興奮のカルロさんが左右から彼を力強く抱きしめる。


幽体の為、アイシスさんは直には触れられないだろうが、それでも彼をその細く小さい腕と手で包み込む。


その光景に涙をまた流していた私の隣にきて、肩をポンポンとたたいて慰めてくれるジークフリート様に、こんな時でもドキッとしながらルーク達を見つめた。



そんな彼らを、少し離れたところでウンディーネ様とマグオート様が温かく見守る。




『功績への礼などと、ずいぶん回りくどい言い方をしましたね。本当は、たとえ何もなくとも呪いを解くことを決めていたのでしょう?』


『・・・・・・そんなことはありません』


『アイシスのことも、あなたはずいぶん前から許していたというのに』


『ウンディーネ様!!』



眉間に深くシワを寄せて怒鳴りつけるマグオートを、ウンディーネは余裕のある笑みで返している。



『それと・・・・・例の件。承知してくださいますか?』


『!?』


『あなたの許しがなければ、さすがのわたくしでも無理矢理にはできませんからね』


『・・・・・それを決めるのは、私ではなく本人です。アイシス自身がそれを望むのなら、止める理由はない』


『分かりましたわ』



マグオートの眉間のシワが少しだけ緩やかになり、彼の目線が再び3人の元へと向かう。


彼の珍しいほどに穏やかなその顔に小さく笑いをこぼすと、ウンディーネは自分の近くで静かに事態を見守っていた懐かしい存在へと向き直り、そちらへと歩みを進めた。




『本当に、お久しぶりですね。イヴァーナ』


『そうだな。あなたとは積もる話も山ほどあるのだが・・・・その前に、この神殿の上空で激しく暴れ狂う戦の神をなんとかしてくれないか?』


『!?』




同じ頃、目の前の感動に涙していたクローディアもその事に気がついてハッとする。



「そうだ!ボルケーノのこと、忘れてたっ!!」


「キャン!!キャン!!」



甘えて足元に来たバルバロスを抱き上げてその背中をなでながら、バルバロスの主人でもあるボルケーノがいるだろう、天井のさらにその上へと意識を向ける。



「確か、ウンディーネ様に神殿の外へ追い出されたんだっけ?」


「ボルケーノ様なら、心配はいらないだろう?」


「はぁ、そうなんですけど・・・・?」



なんだろう?別のことで胸騒ぎがしてる気がする。






『まぁ・・・・あれなら大丈夫でしょう。それよりも思いっきり体が動かせて、むしろ喜んでいるのではないですか?』



ニッコリと、ウンディーネ様がキレイな顔で笑う。


笑っているのに、それはどこか冷たさの感じる笑みだ。



『いや、だから!その喜びすぎで力の限りに暴れているから困るんだ!!あなたなら、ものの一言でボルケーノが止められるだろう!?』



イヴァーナがそちらへ意識を向ければ、ボルケーノのハッスルし過ぎた姿と、激しすぎる炎のせいで近くの森の一部が焼かれ、動物達が怯え逃げ惑っている姿が見える。



『だって止めてしまったら、あれがわたくしの方へ来てしまうではないですか!わたくしはあれと必要以上に親しくするつもりはありません!』


『ウンディーネ・・・・・分かった。ならば、今回は私があいつを止めてくるが、いい加減逃げずに向き合ってやれ。あいつはお前が気に入ってるだけなんだ』



大きなため息をつくと、イヴァーナはその場から空間に溶けるようにして消えた。



今頃は、戦いにヒートアップして頭に血の登ったボルケーノの頭に大きな氷山辺りをいくつもぶつけているに違いない。


そのまま、わたくしの前に顔を出さずに引き下がってくれればいいけれど、お互いが封印から解かれてしまった今、そうそう時間はないだろう。



『・・・・・わたくしの魔力の全力で、強力な結界を張っておきましょう』



そう心に決めると、ウンディーネは目を閉じて静かに呪文を唱え始めた。


あの神が本気になれば、あまり意味のない結界だが嫌がらせぐらいにはなるだろう。




『さ、これで彼らに対して心穏やかに話せるわ♪』




そして、ウンディーネは機嫌のいい様子で今だに泣き止まないアイシスとルーク達のいる元へと向かった。

実はこの話を書いている時にある事実に気がつきまして、この場を借りてお詫びをさせて下さい。


アイシスのカルロと、シオンの兄弟の1人が同じカルロという名前で被ってしまいました。本当に無意識の偶然でしたがもし、読みづらければ変更もしようと思ってます。


詰めの甘さがでてしまい、申し訳ないです。

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