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モブ女子、願うこととは?

今回も読んでいただき、感謝です!


ルーク編が終わりに向かってますが、最後まで彼らの幸せの為に頑張ります!


心のざわつきが止まらなかった。


彼女は確かにこの腕の中にいるというのに、その心がここにないということが不安で仕方がない。


なぜ彼女を助けに行くのが自分ではないのか。



「・・・・クローディア」



突然水のバリアーに包まれて神殿へと強制的に移動させられてから、初めに見たのが彼女の倒れこんだ姿だった。



彼女が倒れた理由が闇の魔力だということで、助けに行くのは魔導師として高い魔力と知識を持つ、ルーク=サクリファイスになりそのことにも多少なりとも腹がたっている。


やはり彼女はこの男と一緒にいたのだ。



「ピイィーーーー」


「クーーーーーン」



ならば、彼女の肉体だけでも守ろうとその身体を抱き上げて座り込んでいる俺のそばには、彼女を心配してそばに来たクロワッサリーと全身黒い色の犬がいた。


このクロワッサリー、王の命令で西の街へと向かっていた俺の前に突然現れると、ある程度の距離を保ちながらそばを離れず、近くにモンスターが来ると声をあげて知らせて俺を守ってくれていた。


それが誰からの指示だったのか、ある程度予想してはいたものの確証をしたのはクロワッサリーが彼女の側から離れない姿を見た時。


今も彼女を抱き上げている自分の肩に乗りながら、彼女を見守っている。


もう1匹の黒犬も、彼女の頬を舐めたり頰ずりしたりしながら彼女そばを離れようとはしない。



「また・・・・お前を慕うライバルが増えたな」



たまに、苦しそうに顔を歪める彼女の頬や額にそっと手を添える。


少しひんやりとしたその肌に温もりが少しでも伝わるようにと、温もりを与えるが彼女の体温は冷たいままだった。



『大丈夫。彼女は無事ですよ』



目の前で神々しい姿で佇むお方は水の神、ウンディーネ様。


そのそばには騎士風の男が膝をついて側に控えている。



『もうすぐ、帰ってきます』


「!?」



ウンディーネ様の言葉のすぐ後に、腕の中のクローディアの身体が光りだした。



「クローディア!!」


「ピイィーーーーーーッ!!」


「キャン!!キャン!!」



そのあまりの眩しさに一瞬だけ目を閉じそうになるが、光は彼女の体内に吸い込まれるように消えていく。



「・・・・・・ん」


「クローディア!!」


「あれ?ジーク、フリート様?」


「ピイィーーーーーーッ!!」


「く、クロワッサリー!!」


「キャン!!キャン!!」


「ば、バルバロスまで!」



ようやく目覚めた彼女に向けて、クロワッサリーとバルバロスという名の黒犬が彼女を無事を喜び声をあげた。



「よかった!クローディア!」


「!?」



俺の声に改めてこちらを見たクローディアは、そのまま俺の首に両手を回して抱きつく。



「・・・・会いたかった、です」


「あぁ、俺もだ」



その背を、力の限り自分からも抱きしめる。


何日ぶりに触れた彼女はやはり暖かく、心がようやく熱いもので満たされた。



『クローディア』


「は、はいっ!!」



もう少し彼女をこの手の中で抱きしめていたかったが、ウンディーネ様から声がかかり、クローディアは俺の手の中から飛び出していく。



「ピイィーーーーーッ!!」


「キャン!!キャン!!」



その姿に、俺の肩にいたクロワッサリーが彼女の肩へと移動し、足元にいたバルバロスはその横にピッタリとくっついて歩いていった。


ウンディーネ様の前には、彼女の救出から帰ってきたルーク=サクリファイスも佇んでいる。


彼と目が合い意味ありげにニッコリと笑われ、俺は眉間にしわをよせた。








『クローディア。フェイのこと、ありがとうございました。これで彼女も、ようやく静かに眠れるでしょう』


「あ、いえ!お役に立てたなら、よかったです!」



『黒い魔女』である、フェイの影響から解放された水の神『ウンディーネ』様は、それはそれは美しかった。


内側から光が溢れ、気品と優しさに溢れたその美しさは女神そのもの。



『あなたには、わたくし共々解放してくれたお礼をしなくてはなりませんね』



水の神の側には、カルロさんがアイシスさんと仲睦まじく寄り添いあいながらこちらに微笑みかけている。



『あなたは、何を望みますか?』


「!?」



ウンディーネ様はまっすぐに私を見てきた。


何を望むか?


私はアイシスさんへと目を向ける。



今回の旅での約束はウンディーネ様を解放すること、そして彼を助けることだ。



彼女に向かって笑いかけ、ゆっくり頷くと彼女は涙ぐみながら小さく頷く。



「ウンディーネ様!お願いします!どうか、ルークを呪いから解き放ってあげてください!!」


「!?」



私の言葉に驚いているのは、ルークの方。



「君は何を・・・ッ!願うなら、君自身のことを願うべきだろう!?」



珍しく焦っている彼に、思わず笑いがこみ上げた。


その彼に向かってニッコリ笑い返してから、ウンディーネ様へと向き直る。



「これが私の願いです、ウンディーネ様!」


『そうですか。ですが、その願いを私は叶えられません』


「叶えられないのかいっ!!」



せっかくのキメ所なのに、ものすごくずっこけたい気分だ。



「フフ・・・・残念だったね♪」


「くっ!」



『ですが、その願いは私ではないものが叶えるでしょう』



「えっ?」


「!?」



嬉しそうに笑うルークに対し、悔しそうに顔を歪ませた私の前でウンディーネ様が両手を高く上に持ち上げると、呪文を唱え始めた。



『森の王よ、水の神ウンディーネが命じます。その扉を開き、姿をここに現しなさい。デレット・バーブ・ドゥリーース!!』



『まさかっ!』



その呪文とともに、私たちの上空の空間が歪んでいきそこに大きな稲妻が起こり始めると、そこにはある人物が現れる。



『お父様っ!!』



アイシスが叫び、その人物の顔が私たちにもしっかり映ると、そこには森の王と呼ばれるエルフの長、アイシスの父にしてルークの遠い祖先に当たるーーーーマグオートがそこにはいた。

この物語を書き始めた最初の方からイメージしていた場面でもあるので、これからの場面を書くことに喜びと緊張と不安があります。


でも、やっぱりここまで書けたことが嬉しいです!

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