モブ女子、光VS水
続けて読んでいただき、ありがとうございます!
ようやく会えた恋人なのに、まず戦いからスタートになってしまったことに申し訳なく感じてます。
封印された神様達を解放していくことをルークが決めたのは、彼女『クローディア』とルークが出会ったばかりの頃。
彼女が、ルークの呪いの一部を解放した。
それは本当に一時的で、すぐにまた呪いの痣は刻まれてしまったが、ルークの中でそれはほんのわずかだろうが大きな希望に変わった。
封印された神々の解放、それは歴代の魔法使いが挑戦し誰1人として叶えられなかった悲願でもある。
国一番の魔法使いになるという夢を、王国の魔法院長となることで一応の目標達成となったルークの次なる夢は神々の解放だった。
別にルークが神様に何か思い入れがあったわけではなく、どうせなら他の誰にもできなかったことをしてから死にたい、というのが本音だろう。
だが、それらしき怪しい呪われた魔法具や怪しき武器などをどれだけ裏から手に入れても、何の成果も得られなかった頃に出会ったひと雫の希望が『クローディア=シャーロット』。
そして彼女は、ルークの期待通りに奇跡を起こし、ついにボルケーノ様を復活させた。
彼女がその前に飲んだ、体力回復だとルークが言っていた最悪最恐の味のドリンクは、実は呪いを防ぐ為のものだということを彼女は知らない。
ボルケーノ様が封印されていた杖は呪いの力が強く、その守りをつけても危ないものだった。
それでも、彼女ならとルークは賭けに出た。
その後、ルークが直接投げかける前に彼女はルークの望み通り『死の山』へと向かい、『イヴァーナ様』ですらも復活させてしまった。
その様子をこっそり魔法で眺めていたルークは、ウンディーネ様復活を本格的に計画し始める。
封印されていると言われた神殿を見つけ、その為に必要なアイテムの在り処まで調べ、それでも実行は彼女の同行を待ちついに行動に出た。
それは、彼女が『黒い魔女』に目をつけられたことを知ったから。
この旅の中でも彼女に何かを仕掛けてくることを考え、目的を達成する前に彼女に死なれては困るからとルークは彼女を鍛え始める。
でもそれは、本当は彼女を死なせたくないからという思いもあるんじゃないかと、私は勝手に思っていた。
目的の為だからと言っても、彼が誰かにここまで執着するのは初めてだったから。
彼女ならば彼を救う為に動いてくれるのではないかと、そう思った。
誰かの為なら自分の力を惜しみなく出す彼女は、一歩間違えれば誰かの為にその命をすぐにも失える危なげな部分が強い。
集中しすぎて周りが見えなくなるのは、状況によっては最悪なことにもなりうる。
自分もまだ何も知らなかった頃、自分の気持ちにまっすぐ突っ走り、周りにどれだけ迷惑をかけたのか、後から後から気づいては後悔が出て苦しんだ。
私はそれを死んでから気づいたが、彼女にはそうなる前に気づいて欲しくてついきつい言い方をしてしまったが、少しでも伝わってくれたのなら嬉しい。
散々彼女には偉そうに色々話していたくせに、今の私はどう?
もう二度と会えないと、諦めてようやく大事な思い出として涙を流すことが減ったのに、その張本人が目の前に現れてしまった。
神殿に入ってからずっと、胸騒ぎが止まらなかった。
見知った気配に私の魂そのものがうち震え、彼女の体を借りた途端に涙がすぐさま流れる。
彼との戦いは、誰にも譲りたくはなかった。
どんな形でも構わない。
もう一度会えたことが、ただただ嬉しい。
「グアンヌール・ルス・リュミエール!!」
アイシスの唱えた呪文により、クローディアの体の手の平から光が溢れ、カルロに向かって何十本もの光の矢が襲いかかる。
「光の魔法・・・・なんだ?この痛みは」
カルロは頭痛に顔をしかめるが、すぐさまその矢を防ぐ為のバリアーを張る。
「俺を守れ、アイヴァー・ヴァハトゥーン!!」
カルロの足元から大量の水が生まれ、全身を大量の水が覆い数々の矢から守った。
光なら水の中でも通るかと思いきや、水のバリアーの中で光の屈折が変わり、カルロの体を避けるようにしてその矢がすり抜け空中へと消えていく。
「次は俺の番だ!!ヴォダ・ヴィーズ・オーシャン!!」
カルロの言葉とともに、先ほどの比ではない波のような勢いで大量の水がアイシスに襲いかかる。
「!?」
「ライトポース・エードラム!!」
その攻撃も、アイシスが自分の周りに張った光のバリアーで彼女をすり抜けて水が神殿を流れていった。
「キャン!キャン!キャンッ!!」
あわや溺れそうになったのがバルバロスで、水に顔が沈むギリギリのところでボルケーノが炎のバリアーを張ってあげている。
もう少し早く助けてあげたらいいのに、命の危機に本気で怯えるバルバロスをボルケーノはそれぐらい泳げ!!と、スパルタいいながらそれは楽しそうに見ていた。
そのあともアイシスさんとカルロさんの魔法がお互いに繰り出されるが、一向に勝負がつかない。
途中、大きなガマ蛙が登場して私の体を狙ってその長い舌を出された時は、あまりの恐怖に体の元持ち主であるクローディアが全力で悲鳴をあげていた。
だが、今の持ち主であるアイシスはやっぱり来たわね!とむしろ嬉しそうに呪文を唱え、光の中から巨大な蛇を出現させ、その登場にもクローディアは悲鳴をあげてガマ蛙とともに怯えて逃げ回った。
真剣勝負のはずだが、それでもアイシスは嬉しそうに泣きながら笑っている。
カルロが繰り出す魔法にもどこか懐かしそうに微笑み、すぐさまそれに対応していた。
だが、その時間も終わりに向かう。
アイシスの呪文により手足を壁に拘束されたカルロに向かって、アイシスは光の剣を構えていた。
「あ、アイシスさん!?」
ま、まさか殺す気ですか!?と叫ぼうとし、もう死んでる身ならば殺すのはおかしいけど、でも剣をさしたらやっぱりまずいのでは!?と、クローディアが混乱しながらオロオロし始める。
「大丈夫よ・・・・カルロには、安らかに眠ってもらうわ!」
「くっ・・・!!なんなんだ、この痛みは!!いや、そんなことさせるかっ!!アイル・ヴァラマール!!」
カルロも負けじと、自分に迫り来るアイシスに向かって水の剣を出現させて襲わせた。
『我が主の体を、傷つけさせはせぬ』
「!?!?」
その水の剣を、ボルケーノの出した燃え盛る火炎が飲み込んで消し、カルロの体をアイシスさんの光の剣が貫いた。
「カルロ・・・・・愛してるわ」
「!?」
そのまま、涙を流したアイシスさんがカルロの唇に口づける。
わ、私の体ーーーーー!!!と、思わず叫びそうになるのをクローディアがぐっとこらえながら、恋人たちの逢瀬を見守る。
「・・・・・アイ、シス?」
「!?!?」
そして、奇跡は目の前で起こった。
光の剣がそれを起こしたのか、カルロさんに触れた私の体から他者自動回復機能が作動したのか、いややっぱりアイシスさんの愛のパワーだろう。
カルロの瞳に光が戻り、私の体に入っているアイシスさんをようやく認識したのだ。
「体は別人だけど、お前なんだろう?アイシス」
「・・・・か、カルロっ!!!」
何百年前に引き裂かれた恋人達は、互いに死んでから何百年後になって、こうして再会を無事に果たしたのだ。
せっかくの感動場面なのに、涙を流せないこの体がもどかしい。
それに、目の前で抱きしめられているのが自分の体だということも、なんとも複雑な気持ちで困る。
頼むから、その体でこれ以上のラブシーンだけはしないで欲しいと願ったそばから、抱き合っていた2人がそのまま盛り上がってキスをしようと向かい合うのが視界に入り、全身全霊で止めに入った私をどうか許して欲しい。
だってそれは、私の体なんですッ!!!
私の心からの叫びに、ボルケーノが腹を抱えて大笑いしていたが私は絶対に間違ってない、はずだ。
一度だけは頑張って飲み込みましたが、2度目以降はさすがに見過ごせなかったクローディアです。
一度目も割って入ろうかかなり悩みましたが
そこはぐっと我慢する彼女がいたので、そのままにしました。




