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モブ女子、ダンジョンの守り人

今回も読んでいただき、感謝です!


短めの内容でアップするのと、ためてから一気にアップするのとどちらが読んでくださる方が喜んでくれるのか毎回悩みつつ、きりのいいところまでできるとアップしてしまいます。


短く感じたら、申し訳ないです!


ケルベロスじゃなくて、バルバロスがいた入り口付近の大広間を抜けて先を進むと、ゲームダンジョンでよく見たような分かれ道がいくつも出てきた。


その途中には色んなモンスターが襲いかかってきたが、最強レベルの神様・ボルケーノがいる為どのフロアーも気持ちいいぐらいに特技『激しい炎』で1発KO!!


しかも、オート機能つきのスムーズさ!


まるでゲーム序盤のチュートリアルで、自分は弱いものの強い先生役のキャラがいる為に敵をバッサバッサとやっつけていけるあの感じ。


先生役がいなくなってから、途端に弱い自分だけになってから難易度が一気に上がるんだよね。


私自身もボルケーノに甘えることを覚えたら自分が一切戦わなくなりそうで、それを危惧してそわそわしていたらやっぱり側にいた人にはそれすらもお見通しで。



『あなたにはあなたにしかできないことがあるんだから、その時に全力で頑張ればいいのよ。してもらったことには心から感謝して、その分を他で与えていければそれでいいの』



ニッコリ笑ったアイシスさんに、またもや慰められてしまった。


確かに、ルークが私をここへ連れてくる理由があるはずなのだから、それまでは体力・気力を共に温存しておけということだろう。



「分かりました!ありがとうございます!」



私はそれだけをアイシスさんに伝えると、ボルケーノにも改めてお礼を伝えてから再び先を進む為に走り出した。


そして、地下に繋がる階段を降りて進んだ先に青い鎧を来た守り人が、先の道を塞いでいるのが少し離れたところから見えた。


その先にまだ道があるところを見ると、中ボス辺りだろうか?



『なんだ?今度はガーディアンか?まぁ、敵ならば、あやつも我の炎で・・・・』



ボルケーノが腕をポキポキ鳴らしながら、守り人へと近づいていく。


だが、その神はすぐに立ち止まることになる。



『お願い、待って!!!』


「!?」



呼び止めたのはアイシスさん。


さっきまで穏やかな笑みを浮かべていたのに、階段を降りてから様子がおかしかった。


何やら余裕がない様子で、強張った表情にはうっすら汗をかいている。


何かあったんだろうか?



『・・・・クローディアちゃん、あなたにお願いがあるの』



「へ?な、なんですか?」



真剣な顔つきの彼女に、私にまでその緊張感が伝わり思わず息を飲む。



『その体、乗っ取らせてちょうだい!!』


「は、はいぃぃぃッ!!??」



目の前の幽霊?さんから、まさかの乗っ取り宣言!


つまり、憑依的なことだろうか?


えっとその場合、私の意志はどうなるの?


はじき出される?それとも共存するの?


乗っ取られたことなんて、前世から含めて生涯一度もないから全く分かりませんっ!!



「・・・・ウンディーネ様の眠る神殿に不法侵入する者よ、お前達を退治する」


「!?!?」


『か、カルロッ!!』



守り人が何者で、なんで彼女が突然乗っ取らせて!などと、意味の分からないことを言い出したのかも、その一言で全てが解決した。


青い鎧の守り人がこちらへ近づいてくるとその顔がハッキリと視界に映り、青い髪と紫の瞳をした青年ーーーーエルフの王であるマグオートに遠い過去において殺されたはずの、カイマール王国・カルロ王子がそこにいた。



「か、カルロさんが、何でここに?」


『・・・・・カルロは、ウンディーネ様の加護を受けてた。だから、死んでからもウンディーネ様の為にその魂が生きていたんだと思うけど、でも様子が少しおかしいわ!お願い!少しの間でいいから、私にあなたの体を貸してちょうだい!!』



うん、貸してって言われる方が乗っ取りより返事がしやすいかも。


いや、言葉の違いなんてそんな些細なことを今は気にしてはいられない!!



「はい!こんな体でよければどうぞ使って下さい!!」


『ありがとう!!』



アイシスさんは満面の笑みになると、私の体に自身の透明な体をすぐさま重ねた。


同時に、私の意識だけが外に出される。


なるほど、やっぱり弾き出されるのか!



「キャン!キャン!」


「!?」



どうやら本性は魔獣であるバルバロスは私の姿が見えているようで、アイシスさんがインした私の体ではなく、幽体のみの私の方へと歩み寄りその体を擦りつけようと近づいてきたが、スカッとその体がすり抜けコテンと横に倒れてしまっていた。



「クーーーーーン」



寂しそうに私を見つめてくるが、こればっかりは申し訳ない。



「・・・・ごめんね、今は抱っこしてあげられないの」



『うーーーむ、つまりは夫婦対決というわけか?』



彼女の事情を知っていたらしいボルケーノが、腕を組んで考え込みながらボソッと呟く。


それだけを聞くと微笑ましい気持ちになるが、それは普通の夫婦であればだ。


本来なら2人とも死人であり、生きてここにいることがそもそも不自然な形であるはずなのに、そんな形でも何百年という時を経て2人が会えたことに私は感動すら覚えていた。


きっと、アイシスさんは私以上にそれを今感じているはず。



「・・・・カルロ、まさかこんな風にあなたと再会するなんて」


「侵入者よ、お前を排除する!」



カルロは正気ではないようで、私の体で思わぬ再会に涙を流す『彼女』に気づかない。



「そういえば、あなたには魔法勝負で勝てたことが一度もなかったわね。でも、今回だけは勝たせてもらうわ!!」


「覚悟っ!!」



涙を流したままのアイシスさんと無表情で目に光のないカルロさんの、光と水の対決が始まった。

次回は時を超えた夫婦魔法対決です!


よろしくお願いします!

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